働き方改革やコロナ禍で生じた変化の中、Z世代たちは、自分の職場をどのように捉え、仕事に何を求めているのか。営業職として働く20代前半のZ世代社会人3人に匿名で、職場でのコミュニケーション、仕事のやりがい、上司や周囲への期待について、赤裸々に語ってもらった。
【参加者(いずれも仮名)】
野村氏 営業職 入社3年目 男性
田中氏 営業職 入社4年目 女性
加藤氏 営業職 入社2年目 女性
【司会】
斎藤幸江 就職・採用アナリスト
前編はこちら
Z世代が語る、就職活動から今、これからについて
後編は、職場内でのコミュニケーションや理想の社会人像を伺いながら、先輩になっていく中での自身の課題や人事担当者へのメッセージを話してもらった。
仕事仲間とプライベート
【斎藤】職場では、プライベートと仕事と分けていますか?
【田中】今の職場では上司や先輩、後輩を含め、誰にでもなんでも話せます。そこは突っ込んでほしくないと思ったことは一回もないですね。
ただ、取引先で50代以上の方に対して、プライベートな時間も使って関われば、仕事に有利になるだろうと、頑張っていた時期があります。平日の夜に飲み会を入れたり、土日にゴルフをしたりしていたんです。けれど、最近は、辞めています。メリットがないことに気づいたので。
【野村】仕事仲間と結構、遊びに行ったりしますよ。ゴルフやボーリングに行ったりしています。飲み会も行きます。話をしていても、ここを聞かれたらいやだなということは、ありません。
【田中】プライベートな話題については、上の世代はめちゃくちゃ気を付けています。新入社員の時に男性の先輩と身長の話をしていたら、「その話題はダメだよ」と注意されましたから。
おじさん世代は、ハラスメント研修で相当厳しくたたき込まれているみたいで、「髪の毛、切ったね」もアウトなので言いません。あとは、コロナで飲み会が激減して、羽目を外す場がなくなったというのも、プライベートを突っ込まれなくなった背景かもしれないですね。
【斎藤】仕事をする上で、親しさは必要だと思いますか?オンとオフ両方を知っているから、仕事もうまくいくのでしょうか?
【田中】仕事の場で仲良くできるなら、それはそれでオッケーですが、プライベートを言いたくない人は言わなくてもいいと思うし、それぞれのスタイルを尊重したいですね。
【加藤】私は基本的なコミュニケーションがあって良好な関係で仕事ができる方がやりやすいし、そういう関係は築きたいなと思います。
【野村】親しさの効果は100%あると思います。でも、仕事をうまくさせるために親しくなるというのは、なんかちょっと違うかな。たまたま仲良くなれたら、それは絶対仕事にプラスになるけれど、仕事をうまくいかせるために仲良くなるのは、わざわざそこまでしなくていいという気がします。
信頼関係が職場には不可欠
【斎藤】職場でこんなことは、勘弁してほしい、これは嫌だというものはありますか?
【田中】今の職場は、営業でほとんど外出していることもあり、仕事を任されていると実感しています。上司たちも信頼してくれているし、私もそれに応えています。でもその関係が崩れたら、嫌ですね。たとえば、外出時の行動をGPSで監視されるとか。
【野村】監視は嫌ですよね。僕は仕事に役立つソフトを上司の許可を取って入れたんですよね。その時に、自分で勝手にフォルダーに名前をつけて保存しました。それがある時、上司のパソコンをみたら、その名前のフォルダーがあったんですよ。
監視されているんだ!とその時、初めて気づきました。僕の職場では、コロナ後も週2くらいで在宅勤務をしています。それでチェックしているのかなって。今は開き直って、気にしない様にしたり、自動的に仕事をしているように見せるアプリをわざと入れたりしています。
社会人の魅力は意思と主体性
【斎藤】自分たちよりも上の世代に何か要望、あるいは期待はありますか?
【野村】夢を持っていてほしいですよね。パッションがある人だと、その人のためにがんばろうという気持ちに少しはなります。あとは、自分の責任はきちんととってほしいですね。たまに人になすりつけようとするタイプがいますから。
【斎藤】最後の最後にちょっと腰を引いてしまう人とか?
