最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100
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(本記事は、内藤 誼人氏の著書『最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』=総合法令出版、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

部下が伸びる指導方法とは?

部下を指導するときには、アドバイスをしたり、しなかったりとバラツキがあるのはよくありません。毎回、気づいた点を必ず伝えてあげる必要があります。そのほうが部下は能力をぐんぐん伸ばしていきます。

自分が気づいたことを、相手に伝える作業を「フィードバック」というのですが、フィードバックはできるだけ毎回やってあげることが重要なポイントなのです。部下の仕事のやり方の間違いに気づいても、5回に1回しかフィードバックしないのでは、部下はなかなか改めることはできません。面倒くさいと思うかもしれませんが、毎回、きちんとフィードバックを伝えたほうが、部下も早く改善でき、こちらの指導を必要としなくなる日がくるのも早まるのです。

ただフィードバックをまとめてやろうとするのも、あまりよくありません。

1週間分の注意をまとめて伝えるとか、1カ月分の注意をまとめてする、というのではダメです。気づいたときには、すぐにフィードバックです。この原理を覚えておきましょう。

フィンランドにあるユヴァスキュラ大学のカイス・モノネンは、ライフル射撃の競技経験のない人を58名集めて、ライフル射撃を教えました。

射撃の精度、安定性、姿勢のバランスなどを58人に教えていくのですが、その際に、2つのグループに分けました。2つのグループのフィードバックは次のように決めました。

ひとつは毎回フィードバックする。もうひとつは2回に1回フィードバックする。

訓練は4週間にわたって続けられたのですが、ライフル射撃の技術の向上が大きく見られたのは、「毎回フィードバックを受ける」グループでした。

フィードバックを、たくさん受けたほうが上達は早いことが研究から明らかになりました。

学校の先生もそうで、生徒を伸ばすのがうまい先生は、ちょこちょこと細かく注意します。跳び箱を教えるときにも、「できるだけ跳び箱の奥のほうに手をついて!」「踏み台のところで止まらないで!」「目線は遠くに置いて!」などと細かくフィードバックすることで、子どもも簡単に跳び箱が跳べるようになるのです。

フィードバックというものは、したりしなかったりではなく、必ず毎回やったほうがいいのです。部下や後輩に仕事を教えるときには、できるだけ毎回教えてあげる、という気持ちを持って指導を行いましょう。そのほうが、上達の度合いも早いでしょうし、みなさん自身の上司としての評価も高まることはいうまでもありません。

最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100
内藤 誼人
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。 著書に、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200 冊を超える。

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