この記事は2023年7月6日に「テレ東BIZ」で公開された「急拡大!「トレファク」~知られざるリサイクル最前線:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。
快適!安い!超品揃え!~快進撃「トレファク」の秘密
東京・八王子市のアウトドア専門の「トレファクスポーツ アウトドア」多摩南大沢店。一見、普通のアウトドア用品店だが、並んでいるのはすべてリユース品だ。テントだけでも100種類以上の品揃えで、「スノーピーク」の4人用テントが2万3,980円(税込)。未使用の本格派登山靴は1万1,180円(税込)で売られていた。
初心者からヘビーユーザーまで、圧倒的な品揃えの魅力に客が集まってくる。商品を試せるスペースも完備するなど、「トレファクスポーツ」はリサイクルショップとは思えない専門店の魅力で人気を呼んでいる。
▽「トレファクスポーツ アウトドア」リサイクルショップとは思えない専門店の魅力
取り付けが難しいと、あまりリユースでは売っていないのがエアコンだ。リユースエアコンを探す人に、もってこいなのが緑の「トレファクマーケット」。驚くほど広い店内に並ぶのは多種多様な家具と家電製品。家具と家電のリサイクル専門店だ。
▽家具と家電のリサイクル専門店「トレファクマーケット」
千葉市の「トレファクマーケット」千葉おゆみ野店では「フランスベッド」製の定価12万6,500円のソファーが3万2,780円(税込)に。そして他のリサイクル店では取り扱いが少ないエアコンが30種類以上もある。トレファクは専門店にしかできない圧倒的な品ぞろえとリユースならではの低価格でリピーターを増やし続けているのだ。
そんな専門店戦略を進めるトレファクは、なんでもそろう主力業態の「トレジャーファクトリー」以外にも、さまざまな業態を生み出し、業績を、この10年で3倍以上に伸ばす快進撃を続けている。
神戸市の「トレジャーファクトリー」イオンモール神戸南店は、モールに入居するテナントの中で最大級の面積を占める。店内は広々とした通路に清潔感ある空間。涼しげにディスプレイされた季節物のアパレル商品も。今や必需品のワイヤレスイヤホンもすべてリユース品だ。モールの来店客も、トレファクに立ち寄るのが定番コースになっている。
きれいな店内と安くて楽しい品揃えで、誰もが日常的に使いたくなるリサイクルショップ。それが急拡大の原動力となっている。
さいたま市の倉庫にトレファク強さの裏側が。広大な空間に並ぶのは、家電製品から玩具まで客から買いとったさまざまな中古品。社長・野坂英吾(51)が案内してくれた。
▽さいたま市の倉庫、社長・野坂英吾さん(51)が案内してくれた
カンブリア宮殿では2013年、企画「目指せ100億円スペシャル」で野坂を取り上げている。当時は、年商80億円のトレジャー・ファクトリーを率いる若き経営者だった。
10年ぶりに登場した野坂は、以前にもまして攻めまくっている。
見せてくれたのは引き取ったばかりのエアコン。トレファクでは2019年から他が敬遠するエアコンの買い取りを強化。手間のかかる洗浄を丁寧に行い、取り付け工事の体制を整えるなど、リユース市場にエアコンという新たなジャンルを作り上げた。
「ひと夏で2,000台のエアコンを売っています。リユース市場を自分たちで作り出し大きくするためには、今まで何か障壁があった商品を取り扱えるようにすることが大きなテーマなんです」(野坂)
どんな古着も売り切る工夫~社員が作るマニア垂涎の売り場
「他が買い取らないものを買い取り、工夫して売る」がトレジャー・ファクトリーの成長戦略だ。
東京・調布市の古着を扱う専門店「トレファクスタイル」調布国領店の買い取りカウンターでは、客が売りに来た古着を次から次に買い取っていた。有名ブランド品はもちろん、わずかしか値がつかない古着でも基本、買い取ってくれることが特徴になっている。
