(本記事は、安達 裕哉氏の著書『頭のいい人が話す前に考えていること』=ダイヤモンド社、2023年4月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
深く聞く技術② 質問の前に仮説を立てる
構造化面接の手法に加えて、もうひとつ深く聞く技術を紹介しましょう。
たとえば、クライアントの意思決定者に話を聞く機会を得たとします。
あなたは意思決定者が何を課題と感じているのか、引き出さなければいけません。
「部長は、今何を課題に感じていますか?」
とストレートに聞くこともできます。
この質問で望んでいる答えを引き出せればいいですが、
「とくに喫緊の課題はないですね……。」
と、うまく返ってこない場合がほとんどでしょう。この場合どうするか。
それは〝仮説を立てて質問をする〞ことです。
するとこのように質問できます。
「先日、売上の心配をされていらっしゃいましたが、もしかしたら営業上の課題を感じていらっしゃるのでしょうか。それとも商材、マーケティングなど、他の課題でしょうか?」
つまり、売上不振の原因は営業にあるのではないか? という仮説です。
するとこう返ってくるかもしれません。
「たしかに、営業に全く課題がないわけではないですが、どちらかというと頭が痛いのは、新規のお客さんの定着が良くないことですね。契約の継続率をなんとかしたいのですが……。」
売上不振の原因は営業にあるのではないか、という仮説は当たりませんでした。ただ、大事なのは仮説が当たったかどうか、ではありません。仮説を提示することで、〝契約の継続率〞という課題を引き出すことができました。
もちろん、このようにすんなり相手の思いを引き出せないこともあります。ただ、仮説を立てて質問するのとそうでないのとでは、回答の〝質〞が変わってきます。
つまり、ちゃんと考えて質問するというのは、質問する前に、相手の立場に立ち、仮説をもって質問するということなのです。
コンサルタントの世界では、常に仮説という言葉が飛び交います。頭のいい人は常に仮説を立てて考えていると言ってもいいでしょう。
とはいえ、いきなり仮説を立てろと言われても……と思う人もいるでしょう。
そこでおすすめなのは、「もし仮に私が〇〇の立場だったら……」で質問してみることです。
「もし私が部長の立場だったら……プレッシャーに押しつぶされそうになると思うんですが、部長はどうですか?」
「もし私が妻(夫)の立場だったら……」「もし部下の立場だったら……」
また、1章でお伝えした「話を深くするコツ」の〝自分と反対の意見を調べる〞を応用して、反対の意見から仮説を立てて質問することもできます。
「社長の意見に対して、〇〇といった反対の意見も社員から出る可能性もありますが、いかがですか?」
これで「どう思う?」と漠然と聞くよりも、間違いなく返答の質が変わってくるはずです。
まとめると、仮説を立てて質問するというのは、質問の前に、さまざまな角度から物事を考えて質問するということなのです。
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