(本記事は、遠越 段氏の著書『時代を超える!スラムダンク論語』=総合法令出版、2023年3月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
SLAM DUNK
最後まであきらめない
最後
まで…
希望
を
捨
てちゃいかん
あきらめたら
そこで
試合終了
だよ
(第6巻)
The Analects of Confucius
冉求 曰 わく、 子 の 道 を 説 ばざるに 非 ず。 力 足 らざるなり。 子 曰 わく、 力 足 らざる 者 は、 中道 にして 廃 す。 今 女 は 画 れり。
「 冉求 曰く、先生の教えられる道を学んでいくのは素晴らしいことだと思うのですが、私の力が足りなくてできないのです。孔子曰く、本当に力のない者は、道の途中で力尽きて止めてしまうことになる。しかし、お前は、力尽きたわけではないのに、自分で自分の力を見限りあきらめようとしている。最後まであきらめてはいけないよ」
(雍也第六)
解説
孔子の弟子の 冉求 は、孔子の見るところ多才の人であるが、自分を信じて根気よくねばるところが足りなかった。もともと才能はあるのだから、あとはいかにあきらめずに、自分を励まし伸ばし続けるかにかかっていたのにだ。案外、多才で多芸の人は、多才で多芸がゆえに何でも簡単にできてそつなくこなしてしまうため、ひとつのことに打ち込むことがなく、すぐ他の生き方を求めるところがある。しかしそれでは、大成できないと孔子は教えた。
自分が、これだと思ったことをあきらめずに打ち込み、学び続ける。そうすることで、真の自分の才能が開花し始め、大きな成長も可能となるのだ。
湘北高校三年の三井寿は、中学のときに各強豪校から声をかけられていたにもかかわらず、公立の湘北に入学した。中学の県大会決勝のときに、来賓で試合を見ていた安西監督に出会ったからだ。試合は、終了間際まで相手にリードされていた。チームの士気を保つためにも「このスーパースター三井がいる限り絶対勝ァつ!!」とは言ったものの、自身では勝ちをあきらめていた。そんなとき安西監督が、コートの外に出たボールを拾って三井に手渡すときに言った言葉が、三井を感動させた。
それが、おそらく『スラムダンク』を読んだことのない人でも知っているであろう名言、「あきらめたらそこで試合終了だよ」であった。
スポーツは特に、試合終了を知らせるブザーやホイッスルが鳴るまで、何が起こるかわからない。スポ根マンガで描かれる逆転劇は、なにもマンガの世界だけの奇跡ではないのだ。日本中が沸いた2022年のワールドカップも、強豪国であるドイツやスペインに勝てると思っていた人はどれくらいいただろうか? それほど、何が起こるかわからない。
私たちの毎日の中でも同じことが言える。才能に 胡坐 をかいて、自分の実力を伸ばす努力を怠ったら、それ以上の成長は見込めない。あきらめずに日々努力を惜しまない人には、誰も勝つことはできない。そして何より、自分の力を侮って「自分には無理だ」「未来はわかりきっている」と、自分と未来を見限ってはいけない。それを安西監督は、あの一瞬で三井に伝えてくれたのだ。
湘北に入学して以降も三井にはさまざまな不運と挫折が待っているが、よき師と仲間たちのおかげで、三井の〝あきらめない人生〟が、再び始まるのである。