(本記事は、遠越 段氏の著書『時代を超える!スラムダンク論語』=総合法令出版、2023年3月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
SLAM DUNK
何事にも、「完璧」などということはない
この
試合
で
負
ける
などとはみじんも
思
っていない
山王
・
堂本監督
そして
湘北
・
安西監督
が
突
いてくるのは
正
にそこだった
(第17巻)
The Analects of Confucius
子 曰 わく、 学 ぶは 及 ばざるが 如 くするも、 猶 お 之 れを 失 わんことを 恐 る。
「孔子曰く、学問を学び修めていくことにおいては、追いかけても、追いかけても、追いつけないばかりか、その姿を見失うことにならないかが、恐ろしいのである」
(泰伯第八)
解説
湘北高校は、インターハイの二回戦で絶対的な優勝候補、山王工業高校と戦っていた。
まずは桜木花道が、宮城リョータからのパスをアリウープでゴールするという奇襲、「いつもの試合と違うぞ」と思わせることに成功する。三井寿の3ポイントもうまく決まり、上々の滑り出しであった。もちろん山王工業も離されることなく、ピタリとついてくる。前半7分を過ぎたところで、19対14の5点差で湘北がリードしていた。
それでも山王工業の堂本監督は、負けることなどあり得ないと思っている。だから先のことを考えて、経験を積ませようと一年生の 河田美紀男 を出場させ、攻撃の中心とした。美紀男は、全国区で注目のセンター 河田雅史 の弟で、2m10㎝、130㎏の大器である。
これに対して湘北も、河田弟の対面である桜木を中心に攻めることにした。この作戦に他のメンバーは驚くが、安西監督は、たとえチームに実力差があるとしても、ここで勝てるという局地戦で勝つようにするのが兵法の基本だとし、「河田弟との1対1なら…絶対に桜木君だ」と言い切るのだ。戦法の大原則である、「意思と戦力の集中」である。
どんなに強いチームや人間でも、絶対ということはあり得ない。 殊 にスポーツに関しては、試合終了の瞬間まで勝敗はわからない。
将来のためにとか、よい経験のためにと、十分な力のない選手を使って自信と経験を積ませる指導者は多くいるし、それは指導としてよい一面を持っているだろう。ただし、よほどの注意を払いながらでないといけない。相手を調子づかせ、こちらのペースも狂わされ、取り返しのつかないことになるという例は、けっこうあるものなのだ。
常にベストの戦い方をめざしていく中に、真の成長と強さが生まれるということである。
孔子の教えも、そこに注意を向ける。少しでも油断したり、怠けたりすると、追い求めていることが見えなくなる場合もあるのだと言う。
リラックスすることはよいが、油断や怠慢は、絶対に許されないのである。
私たちは、少し力をつけてきた段階で慢心してしまう。自分を「実力がある」と過信してしまうのだ。しかし、実際には井の中の蛙で、まだまだ学び足りてなどいないし、もっと成長できるはずだ。実際に先の世界には、自分よりも能力がはるかに高い人などたくさんいる。だからこそ、「まだまだ」と常に自らを戒めて、強化を怠らないようにしなくてはいけない。