(本記事は、本間 英俊氏の著書『「P2Cブランド」の教科書』=きずな出版、2023年7月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
ブランド成功の秘訣はコラボレーションにあり
スタートで大切な「リスク管理」
ブランドビジネスで成功するには、有名なインフルエンサーでなくてはならない。あるいは、他では真似できないような商品をつくることができるメーカーでなくてはならない。そう思い込んでいる人は少なくありません。
しかし、そんなインフルエンサーやメーカーでなくても、短期間で大きな利益を生み出す方法があります。本章では、その方法についておもに説明していきましょう。
私はファッションブランドプロデューサーという職業柄、こんな質問をよく受けます。
「アパレルブランドをつくりたいのですが、何から始めればよいですか?」
ブランドを立ち上げる目的はさまざまです。将来、パリコレに参加するようなブランドをやりたいのか、全国に数十店舗を展開するようなブランドに育てたいのか。
なによりも自分の欲しい服をつくってみたいのか、世の中の不満、不安、不便を解消するような社会に貢献する仕事をしたいのか。会社のイメージをアップさせたいのか、フロントエンドやバックエンド商品として展開したいのか。
その目的によってブランドメッセージは大きく異なります。しかし、もし私がゼロからファッションブランドを立ち上げるなら、まずは「リスクを下げる」ことを考えます。
多くの場合、最初は資金も人的リソースも少ないでしょうから、極力リスクを抑えながらテストを繰り返していきます。
たとえば、まずは100着くらいのロットから始めて、どういうデザインやコンセプトがふさわしいか、どのようにお客様にアプローチすればよいかを探りながら、何度もテストを重ねていきます。そうしてリスクを管理しながら、成功に着実に近づいていくのです。
どんなにデザインやコンセプトに自信があっても、いきなり大勝負をして売れるほどファッションビジネスは甘くありません。
現実を見据えれば、いきなりリアル店舗を構えるのではなく、まずはECで販売する。つまり、B2C (Business to Consumer)モデルで、お客様に直接販売するのが最善の策です。
すでにリアル店舗を展開している場合も同じ。もはやECをおざなりにしてブランドを大きくすることはできません。
「強み」をもち寄るのが成功の近道
しかし、ECの弱点は、ただアイテムをつくって並べただけでは誰もお店にやってきてくれないこと。誰にも気づいてもらえなければ、無人島に一軒、ぽつんとショップを出しているのと同じです。
まずはECショップにお客様がやってくるように橋をかけてあげる必要があります。
そこで重要な役割を果たすのがインフルエンサーです。
彼ら、彼女らの存在を通じて多くの人にブランドに興味・関心をもってもらうことが、ECで服を売るための近道なのです。
私自身はSNSのフォロワーをたくさん抱えるインフルエンサーではありません。私が情報発信しても、その反応はたかが知れています。私が得意とするのは、ファッションブランドの商品企画や販売計画、コンサルティングです。
そのため、P2Cブランドを展開するときは、ほとんどがコラボレーションビジネス。インフルエンサーやメーカーなどと一緒にお互いの強みをもち寄り、価値を生み出すというスタイルです。
「弱み」を克服するな、「強み」をとがらせろ
SNSで仕掛けたいならインフルエンサーと組み、クオリティの高い製品をつくりたいならそれが得意なメーカーやブランドと組む。お互いの「資産」を掛け合わせることでブランドの価値が生まれるのです。
なんでも自分一人でやりたがる人もいます。もちろん、否定はしませんが、現実には圧倒的に時間が足りない。
たとえば、ゼロからインスタを始めてインフルエンサーになろうと思えば、途方もない時間と労力がかかります。ジョイントなら、他の人の経験値で補い合うことができるので、スピード感が出ます。
P2Cブランドのようなジョイントビジネスでは、「弱み」を自分で克服するよりも、「強み」をとがらせたほうが結果は出やすいのです。
このようにプロジェクトごとにチームを組んで活動するという意味で、映画やアニメの「製作委員会」のイメージに近いかもしれません。
もし、あなたがインフルエンサーや特別な技術をもつメーカーでなくても、ブランドを成功させる秘訣があります。ズバリ、「製作委員会方式」です。
どのように「製作委員会方式」を取り入れて、誰とジョイントをするのか? ここは大事なところなので、次項でしっかりと伝えていきます。