しかもトレファクには、それを売り切る工夫がある。店内で仕分けられた古着を見てみると、その一部がトラックに積み込まれ、世田谷区の「ユーズレット」祖師ヶ谷大蔵店という激安の古着専門店に運ばれた。実は、ここもトレジャー・ファクトリーが展開する店の1つだ。
「低価格帯の古着をより安く販売しています」(エリアマネージャー・高木優作)
売れない商品が日々、どんどん安くなる仕組みになっている。
一方、渋谷区にある「ブランドコレクト」表参道2号店に向かった商品も。こちらは高級ブランド専門のリサイクルショップだ。こうして幅広く買い取り、それをさまざまな業態で売り切ることで、トレファクは、リユースビジネスを拡大しているのだ。
千葉・柏市の「トレジャーファクトリー」南柏店。ここには楽器店と見まごうリユースの楽器売り場がある。品揃えと管理の良さで、マニアの間では知られた売り場だという。この売り場を作っている社員たちは筋金入りの楽器好き。「楽器チーム」リーダーの岡田翔は「楽しいしかないです」と笑う。
▽「トレジャーファクトリー」南柏店、楽器店と見まごうリユースの楽器売り場がある
トレファクでは自分たちの好きな商品の売り場を自由に作ることができる。例えば八王子市の「トレジャーファクトリー」八王子めじろ台店には、石井貴大店長の判断で作ったというアクリルケースに入ったビンテージスニーカーの売り場が。目利きの石井なら商品を高く買ってくれると、常連客もついている。石井自身も「2日続けて同じ靴は履かない」と言うスニーカーマニアだ。
さらに東久留米市の「トレジャーファクトリー」東久留米店の店長・岡井梓の熱意で作り上げたのはアイドルグッズの売り場。ジャニーズ系やK-POPのアイドルグッズを置いており、今ではこの売り場を目指して遠方からも客がやってくる。
「商品を見ているお客様が『きゃー!』と叫んでいるのをたまに聞きます」(岡井)
買い取った商品をスタッフが情熱とともに売っているのだ。
中古品の店を進化させろ!~トレファク社長、涙の格闘
野坂の店舗視察では譲れないこだわりがある。陳列の乱れをシビアに指摘。アクリルパネルについた細かいホコリも気になった。野坂が徹底するのはリサイクル店を感じさせない快適な店作りだ。
「リユースだから、キレイに売っているとより商品の価値が引き立つ。1品ずつ品物をいかにキレイに売っていくか、創業以来こだわってきました」(野坂)
野坂は学生時代から起業を決意していた。ビジネスのアイデアを50書き出し、10番目に思いついたのがリサイクル店だった。理由は、ショッピングモールでバイトをしていた時の光景にあった。
「家電量販店やインテリアショップのお客様が買い替えて処分するものが、同じゴミ捨て場に捨てられていた。発売されて半年のテレビや新品のようなダイニングセットが捨てられていて、毎日『もったいないな』と。お金を払ってでも買いたい方がいるんじゃないかな、と」(野坂)
野坂は東京近郊のリサイクル店を回り、店主へ独自の聞き込み調査を行った。徹底的に店の様子や商品を調査、ノートに看板が汚れているなど、気付いた問題点を書き出していった。調査をした店の数は48店に上った。
「電車で行って店まで歩いて。当時は値段が付いていないのが当たり前で、接客もサービスもしてくれない。小売業として当たり前のことをきっちりやっていけば、まだまだリユースショップを利用していない潜在的なユーザーが世の中に多くいるのではないかと、調査をしていく中で感じました」(野坂)
1995年、トレジャーファクトリー1号店を開業。創業の決意は「社会に役立つリサイクルが当たり前になる今までにない店を作ろう!」だった。
創業から3年、ようやく客が増え始めた頃、衝撃的な出来事があった。家具を買ってくれた客の家まで野坂が商品の配送に行き、「リサイクルショップのトレジャーファクトリーです」と挨拶をすると、「うちじゃないですよ、お隣りじゃないですか」と言われた。そこで本来の客に荷物を届けたが、その後、客から「隣家に中古品を買ったのがバレたじゃないか」とクレームの電話が。中古品を買う貧乏人と思われたと激怒したのだ。
