(本記事は、遠越 段氏の著書『時代を超える!スラムダンク論語』=総合法令出版、2023年3月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
SLAM DUNK
自分の能力を生かすために、自分ではなく他を頼る
あの…
天井天下唯我独尊男
が
パスを!!
(第19 巻)
The Analects of Confucius
子 、 四 を 絶 つ。 意 なく、 必 なく、 固 なく、 我 なし。
「孔子は四つのものを断ち切った(四絶)。すなわち、自分勝手な推測をしない、必ずやり通そうと無理強いしない、自分の考えだけが正しいと固執しない、自分のことばかり考えようと 我執 しないことである」
(子罕第九)
解説
湘北高校の一年生エース流川楓は、ついに悟った。試合でのパスの意味を。それまでは、自分の才能、自分の力だけを頼り、誰にも負けることはないとの思いから、一人で相手を抜くことだけにこだわっていたのだ。
「天上天下唯我独尊」とは、 釈迦 の言葉だといわれている。生まれるとすぐに七歩あゆんで、そう言ったという。
意味は、「この世界で最も尊い存在は自分なのである」ということ。言いたいことは、まず自分がしっかりとして悟るまでになること、そして、自分を築いた上で、他人に慈悲の心で接していくこと、なのだろう。自分も確立できないのでは、他人に慈悲を施すこともできない。他人のために役立つ存在になるためにも、何よりも自分を尊く扱い、それだけの存在にしていこうということである。
流川も、まずは自分を高いレベルの存在にまで持っていった。それなくしてチームへの貢献などできない。
しかし、自分の実力を高めたら、次にすることは、その力を生かすために自分をコントロールすることなのだ。これが「 克己 」である。この世は一人の力では何も実現することはできない。他の人の力を借り、その他人の力とうまく合わせることで、物事は成し遂げられるからである。
同じように、いくら一人の能力が高くても、バスケットでは勝てない。五人の力がうまく機能して初めて、勝利に近づけるのだ。
そのために孔子の教える克己、つまり四絶が求められる。
幕末の英雄西郷隆盛も、この論語の教えである四絶を座右の銘とし、克己をするために必要なことがこの四絶だとした。①自分勝手な推測をしない、②必ずやり通そうと無理強いしない、③自分の考えだけが正しいと固執しない、④自分のことばかり考えようと 我執 しない、の四つである。
流川も、自分だけで無理にやり通さないことを学び、パスをして仲間と一致協力して勝負することで、さらに大きな仕事を成し遂げられるプレイヤーとなれた。
まず自分をしっかりと鍛え、確立して、それからチームに協力し、またチームのメンバーに助けられながらプレイすることで、勝利を手にする資格が得られていくのである。