HRテックを活用しながら人事評価面談のクオリティを上げる方法
(画像=One/stock.adobe.com)

(本記事は、森中 謙介氏、町田 耕一氏の著書『これ1冊でわかる 中小企業のHRテック入門~わが社でもできる! 導入から運用まで~』=あさ出版、2022年11月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

⦿人事評価面談のクオリティを向上させる

人事評価の納得度を高めるためには、評価者が常日頃から部下の仕事ぶりをよく観察しておくことと、定期的に行われる人事評価面談の場で客観的かつ納得感のあるフィードバックができるかが非常に重要です。

会社によっては評価者のスキルレベルが不十分であったり、日常業務の中で仕事ぶりや評価に関するコミュニケーションが部下と十分に取れていないケースが少なくありません。

リモートによる単独ワークが増えてきている昨今では、上司と部下のコミュニケーションが量・質ともにますます低下してきており、人事評価面談の際に必要な情報が十分にそろわないことが課題として指摘されています。

この点、HRテックを活用してリモートワークにも対応しながら、上司と部下との日常的なコミュニケーションの質を高め、結果的に人事評価面談のクオリティも向上させることができる仕組みが出てきています。

「1on1ミーティング」などは日本国内でも近年非常に注目されており、実際に取り入れる企業も増えてきています。

あるHRテックのサービスで、「1on1ミーティング」に特化したシステムの利便性が格段に向上しているものもあります。イメージとしては次のとおりです。

・ミーティングの実施前にトピックや要望などが上司・部下の間で共有される
・ミーティング時にリモート会議をしながら決定事項や課題を整理するためのto do機能が活用できることで、その場で必要な情報の整理ができる

こうした情報が定期的に蓄積されていけば、人事評価の本番を行う際に、非常に充実した状態になることが可能になると考えられます。

また、それらの情報は定期的な「1on1ミーティング」を通じて部下とも共有してきた内容であるため、評価面談の際にも納得感のある材料として確認し合うことが期待できます。

ここで注意すべきことは、HRテックが提供してくれるものはあくまでツールと機会であり、必ずしも直接的に評価者のスキルアップを実現するものではないということです。

これまで見てきたように、HRテックを活用することにより人事評価制度がより手軽に導入できたり、クラウド化、自動化などを通じて実務の効率化が図れます。しかし、それによって人事評価に関連した上司・部下とのアナログなコミュニケーションが減ってしまうようでは、本末転倒ではないかと筆者は考えています。これまでも繰り返し述べてきているとおり、最終的に人事評価の納得感を高めるのは、上司と部下との質の高いコミュニケーションです。逆に言えばコミュニケーションが十分にできていないから、多くの企業で社員の人事評価に対する納得性が低い状態にあるのです。

HRテックの活用により生み出された時間は、上司・部下間のコミュニケーションの時間に充てるべきです。HRテックを有効活用してコミュニケーションの質を高め、評価者としてのスキルアップも図っていくことが望ましい運用スタイルであると筆者は考えます。

これ1冊でわかる 中小企業のHRテック入門~わが社でもできる! 導入から運用まで~
森中 謙介(もりなか・けんすけ)
株式会社新経営サービス人事戦略研究所マネージングコンサルタント
中小企業経営者への人事制度構築・改善のコンサルティングを中心に、これまでにかかわった会社は90社にのぼる。各社ごとの実態に沿った、シンプルで運用しやすい人事制度づくりに定評がある。「人事制度を軸にした“人・組織の成長”」をモットーにしており、制度導入後も経営理念、経営方針の浸透、あるいは評価者教育の推進など、幅広い支援を行っている。そのためクライアントとのかかわりは中長期にわたることが多く、リピーターも多く有している。
著書に、『9割の会社が人事評価制度で失敗する理由』(あさ出版、2019)、『人手不足を円満解決 現状分析から始めるシニア再雇用・定年延長』(第一法規、2020)、『社内評価の強化書~上司の“評価エラー”を逆手に取る出世の法則~』(三笠書房、2018)、『社員300 名までの人事評価・賃金制度入門』(中央経済社、2016)などがある。
町田 耕一(まちだ・こういち)
株式会社新経営サービス人事戦略研究所コンサルタント
大学院修了後、大手ERP 開発企業で人事給与システムの導入・保守に携わる傍ら、残業削減を含む社内改善にも携わり、成果を出す。新経営サービス入社後は、人事・情報技術の知見を活かし、人事制度策定・運用だけでなく、HRテックの導入・活用に対する顧客への提案も積極的に行っている。 新経営サービス内でのHRテック導入を主導した実績をもち、中小企業で一からHRテックを導入する際の留意点や、また社内でHRテックを扱える人材の育成手法にも明るい。 また、システム開発経験のある人事コンサルタントとして、HRテック事業者へのシステム開発協力も精力的に行っており、同業界の最新事情にも精通している。 G検定(AI活用能力)に2019 年3月合格後、E 資格(AI作成能力)合格者との限定コミュニティ(5万名以上)で活動。「NEWS+」グループのリーダー。2022年に貢献に対する投票等で決まる最優秀賞をグループ・個人とも受賞。英国王室公認品質協会(CQI|IRCA)から、世界80か国、2万名以上の会員に発刊された『Quality World』誌2022年秋号のAI特集記事への寄稿にも協力。

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