型落ちモデルでも安くならない? 善良なファンがロレックスを買えないワケ
(画像=malajscy/stock.adobe.com)

(本記事は、並木 浩一氏の著書『ロレックスが買えない』=CCCメディアハウス、2023年3月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「型落ちモデル」が安くならない理由

そしてもうひとつが、国内購入即転売の問題である。日本の正規店で、もし運よくロレックスの人気モデルが買えたとして、それをその足で新品をプレミア販売する店に持ち込めば、買い取りで何万円、何十万円といった利ざやが生まれるのである。

これが一部の悪質な転売ヤーが行っていることだ。「ロレックスマラソン」を繰り返す人間のなかには、心からその腕時計を欲しがり、しかも正規店から買いたいと願う善良なファンがいることだろう。

だが、そこには確実に、転売だけが目的のプロランナーがいる。

その所業が非難され、それがために異常な購買行動に対する購入制限がかかったのである。ロレックスが買えない問題の奥底には、善良なロレックスファンが腕時計を買えなくなったという事情が横たわっている。

そもそも新品の市場ですらその状況が続いているだから、ユーズド(およそ1980年代以降)の市場でも同じようなことがいえる。

人気モデルに関していえば、現行モデルの中古だけでなく、ひとつ前のモデルでも価格は下がらない。ほかの消費財であれば「型落ちモデル」になるのだが、ロレックスの場合は必ずしも安くはならないのだ。場合によっては、プレミアが付いて売られているということも十分ありうるのが、ロレックスの事情である。

新品が手に入らないという状況が、新品に近いユーズドの相場を押し上げる。さらにモデルチェンジ前には、「もう手に入らなくなる」という心理で、最終モデルへの注目が盛り上がるのである。

ロレックスが買えない
並木 浩一
腕時計ジャーナリスト
桐蔭横浜大学教授(博士)

1961年横浜市生まれ。ダイヤモンド社にて雑誌編集長、編集委員を経て現職。1990年代よりスイスの2大国際時計見本市(バーゼル、ジュネーブ)を含めて、国内外の時計界を取材し、高級腕時計の書き手として第一線で活躍。
学術論文も発表、テレビ・新聞でも多数コメント。
生涯学習機関の「学習院さくらアカデミー」と「早稲田大学エクステンションセンター」では、一般受講可能な腕時計講座も開講している。
主な著書に『腕時計一生もの』(光文社新書)『腕時計のこだわり』(SB新書)『男はなぜ腕時計にこだわるのか』(講談社)など。雑誌では、「並木浩一の時計文化論」(『ウォッチナビ』/ワン・パブリッシング)、「並木教授の腕時計デザイン論」(『Pen』/CCCメディアハウス)等を連載中。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます