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産経ニュース エディトリアルチーム
香川県高松市に本社を置く小河運送株式会社は、県内の大手建設機械メーカーの協力企業として約60年にわたって大型建設機械などの運送業務に取り組み、地域の主要産業の維持、発展に大きな役割を果たしている。2024年4月から法律でトラックドライバーの時間外労働の上限が年960時間に制限されることで発生する「2024年問題」など運送業界の課題をICTの積極活用で乗り切り、会社の成長につなげようとしている。(TOP写真:香川県さぬき市内の小河運送志度事業所に並ぶ同社のトラック)
香川県内4ヶ所に出荷拠点を設置
小河運送株式会社の運輸部は、運送課と陸送課で構成されている。運送課が、取引先の大手建設機械メーカーが製造した建設機械の運送車両への積込から輸送、搬入する業務を担い、陸送課が大中型の建設機械車両、高所作業車を預かり、従業員が目的地まで運転して送り届ける業務を担っている。また運送業務に携わる人材の派遣は人材派遣部で行っており、主要なお客様の工場内の物流業務及び製造ラインへの人材の派遣を行っている。さらにグループ会社の小河梱包株式会社が、出荷する品物の特徴に合わせた梱包業務を担当している。
出荷拠点は、香川県内4ヶ所(高松・志度・多度津・香西)に設けている。高松では主に建設機械車両の部品、高所作業車・高所作業車の上物や門型リフターなどの出荷業務。志度・香西では大中型建設機械車両、大中型機種建設機械車両のアッセンブリーパーツ、超大型機種建設機械車両等などの出荷業務、海外向大型建設機械車両のバージ船への自走での乗り入れ作業。多度津では主にトラック架装用クレーンの出荷業務を行っている。それぞれの拠点にはコーポレートカラーのブルーに塗装されたセミトレーラー、大型トラック、中型トラックなどが必要に応じて積込みに入る。その数は45台にのぼり、安全第一で最適なルートを設定して全国に建設機械を輸送している。超大型機種の建設機械車両はそのままの状態では自走できない為、分解して運ぶので、トレーラー・大型トラック総数で20台から30台が出動するという。
誤出荷・誤配送、破損事故、クレームのゼロを目指す
「小河運送のモットーは顧客第一主義です。輸送サービスの品質向上、安全活動の推進による『事故撲滅』、接客マナーの向上に取り組むことで、誤出荷・誤配送、破損事故、クレームのゼロを目指しています」。香川県さぬき市にある同社の志度事業所で取材に応じた山地直人常務取締役は、小河運送の経営方針についてこのように話した。安全管理について小河運送は四国運輸局香川運輸支局から安全性優良事業所の認定を受けているほか、業界団体などから数々の安全運転の表彰を受けている。
ドライバーの確保や負担軽減、勤務実態の正確な把握といったさまざまな課題解決と会社の成長にICTを活用
働き方改革関連法の施行によって2024年4月からトラックドライバーの年間時間外労働の上限が960時間となることから、運送業界は、事業を継続していくためにドライバーの確保や負担軽減、勤務実態の正確な把握といったさまざまな課題への対応に追われている。小河運送も着実に対策を進め、課題解決と今後の事業拡大を両立する切り札としてICTの活用を進めている。
「運送や梱包の現場は人間でなければこなせない仕事が多く、慢性的な人手不足です。その中で労働時間の規制が強化されることで、仕事をこれまで以上に効率的に進めなければならなくなります。どの業界も人手不足の中、採用人数を増やすことは簡単ではありません。定型的な仕事をICTや機械を活用してこれまでよりも少ない人数で対応できるようにすることで、現場の人数を増やしていきたいと考えています。運送業界にとっての激動の時代を、これまで蓄積してきたノウハウと知恵と工夫で乗り切っていきたい」と山地常務。
運行管理システム、デジタコ、ドライブレコーダーでドライバーを支援
小河運送のドライバーは約50人で、従業員の約3分の2を占めている。ドライバーの安全運転を支援するために導入しているのが、GPS連動型の運行管理システム、デジタルタコグラフ(デジタコ)、ドライブレコーダーだ。「事務所から一人ひとりのドライバーを見守る上でなくてはならない設備です」と山地常務は話す。10年前に運転管理システムの導入を決めた当初、一部のドライバーから行動の管理強化につながることを心配する声が上がったが、ドライバーを守るためのシステムであることをていねいに説明すると納得してくれたという。
