(本記事は、安達 裕哉氏の著書『頭のいい人が話す前に考えていること』=ダイヤモンド社、2023年4月19日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
人がバカに見える3つの「瞬間」
オフィスでこんな話をしている人たちがいました。
「先輩、昨日テレビで見たんですけど、年収を上げるには、英語力と会計の知識が重要みたいです。どう勉強したらいいですかね?」
「えっと……佐藤さんの仕事って、英語も会計も使わないよね?」
「でも、英語って、グローバル化の流れの中で、重要なのは間違いないですよね?」
「重要じゃないとは言わないけど……そもそもグローバル化が佐藤さんの仕事にどう関係しているの?」
「いや、最近みんなグローバル化って言うじゃないですか。お客さんも、〝グローバルの推進〞を掲げてましたよ。」
「否定はしないけど、グローバル化の推進って……どういうこと?」
「えっと……詳しくは聞いてないんですけど……。」
「……ま、頑張って。」
先輩は、この後輩を〝ちゃんと考えていない奴〞と認定しました。
みなさんもこの会話を読んで後輩の話が〝浅いな〞と感じたかもしれません。
このように、人の話を聞いて、「浅いな」とか、逆に「深いな」と感じることはないでしょうか。
話が浅くなる3つの理由
〝話が浅い人〞の特徴は3つあります。
1 根拠が薄い
2 言葉の「意味・定義」をよく考えずに使う
3 成り立ちを知らない
これらの特徴に当てはまると、聞く側は「この人の話、浅いな」と感じてしまいます。
しかし、これは決して他人ごとではなく、私を含めだれでもついついやってしまう話し方でもあります。
だからこそ、これらのポイントに意識的になることが重要なのです。
ただし、注意していただきたいのは、話題やテーマで話の「深さ・浅さ」が決まるわけではない、ということです。
たとえば、政治の話をしても浅い人はいます。流行りのアイドルやアニメの話でも、深いなと感じさせる人はいます。
タレントのタモリ氏が「日本坂道学会」(自称)という学会を設立していると知り、著書『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』を読んでみました。この本のまえがきは、タモリ氏が東京に初めて来たとき、なんと坂道の多い所だと感じたこと、生まれ育った家が長い坂道の途中にあったことに触れ、こう続きます。
人間の思考、思想は、要約すると傾斜の思想と平地の思想に大別することができる。平地の思考のそれはハイデッガーである。
〝坂〞ひとつでこれほどの話ができる人がいるというのは驚きでした。
これを聞いたある作家が、「傾斜について対談がしたい」と申し入れたほどだそうです。
もちろん哲学の話をすればいいわけではありません。
哲学にしろ、坂にしろ、アイドルにしろ、どう掘り下げるかが肝心なのです。
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