ロレックス『デイトナ』ファンにおすすめのクロノグラフ
(画像=MathiasWeil/stock.adobe.com)

(本記事は、並木 浩一氏の著書『ロレックスが買えない』=CCCメディアハウス、2023年3月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ムーブメントでつながる、伝説のクロノグラフ2本

ロレックス人気モデルコスモグラフ デイトナ
提案モデルゼニス|クロノマスター オリジナル 1969

世界で一番人気のあるクロノグラフといえば、「コスモグラフ デイトナ」にとどめを刺すだろう。ファンやマニアが血眼になって探し回るこの腕時計は、やがて社会現象のひとつとして語られるようになり、腕時計に興味すらない一般人の欲望も刺激して今日に至る。

世間の興味は「『デイトナ』は、どこで、どうやったら買えるのか」に集中してしまっているが、別のアプローチもある。「デイトナ」と同じくらい自分を満足させてくれるクロノグラフを手に入れればよいのではないか? 入手即転売を目論むブラックな人間以外には、当然のソリューションではないだろうか。

といっても「デイトナ」と真っ向から張り合えるクロノグラフを挙げよ、といわれたら、業界関係者であっても、一旦は答えに窮するだろう。その状況のなかで唯一、これだけはその資格があるブランドと、腕時計の一群がある。それはゼニスであり、同社自社製ムーブメント「エル・プリメロ」を搭載した自動巻きクロノグラフのラインアップである。

なぜゼニス、なぜ「エル・プリメロ」なのか。実際、「デイトナ」の信奉者は決してエル・プリメロを否定できない。なぜかといえば、ゼニスの「エル・プリメロ」搭載モデルは「デイトナ」と同じルーツをもつからだ。

「デイトナ」は1963年に初代モデルが誕生し、現行品は第6世代と呼ばれている。この世代の分類は主にムーブメントの変更によるもので、1980年代後半の第3世代までは手巻き。1988年、第4世代からは自動巻きになった。

これらのジェネレーションは品番で識別・呼称するのが時計業界での慣習で、ステンレススティール・モデルの第4世代は「16520」である。そしてそのときに搭載したムーブメント「Cal.4030」というのは、ゼニス社から調達した「エル・プリメロ」をベースにしたものだ。正式発表されたわけではないが、公然たる事実である。

一般にこの当時のスイス時計業界では、ベースムーブメントを専業メーカーから調達することが普通のことであったし、それは現在も変わらない。ムーブメントに付加価値を付けるために、特別な機能をもったモジュールを専門の工房に発注することは、いまでも通常の慣行だ。スイス時計業界は高度な分業システムが発達しているからこそ、高い品質を国レベルで保ってきていたのである。ロレックスは「デイトナ」を自動巻きにする以前も、手巻きのベースムーブメントをヴァルジュー社から調達していた。

ロレックスが買えない
ロレックスが買えない
(画像=『ロレックスが買えない』より)
イラスト:小阪大樹氏
ロレックスが買えない
並木 浩一
腕時計ジャーナリスト
桐蔭横浜大学教授(博士)

1961年横浜市生まれ。ダイヤモンド社にて雑誌編集長、編集委員を経て現職。1990年代よりスイスの2大国際時計見本市(バーゼル、ジュネーブ)を含めて、国内外の時計界を取材し、高級腕時計の書き手として第一線で活躍。
学術論文も発表、テレビ・新聞でも多数コメント。
生涯学習機関の「学習院さくらアカデミー」と「早稲田大学エクステンションセンター」では、一般受講可能な腕時計講座も開講している。
主な著書に『腕時計一生もの』(光文社新書)『腕時計のこだわり』(SB新書)『男はなぜ腕時計にこだわるのか』(講談社)など。雑誌では、「並木浩一の時計文化論」(『ウォッチナビ』/ワン・パブリッシング)、「並木教授の腕時計デザイン論」(『Pen』/CCCメディアハウス)等を連載中。

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