運行管理システムは、運送中の車両の位置や走行状態をリアルタイムで地図上に可視化する機能を持っている。可視化を通じてドライバーの安全運転に対する意識が高まるだけでなく、事故、渋滞が発生した地点などの情報提供を通じてドライバーの安全運転をバックアップすることができる。毎月の残業時間が上限を超える可能性が出てきたドライバーについてアラーム通知する機能も備えている。
デジタコは、自動車を運転した際の速度、走行時間、走行距離などの情報をデジタルデータで記録する機能を備えている。運転管理システムと連動することで走行時のデータを運転管理、労務管理、エコドライブの推進、経費節減といったさまざまな業務改革に活用することができる。事故に巻き込まれるといった不測の事態が生じた時は、ドライブレコーダーで映像を残しておけば、ドライバーに過失がなかったことの証明にもなる。
UTMの定期的なバージョンアップでセキュリティを強化
小河運送は、大企業とサプライチェーンを形成する中小企業がサイバー攻撃の対象になるケースが世界中で増加していることを踏まえ、社内全体の情報セキュリティ対策にも力を入れている。
さまざまなセキュリティ機能を備えた機器、UTM(Unified Threat Management=統合脅威管理)を定期的にバージョンアップし、コンピューターウイルスのアンチウイルス機能を常に最新の状態にすることで、感染防止や不正アクセスの検知、防御に取り組んでいる。UTMは外部からのコンピューターウイルスの侵入を防ぐだけでなく、社内からの危険なWebサイトへのアクセスを遮断する機能も備えている。社内のパソコンが1台でもウイルスに感染すれば、他のコンピューターへの感染を自動的に防ぐ仕組みも整えている。
「情報の漏洩(ろうえい)が起こってしまってからでは取り返しがつきません。取引先に迷惑をかけないために情報セキュリティ対策は徹底しています。取引先の関係者や知り合いを装ったなりすましメールが送られてくる可能性もあるので、送信先のアドレスをしっかりとチェックしてから添付ファイルを開くようにしたり、USBメモリは、外部から持ち込んだものを使わないようにするなど、情報セキュリティに対する従業員の意識向上にも取り組んでいます」と山地常務は説明した。
クラウド型の業務システムで業務の属人化を解消
バックオフィス業務でもICTを活用している。2023年10月から始まるインボイス制度に対応したクラウド型の請求書管理システムと会計業務システムを2022年10月に導入した。クラウド化したことで仕事を分業しやすくなったことに加え、データのバックアップを強化することができたという。
「今後、バックオフィス業務でテレワークなどの働き方改革を進めていく基盤を整えることができました。以前は、運送課、陸送課など各部署に置いているパソコンが外部に接続していなかったので、請求書処理や会計の業務はそれぞれの部署で個別に行っていました。クラウド化したことで従業員がIDとパスワードを入力すれば、どの部署のパソコンからでもほかの部署の請求書処理と会計の業務ができるようになったので、相互にサポートし合うことが可能になりました。今後もクラウド化を推進することで、業務の属人化を解消していきたいと考えています」と山地常務は話した。
複合機の文書管理システムを活用して無駄な印刷を削減
2023年3月には、本社と志度事業所で使用する複合機3台を最新機種に更新した。新しい複合機を導入したことで印刷の速度が向上し、鮮明に印刷できるようになったという。複合機には従業員一人ひとりのフォルダを設定できる文書管理システムが備わっている。印刷する時に複合機の操作モニターで印刷内容を確認してから印刷するようになったので、無駄な印刷が減り、紙の使用枚数の節減につながっているという。
時代の変化を前向きにとらえることで会社の成長へつなげる
「自動走行などの新しい技術の情報を積極的に収集し、活用できることがはっきりすれば導入を検討したいと思っています。時代の変化を前向きにとらえ、機動的に対応することで会社の成長につなげていきたい」と山地常務は話す。ハードウェア、ソフトウェアの両面で新しい技術の導入を積極的に進めている小河運送。運送や梱包といった人間が携わる業務が多いからこそ、ICTを活用することで更なる生産性向上が期待できそうだ。
企業概要
会社名 | 小河運送株式会社 |
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本社 | 香川県高松市屋島西町1972番地5 |
HP | https://ogo-group.com |
電話 | 087-841-3331 |
設立 | 1964年3月 |
従業員数 | 73人 |
事業内容 | 一般区域貨物自動車運送事業、貨物自動車運送取扱事業、商品車自動車回送業、特殊車両陸送事業、特殊車両誘導サービス事業 |