住宅資金,贈与,税金
(画像=Lisa-S/Shutterstock.com)
中川崇
中川崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

住宅を買うときは何かと多くの資金が必要となる。そこで親や祖父母などに資金提供を依頼して購入資金に当てるケースが多い。ここでは住宅を取得する際に贈与を受ける場合に、贈与税が無税になる場合や先延ばしにできる方法などについて説明する。なお、ここでは住宅の取得・新築中心に説明する。この記事で取り上げる制度の中には、増改築についても使える制度もあるが、その部分は割愛する。

目次

  1. 贈与税を非課税にする方法1 住宅取得等資金の非課税制度
    1. 住宅取得等資金の非課税制度って?
    2. 住宅取得等資金の非課税制度の要件は?
    3. 住宅取得等資金の非課税制度の金額は?
    4. 必要な書類は?
  2. 税金の支払いを先送りにする方法2 相続時精算課税
    1. 相続時精算課税って?
    2. 相続時精算課税の要件(60歳以上の人が贈与する場合)は?
    3. 相続時精算課税の要件(60歳未満の人が贈与する場合)は?
    4. 相続時精算課税の税金はいくら?
    5. 住宅取得資金の贈与との併用は可能?
    6. 相続時精算課税のデメリットは?
  3. その他に税金をかからなくする方法2選
    1. 1. 借り入れをする
    2. 2. 名義を入れる
  4. 贈与税を非課税にできる制度も検討を

贈与税を非課税にする方法1 住宅取得等資金の非課税制度

住宅取得等資金の非課税制度って?

住宅取得等資金の非課税制度は、実の両親や祖父母などの直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合に、一定の金額まで贈与税を無税にする制度である。なお、注意が必要なのは、贈与を受けた資金については全額住宅などそのものを取得するための資金に当てる必要があることだ。つまり、それ以外の、例えば仲介手数料などについて充てることはできない。

住宅取得等資金の非課税制度の要件は?

この制度を適用するにはいくつか要件がある。

贈与を受ける人の要件
・贈与を受けたときに贈与する人の直系卑属(子や孫)であること
・贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること
・贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること
・贈与を受けたときに日本国内に住所があること(ただし例外あり)
・2009年分から2014年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除く)

取得する物件の要件
・登記簿上の床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること
・床面積の半分以上が受贈者の住居になること
・配偶者や親族など一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋を取得したものでもなく、これらの人との契約で新築や増改築したものではないこと
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに受け取った金銭全部を使い、住宅用の家屋を取得すること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに入居するか、同日後速やかに入居することが見込まれること
・新築か、築後20年(耐火建築物の場合は25年)以内であること。または、耐震性につき一定の証明がなされているか、一定の要件のもと耐震工事を行うこと

申告の要件
・贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、この制度の適用を受ける旨の申告書を提出すること

住宅取得等資金の非課税制度の金額は?

非課税枠の金額については、取得する住宅にかかる消費税の率によって異なる。省エネ、耐震、バリアフリーについて一定以上の基準を満たす住宅(省エネ等住宅)に関しては、通常よりも非課税枠が高めに設定されている。

住宅の家屋に対する消費税率が10%のとき

住宅の家屋の契約の締結日省エネ等住宅それ以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日3,000万円2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日1,500万円1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日1,200万円700万円

住宅の家屋に対する消費税率が10%以外のとき(個人間の売買などで消費税がかからない場合など)

住宅の家屋の契約の締結日省エネ等住宅それ以外の住宅
2016年1月1日~2020年3月31日1,200万円700万円
2020年4月1日~2021年3月31日1,000万円500万円
2021年4月1日~2021年12月31日800万円300万円

必要な書類は?

申告にあたっては申告書の他に以下の書類が必要となる。
・受贈者の戸籍抄本などで、贈与者との関係が分かるもの
・適用する年度の所得が分かるもの(所得税の確定申告をしている場合は不要)
・この制度を適用して取得した住宅用家屋の登記事項証明書
・売り主、契約時期が分かる売買契約書または請負契約書の写し
・住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写しなど、省エネ等住宅であることが証明できる資料(省エネ等住宅の場合)

これらの他にも状況によっては別の資料が必要になることもある。詳しくは、
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/yoshiki2019/pdf/037.pdf にある一覧表を参考にしていただきたい。

税金の支払いを先送りにする方法2 相続時精算課税