「創業当時、リユースというのは『お金がないからリユースで買う』『お金がないからリユースに売る』が標準だったわけです。丁寧に謝って電話を切った後、5分ほど涙が止まりませんでした」(野坂)
この涙に野坂の原点がある。
買い取りと引っ越しが合体~業態を超えた新ビジネス
トレジャー・ファクトリーが始めた、中古品の買い取りと引っ越しを合体させた便利なサービスが人気を呼んでいる。
▽「トレファク引越」中古品の買い取りと引っ越しを合体させた便利なサービスが人気
埼玉・川越市。「トレファク引越」の藤田麗彌がこれから引っ越しを始める家を訪ねると、廃棄するという家の中のものにピンクのシールを貼り始めた。
「お客様が引っ越しの荷物で不要になり、次の自宅で使わない物をトレファクが買い取る形になります」(藤田)
引っ越しの時に有料で廃棄する家財道具をトレファクが買い取ってくれる。この日の4人家族の場合、引っ越しにかかる費用は約11万3,300円。そこからトレファクが買い取ったテレビや冷蔵庫などの金額を引くと9万9,500円になった。買い取りが多ければ引っ越し代がゼロになることもあるという。
「トレファク引越」の取り扱いは2014年の開始以来、すでに5万4,000件に達しているという。
新サービスは引っ越しだけではない。ある家では、バイヤーが家の中から買い取れそうなものをチェックし始める一方、「トレファク不動産」の担当者が家の外壁のチェックを始めた。家自体を査定しているのだ。家の売買まで行う「トレファク不動産」。家の売却とその時につきものの家財道具の処分を合わせたワンストップの便利なサービスだ。
トレファクは引っ越しから不動産売買、生前整理まで、人生のさまざまなシーンで使えるリユースサービスを次々に立ち上げている。
ぬいぐるみが海外で爆売れ~年商1,000億円への挑戦!
野坂が笑顔で見せてくれたのはリユースとして買い取ったリラックマ。
「海外では日本のぬいぐるみ需要が高いんです。アジアの国々での販売につながる」(野坂)
▽「海外では日本のぬいぐるみ需要が高いんです。」と語る野坂さん
ぬいぐるみのリユース品は汚れが気になると、国内ではあまり流通していない。
「国内で売り切れないので買っていなかったのですが、今は海外マーケットで売れるので、幅広く買い取りをさせていただいてます」(野坂)
そんな日本からぬいぐるみを送るのはタイ・バンコク。トレファクはすでにタイと台湾に4つの海外店を構えている。そこでは日本のぬいぐるみが大人気。客は「安くて買いやすいのが魅力的です」と言う。
10年前、「目指せ100億円スペシャル」に出演した野坂。スタジオで小池栄子の「『目指せ1,000億円』は?」と聞かれ、こう答えている。
「300億円は近づいていますが、次の1,000億円は桁が違ってくる。そういう意味では経営が2段3段、変化しないと。今のまま2倍、3倍という発想では1,000億円は達成しないと思います」
※価格は放送時の金額です。
~村上龍の編集後記~
野坂さんはまじめだ。中学2年の時に、起業を決意。50のアイデアを書き出せと言われ、10番目に思いついたのがリサイクルショップ。
視察を開始。3軒回ったときに止めようと。だが48軒目で気づく。接客や買い取り、値付け、商品陳列など、当たり前のことができていない店が生き残っている。当たり前のことをやれば成功するかも。そして、成功した。
コンビニやスーパーなどの他の小売のように、リサイクルショップが、どこの街にも1つはあるような社会インフラになるのが目標だった。目標も、達成された。
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<出演者略歴>
野坂英吾(のさか・えいご)
1972年、神奈川県生まれ。1995年、トレジャー・ファクトリー設立。2014年、東証一部上場。2022年、東証プライムに市場変更。
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