(本記事は、内藤 誼人氏の著書『最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』=総合法令出版、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「年を取るのも悪くない」と思っていたほうがよい
かつての日本では、年を取ることにあまり抵抗はありませんでした。年を取ることは美徳とさえ考えられていました。お年寄りは 敬 うべき存在でしたし、「 老成 」という言葉からもわかるとおり、年を取ることは立派なことだったのです。
ところが、時代は大きく変わりました。
最近では、「加齢」という言葉にはどこかネガティブなニュアンスがつきまといます。加齢はできるだけ避けたいものになってしまっています。「アンチエイジング」がこれほど盛んになってきたのも、年を取ることが避けるべきことになった 証左 です。
これはあまりよい傾向ではありません。
年を取ることは、素晴らしいことなのだという気持ちを持ちましょう。そのほうが、逆説的ながら、長生きができるものなのです。
「年を取るのは、イヤだ、イヤだ」と言っていると、かえって老けやすくなってしまう、という驚きの結果を示す研究もあります。
この研究を発表しているのは、イェール大学のベッカ・レヴィです。
レヴィは、50歳以上の660名を、23年間も追跡調査し、どんな人ほど早く亡くなるのかを調べてみたのでした。レヴィはまず、「加齢」に対してポジティブな考えを持っているのか、それともネガティブな考えを持っているのかを調べました。
すると、加齢はよいこととポジティブに考えている人のほうが、「加齢はイヤだ」とネガティブに考えている人に比べて、7・5年も長生きしていることがわかったのです。
皮肉なもので、加齢はイヤだと考え、せっせとアンチエイジングに励む人ほど、かえって老けやすくなってしまうのです。むしろ、加齢を心理的に受け入れている人のほうが、なぜか細胞レベルで若々しくいられるということです。
加齢をネガティブに考えている人は、言ってみれば、毎日、自分の年齢をたえず意識していることになります。そういう人ほど老けやすくなるのはいうまでもありません。加齢をポジティブに受け入れている人は、あまり自分の年齢のことなど考えません。自分の年齢を意識するのは、誕生日くらいでしょうか。自分の年齢を忘れているくらいのほうが、いつまでも若々しくいられるのです。
加齢はどんな人にも等しく訪れるもの。こればかりは、どうにもなりません。どんなにあがいても年は取るのです。ですので、アンチエイジングに励むよりも、加齢を素直に受け入れていたほうが、心理的にはずっと健康でいられるのです。