新型コロナ感染症を機に私たちの働き方は大きく変わっています。テレワークが本格的に推進され、遠隔のコミュニケーションを実現するアプリケーションが多く利用されています。テレワークでは、音声通話、画面共有でことは足りることもありますが、これまでは当たり前だったコミュニケーションが取れなくなったという課題が生じてきています。こうしたなか、テレワークする際にXRで表現された仮想空間(メタバース)に没入することが注目され始めています。仲間の雰囲気を感じることで実現するリラックスしたコミュニケーションは、相談しやすい環境や円滑な人間関係を醸成することもあります。 今回、XR技術でメタバースを実現する「NTT XR Coworking」を編集部のメンバーが実際に体験してみました!メタバースに人がアバターとして入り込み、そこで様々なコミュニケーションを体験した内容を紹介します。
NTT XR Coworkingについて
「NTT XR Coworking」はNTTグループが開発・提供するXRを活用した「NTT XR※1」サービスのひとつで、株式会社NTTデータNJKが開発しています。XR(Extended Reality)とは、仮想現実のVR、拡張現実のAR、複合現実のMRといった技術の総称で、メタバースを実現する技術です。「NTT XR Coworking」では利用者はアバターとなってメタバースに入り、現実に近い自由なコミュニケーションをすることができます。
「NTT XR Coworking」 株式会社NTTデータNJK
※1 「NTT XR」は日本電信電話株式会社の商用または登録商標です。
「NTT XR Coworking」は、企業ユース向けのメタバース環境を提供しています。その特徴は下記の3点にあります。
・利用用途に合わせた空間の提供
・音声のテキスト化、翻訳によるコミュニケーション支援
・多彩なコミュニケーションツールの装備
・利用用途に合わせた空間の提供
「NTT XR Coworking」ではオフィシャルな会議室、セミナー会場、リラックスしたコミュニケーションができる海辺など、さまざま仮想空間が用意されています。ホワイトボードが自由に使える会議室はブレインストーミングを活性化させ、活発な議論を支援します。少し困った相談事は、気分を変えてオフィスから離れた海辺などのリラックスした空間で話すことができます。
こうした空間は、WindowsPC、ヘッドマウントディスプレイ、スマートフォン・タブレットなどで利用することが可能です。特にヘッドマウントディスプレイは、メタバースのなかに没入し、集中して作業したり、臨場感の高い雰囲気で打ち合わせをしたりすることができます。
・音声のテキスト化、翻訳によるコミュニケーション支援
メタバースにアバターとして入ると、発言内容が自動的にテキスト化され吹き出しで表示されます。発言内容を別の言語に翻訳する機能もあるため、異なる言語間であってもスムーズにコミュニケーションできます。また、発言内容は履歴として保存することができるため、議事録の作成も効率的にできます。
・多彩なコミュニケーションツールの装備
「NTT XR Coworking」はテレワークで使用しているTeamsなどのツールが提供している機能と同等のコミュニケーションツールを用意しています。資料の共有、ホワイトボード、PC画面の共有、プライベートな通話のほか、仮想現実ならではの3Dモデルの共有も可能です。
オクトノット編集部員が使ってみる
「NTT XR Coworking」を実際にオクトノット編集部のメンバーが体験してみました。
PCやタブレット、スマートフォンなどでも参加できますが、今回はヘッドマウントディスプレイを用いて、メンバーが実際にメタバースに入り、コミュニケーションしてみました。
ヘッドマウントディスプレイを装着した様子は写真をご覧ください。
使用したヘッドマウントディスプレイは、Meta Quest 2というもので、現在でも7万円程度で購入することができます。頭部に装着すると、少々重さを感じます。このデバイスを装着すると眼前にメタバースの世界が広がります。
メタバース内では奥行を感じることができ、その方向に向かって動きたくなります。頭を上下左右に振ると、メタバース内で目にする視点も連動します。
またこのデバイスから聞こえる音も、アバターとして後ろにいる人から話しかけられると、後ろから声が聞こえます。音声もメタバース空間と連動しているのです。
メタバース内では、デバイスのコントローラーのボタン、レバーを操作することで移動することができます。部屋の中を移動したり、座ったり、障害物を乗り越えたりできます。座ったり、立ったりするのには多少のコツが必要です。
また、編集部メンバーの中でも習熟の差があり、かなり早い段階で自在に移動できる人もいました。
下の写真は編集部員が入り込んだメタバースです。今回は、リラックスした会話ができる海辺の空間と、足湯につかることができる温泉場の空間に入ってみました。
海辺では波がリアルに動き、波の音が聞こえます。この空間はプロトタイプをお客様に利用していただいた際「波の動きと波の音があるとリアルでもっとよくなるね」という感想をいただき、実際に海に行き、撮影、録音しメタバースに組み込んだということでした。
参加者が発言した言葉はテキスト変換されますが、変換はかなりの精度で時間差を感じないレベルで表示されます。発言したテキストデータはサーバーに保存されるため、議事録の作成に活用することができます。また、発言内容から参加者の感情が数値化されます。
ポジティブな発言をすると数値が上がり、ネガティブな発言は数値がリアルタイムで下がるようです。この感情数値はアバターの表情に反映されます。「そんなこと言われると悲しいです」と発言すると、ほんとうに顔が悲しげな表情になりました。
音声のテキストデータを利用して同時翻訳機能も実装されています。日本語以外で発話すると、発話内容のテキスト化と同時に翻訳された日本語が表示されます。Google翻訳が対応している言語はすべて翻訳可能ですから、
例えば中国にいる人とフランスにいる人がお互いの母国語だけでコミュニケーションが取れます。この機能をメタバース内で実装している例は少なく、展示会などでも高い評価を得られているそうです。
3Dモデルをメタバース内の参加者で共有することもできます。陶器などの工芸品ではその質感を重視した3Dモデルの共有ができます。また医療などの分野では臓器の内部など3Dモデル化し、症例についてリアルなディスカッションをすることもできます。
扱う分野や利用できるデバイス(PC、タブレット、ヘッドマウントディスプレイなど)によって3Dモデルの特性を変化させて制作することができるそうです。
XRの今後の展望
「NTT XR Coworking」は、NTTデータ技術開発本部で研究開発された技術をベースに、NTTデータNJKでビジネス利用できるように商用化に向け開発したソリューションです。クオリティの高い空間、発話のテキスト化を特徴として、会議だけでない利用形態でも引き合いがあります。
現在は、ビジネスユーザー向けの会議やイベント利用、観光や展示会などの用途で活用していただけるように提案活動を進めているそうです。今後はローカル5GでのXRの組み合わせや、AIとXRの融合など先端的な取組をしていく予定だそうです。NFT(非代替性トークン)を利用し、メタバースの中で取引や決済を完結させる仕組みなども想定されています。
いかがでしたでしょうか?
今回は編集部メンバーが「NTT XR Coworking」のメタバースに入り込み、ヘッドマウントディスプレイを利用して実際のコミュニケーショ体験をレポートしました。
テレワークが恒常化している昨今、ノートPC、キーボード、ディスプレイなどの一般的なテレワークの環境に加え、ヘッドマウントディスプレイを装着してメタバースで業務することも現実的になってきました。
メタバースでの会議やリラックスしたコミュニケーションを読者の方も体験してみてはいかがでしょうか?
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※感染防止対策を講じた上で取材を行っています。