矢野経済研究所は、国内の流通菓子市場を調査し、製品カテゴリ別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。その結果、2022年度の流通菓子市場規模は前年度比1.3%増の1兆9614億円の見込みてあることがわかった。価格改定の浸透で市場は拡大し、インバウンドと土産需要の回復も上乗せ要因になった。
2021年度の流通菓子市場規模は前年度比3.8%減の1兆9,367億円と推計した。但し、これは複数の企業が収益記載会計基準を採用した新会計基準へ移行した影響があり、旧会計基準ベースの市場規模では同0.8%増の2兆281億円と拡大に転じたことになる。
2020年度は、コロナ禍で在宅時間が増加し流通菓子の家庭内消費は増加したが、外出機会が減少したことで、ポケット菓子など外出先で食される流通菓子の需要が縮小した。また、国内外の旅行客が激減したことで、土産用途のご当地菓子が大幅な縮小を余儀なくされた。2021年度もコロナ禍の影響によって、大きくは前年度のトレンドを引き継いで推移した。巣ごもり特需の反動減が懸念されたものの、チョコレートを使用したビスケットの新商品やグミ市場のV字回復など、SNSとZ世代を味方につけたカテゴリや商品ではヒット商品も生まれ、市場拡大に貢献した。
2022年度の流通菓子市場は全体的に価格改定の潮流が広がる中で、カテゴリによって明暗が分かれている。スナック菓子やグミを中心としたキャンディ・キャラメル市場は、需要自体が増加基調であり、流通菓子メーカー各社の販売数量も前年度実績を上回って推移していることから、市場規模は大きく拡大する見通しである。一方、他の多くのカテゴリでは金額ベースの売上高は前年度を上回っていたとしても、価格改定分すべては上乗せできておらず、数量ベースでは前年度割れという企業が多いのが現状である。
原材料費の高騰はなお続いており、低下する見通しが立たない中で、メーカー各社は高付加価値商品の開発に注力することで、単価アップに取り組んでいる。1個当たりの食べ応えをアップしたプレミアム商品の投入や、健康的価値をプラスした商品投入などが目立っており、こうした新商品は堅調に推移する傾向がみられる。
2022年度の流通菓子市場は全体的に価格改定の潮流が広がっており、金額ベースの市場規模は拡大を見込む。カテゴリによる明暗は分かれるものの、2022年度の流通菓子市場規模全体では前年度比1.3%増の1兆9614億円と、微増にて着地する見込みである。
価格改定の波は2023年度も継続する見通しとなっており、市場は同程度の拡大を予測する。今後のプラス要因としては、プレミアム商品の定着とインバウンド(訪日外国人客)需要の上乗せであると考える。既存商品の価格改定による拡大には限界があることから、流通菓子メーカー各社は高付加価値品の開発を急いでおり、これによる販売単価アップを狙っている。これらの新製品が市場に定着することで、流通菓子市場の拡大に寄与すると推察する。
[調査要綱]
調査期間:2022年11月~2023年3月
調査対象:流通菓子メーカー、卸売業、商社、関連団体等
調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
[小売価格]13万2000円(税込)
矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/