【野村】そこはやっぱりしっかり前に出ないとよくないですよ。自分の意思がある人たちは、かっこいいですよ。保身に走っているのが、嫌なんです。
【田中】今の野村さんの意見を聞いて思ったのは、「サラリーマン」になってしまった人は、私は好きじゃないかもしれません。自分の意思がなくて、上の意向がわからないと動けなくて、自分が批判されないようにするためにどう動くかに徹してしまっている人ですね。こういう人にはもう関わりたくないなって、強く思っちゃいます。
あとは、いかに省エネをして働くかに努力する人も、かっこいいと思えないです。自分の意思があって、上をうまく使いつつ、自分がやりたいという方向に持っていける人は、いいですね。自分の意思で行動している中で敵も味方も作る、でも、それも受け入れて進んでいく人は、いいです。八方美人よりずっと信頼できます。
【加藤】責任を取っていただく方は、かっこいいと思いますね。私自身がまだ社会人になったばかりで、自分の行動に責任を持ちきれない部分もあります。責任を取ってくれる上司なら、不安があるけれどここはもう少し頑張ろうと思えると感じます。あとは、悪口を言わない人がいいですね。
【斎藤】有名人で、この生き方はかっこいい、この人は素敵だという人はいますか?
【野村】尾崎豊さんですね。ライブの映像を見た時に、こんなに熱く歌う人がいるんだと思って。きれいに歌おうとするのではなく、俺はこう歌うんだっていうのを出しているところがすごいですね。あとはさっき言っていたかっこいい上司とちょっと似ている感じですね。
【田中】私は長渕剛はめちゃくちゃ好きです。人間の弱いところを歌にしてくれて、なのに悲しくなくてパワーをもらえます。大地みたいな人です。
【加藤】私がぱっと思い浮かんだのは、吉高由里子さんです。女性から見ても素敵な女性だなと。めっちゃ美人ではないんですが、テレビを見ていると周りをすごく明るくする方だなと思います。それに人柄がすごくいいと感じるので、吉高さんは素敵ですね。
これからの日本社会に期待すること
【斎藤】これからの社会への要望、期待はありますか?
【田中】少子高齢化が嫌です。私自身、子供はたくさん欲しいです。それが可能な社会に期待します。
【加藤】女性が女性がって言う社会は、もうやめたらって思います。女性だからできない、女性だから子育てとか、そういうのは、そろそろもうおしまいでいいんじゃないかなと思っています。
【野村】僕は日本がダウントレンドの国だと感じているんですが、そこを誰かがどうにか巻き返してほしいと思っています。僕はちょっとバブルでウェイウェイしていた昭和のサラリーマンにあこがれがあるんですよ。楽しそうで活気があったんだろうな、と。
もし、そういう時代が来るなら、僕は会社を辞めずにサラリーマンを続けるかもしれないなと思います。
先輩としての立ち位置を考える
【斎藤】この先、みなさんの後輩も社会に入ってくるわけですが、先輩としてどんな風に接したい、どんな先輩になりたいと思いますか?
【田中】私はさきほど、質問しやすい暇な人が職場にほしいと言いましたが、やることをちゃんとやって余白があって、その余白に後輩の意見や悩み質問を受け入れるオーラを出したいと思うんです。
でも現実は、全然出せていないですね。むしろ、話しかけないで!というオーラが出ている気がして、その点は今後の課題です。
【加藤】私も話しかけやすい環境は作りたいですね。入社1年目の教育担当の方が女性のすごく忙しい方で、男性のサブがつくほどでした。でもこちらとしては、同性の担当者に相談できないのは、少し寂しかったですね。性別に関係なく、年齢が近い同士和気あいあいと相談できる環境は作りたいです。
【野村】実は去年、後輩の指導を任されたのに、教え方が全然わからなくてめちゃくちゃ手こずりました。途中から「どうやって教えればいいんですか?」って上司に聞きました。そうしたら、「なんでもかんでも教えるのはダメだ」って言われて気づきました。
「これを作ってほしいから、あとは自分で調べてやろう」と促さないと、意欲が湧かないんですよね。最初は一から十まで優しく教えたほうがいいと思っていましたけれど、それはやっちゃダメなんだと経験して気づきました。
やってほしいことはこれ、方法は自分で考えよう、自分はこういうやり方をしたけれど、違う方法もあると思うよという教え方をすること、そしてユーモアがある話し方をすること。この二点を今は気を付けるようにしています。そうでないと教わるほうも楽しくないでしょうから。
人事担当者へのメッセージ
【斎藤】この記事の読者である人事担当者の方に、何か要望はありますか?
【田中】ウチは人事担当者と個別面談する機会があるんですよ。でもその時に言った不満や要望が実現したことは、一度もないですね。
【加藤】わかります。
【田中】一応、上に上げてくれているとは思うんですけど、実現してほしいです。
【野村】この記事を読む人はZ世代に興味があるのでしょうか?
【斎藤】そうです。
【野村】Z世代について、ネットでいろいろな情報が入ってくると思います。でも間違った情報も大量に入ってくるわけですよね。何が一番有効で信用できるかというと、ご自身が体験して感じたことだと思うんですよね。それを踏まえてこの対談を読んだり、職場の現場でしっかり体験したりして、Z世代にどう向き合えばいいのか、しっかり考えてほしいです。
【斎藤】ありがとうございました。