税務調査の対象,なりやすい会社
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

「税務調査」は、どの会社にとっても来てほしくないものだと思いますが、どうして自分の会社が調査対象になる可能性があるのかを考えたことはあるでしょうか。

税務調査にも一応の基準があるといわれており、対象になりやすい会社や業種があるのです。

この基準を知っていれば、面倒で少し怖い税務調査の頻度を下げることができるかもしれません。

税務調査の対象になりやすい会社や業種について、詳しくご説明します。

税務調査とは

まずは税務調査について、基本的なことを理解しておきましょう。

税務調査とは納税者が正しい税務申告を行っているかを確認する訪問調査のことで、税務署などの国税庁の管轄下組織が行います。

対象になるのは主に会社などの法人ですが、個人事業主など個人が対象になることもあります。

調査日時は基本的には事前連絡があり、だいたい1~3日間続けて訪問調査されます。

初日の午前中は挨拶や事業の内容説明をし、その後、帳簿などを見ながら領収書との付き合わせや仕訳のチェックを受けます。

調査中に税務署職員から質問されることもあります。

最後に問題点などの指摘を受け、場合によっては追徴課税の手続きをとって税務調査終了です。

税務調査はかなりの負担

税務調査の間も業務を行うことはできますが、小さな会社や個人事業の場合は税務調査の対応にかかりきりになるため、業務が滞ります。

調査日までに領収書や帳簿の見直しも必要であり、税務調査はかなりの負担です。

しかし、税務調査の拒否はできません。

正当な理由なく調査を拒み続けた場合や悪質な脱税の可能性がある場合には、強制的な税務調査として突然税務署の立ち入りを受けるケースもあります。

税務調査は事業を続けるうえで避けられないことと納得して、頻度を下げる努力をするのがベストです。

税務調査の対象はどうやって決めるの?

税務調査の頻度を下げるには、対象を選ぶ基準を知り、自社がそれにあたらないよう工夫するしかありません。

税務調査の対象は国税総合管理(KSK)システムを用いて選ばれています。

KSKシステムは納税者の金融機関の情報や法務局の登記情報のデータベースで、登録されてある情報を分析して異常値をピックアップし、調査先を決めるのです。

さらに、KSKシステムだけでなく税務署の職員も調査と分析を行い、最終的な調査対象先が決まります。

税務署の調査能力はとても高く、日々の来客数や世間の流行り廃り、業界全体の景気、その業種の標準的な売上推移など、さまざまな情報を把握しています。

KSKシステムと職員の情報を総合的に勘案して、不適切な税務申告の疑いがある会社と調査対象先としてピックアップしているのです。

対象になりやすい会社の特徴

税務調査の頻度は、一般的には10年に1度といわれています。

ただし、先ほども説明したように、税務調査はやみくもに行われているわけではありません。

税務調査は税務署にとっても負担のある作業であることから予算や人員の効率を図るため、ある程度の理由と基準で対象先が決められています。

・規模が大きい会社
・短期間で業績が大幅に変動した会社
・不正が多い業種
・過去に重加算税を課せられたことのある会社

これらの会社は事前調査で異常値を疑われやすいため税務調査の対象になりやすく、3~5年のスパンで調査を受けるケースが多いです。
たとえば、短期間で売上が倍になっていたり経費の額が跳ね上がったりしていると、税務調査先の候補になりやすくなります。

規模が大きい会社

規模が大きな会社は取引額も大きいため、おのずと納税額も多くなります。

そのため調査対象になりやすいです。

・売上が100億円以上の会社
・外注や仕入れなど物とお金の動きが激しい会社
・急激に成長し、納税額が増えた会社
・急激に経費が増え、納税額が減った会社
・海外取引が多い会社
・固定資産などの売却を行い、売却損益を多額に計上した会社

これらの会社では、経費の水増しなど不適切な税務申告が行われやすいため、税務署も警戒してまめに調査に入ろうとします。

短期間で業績が大幅に変動した会社

短期間で業績が大きく変動した会社は、売上のごまかしなどの不適切な税務申告が行われやすく、調査対象になりやすいです。

たとえば、テレビで紹介されて急にブームになった飲食店や突然派手なテレビCMをうち始めた会社など、目立つ動きをすると税務署職員のアンテナにひっかかってしまいます。

仮装通貨やアフィリエイト業者なども短期間で業績が大きく上下しやすいため、要警戒です。

不正が多い業種

業界的に昔から税務申告作業がいい加減になりがちという業種があります。

・バーやクラブなど
・外国料理店
・居酒屋などの飲食店
・廃棄物処理業
・自動車修理業
・土木建設工事業
・パチンコ店
・貨物自動車運送業
・管工事業

これらの業種は、現金でのやり取りが多いため単純な計算ミスをしやすかったり、金銭勘定にあまりこだわらない職人気質な人が多かったりします。

そのため、これらの業種は昔から税務申告作業がややいい加減なことが多い業種といわれ、税務署も警戒してまめに税務調査に入る傾向にあります。

さらに、一件ごとの不正額が大きい業種も注意が必要です。

・水運業
・民生用電気機械器具および電球製造業
・精密機械器具卸売業
・パチンコ店
・再生資源卸売業
・木材、竹材卸売業
・貿易業
・飲食料品卸売業
・理化学機会器具等製造業
・自動車および付属品製造業

これらの業種の税務不正額は大きくなる傾向にあるため、税務調査の対象になりやすいです。

現金でのやり取りが多い業種やギャンブル、ひとりの客の売上額が大きな水商売などは不正が起こりやすいうえにその額も大きいため、税務調査の頻度も高くなるのです。

税務署としても、申告内容が本当に正しいのかまめに確認したいのでしょう。

過去に重加算税を課せられたことのある会社

他にも、過去に不正な税務申告をして重加算税という重い処罰を受けた会社は、税務調査の対象になりやすいです。

適切な税務申告に改めているかを何年にも渡って確かめられます。

税務調査の頻度を下げるにはどうしたらいい?

税務調査の頻度を下げるには、これまで説明してきた対象になりやすい会社の特徴を取り除くのがベストです。

税務申告時に税理士法の書面添付制度を利用して、申告内容の理由を添付しておくのがおすすめです。

税務署がなにか疑問を感じたとしてもまずは税理士に問い合わせるため、税務調査を回避しやすくなります。

申告書類の備考欄に、業績変動の理由などを記載するのも効果的です。

たとえば経費が急に増えた場合には「東京オリンピックによる建築ラッシュで建築資材が高騰したため」などと記載しておけば、異常値と判定されにくくなります。

日々の業務で気を付けるべきは、帳簿をまめに正確につけるということです。

帳簿さえまめにつけていれば、仮に税務調査が入っても単純なミスの指摘だけで済むこともあります。

大きな業績の変動もできるだけ避けましょう。

大きな赤字は会社としてももちろん避けたいですが、黒字もじりじりと右肩上がりの成長がベストです。

税務署に異常値と判断されにくくなります。

まとめ

税務調査には一定の基準があり、対象になりやすい会社というものがあります。

対象になりやすい特徴を取り除けば、税務調査の頻度を下げることができるかもしれません。

ご紹介した対象になりやすい特徴とそれを取り除く方法を参考に、ぜひ実践してみてください。(提供:ベンチャーサポート税理士法人