VUCAは、変動性や不確実性などを示す4つの単語の頭文字をとった造語で、日々目まぐるしく移り変わる現代の不透明さを示しています。特に変化の激しい現在では、新しいものを生むために働き方・考え方も変えなければなりません。そこで取り入れていきたいのが、VUCAに即した働き方・考え方。今回、オクトノット編集部では、VUCAの意味をあらためて確認しながら、金融×デジタルから少し幅を広げて、VUCAと呼ばれる時代の中で、個人やチームの働き方を具体的にどう変えるべきかや、働く上で意識したいポイントなどについても考えてみました。
目次
「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。
VUCAとは?その由来と意味について
VUCAは今の時代を象徴するワードではないでしょうか。オクトノットの他の記事でも、VUCA時代において新しいものを生み出すための考え方について、取り上げてきました。
今回は、VUCAそのものについて少し掘り下げ、その意味するところや、私たちがビジネスをする上でどのように向き合っていくべきなのかといったところにも幅を広げて考えてみました。まずは定義と構成する単語が示す意味、由来を把握していきたいと思います。
VUCAとは
ビジネスや市場などさまざまな環境が大きく変化し、未来が予測できない状態にあることを「VUCA(ブーカ)」と呼びます。これは造語であり、不安定さを示す4つの単語の頭文字をとったものです。
・Volatility:変動性
・Uncertainty:不確実性
・Complexity:複雑性
・Ambiguity:曖昧性
VUCAはもともと軍事用語で、冷戦後の複雑な国際情勢を表す言葉として1990年代にアメリカで使われ始めました。それが2010年代頃から、ビジネスの世界でも広まるようになったのです。2016年に開催された「世界経済フォーラム(ダボス会議)」では、VUCAワールドという言葉が使われました。現代はVUCA時代であるというのが、今や世界の共通認識となってきています。
1.Volatility:変動性
先の見通しや予測が不可能なほど、世界のシステムや技術が変化している現代。SNS市場の拡大や新しいツールの誕生などがその一例です。当然、消費者の行動や意識も変化しており、それに合わせてニーズも変化しています。これによって、企業には迅速な順応が求められています。さらにこの変化したニーズや新しいニーズも、いつまで続くか不透明であることも特徴です。
2.Uncertainty:不確実性
世界の環境は温暖化や台風、気候変動などの自然災害や、少子高齢化による働き方の変化など、人間の力ではコントロールできない要因によって、予想図が不確実になってきています。また、新型コロナウイルスの世界的な流行に見られるように、疫病などの突発的な出来事にも大きく影響を受けます。
3.Complexity:複雑性
グローバル化が進み、情報が溢れている今。あるビジネスでの成功例をもとに同じ取り組みを行っても、個々の要因が複雑にからんでいるため再現性が低く、成功するとは限りません。世界では浸透しているキャッシュレス化も、日本国内では独自の文化によって、世界的に見ると、まだまだ広く浸透しているとは言えないのがその例です。
4.Ambiguity:曖昧性
ここまでのVUCAの各要素がからみあって作り出しているのが、曖昧性。曖昧性とは、問題解決の絶対的な方法がないことを指します。例えば、高い技術力を持つベンチャー企業に大企業が投資を行うベンチャーキャピタルも、必ずしもリターンを見込めるとは限りません。
VUCA時代を生き抜くために必要な思考法
先の見えない不透明なVUCA時代。生き抜くためには、不透明と感じるロスタイムを少しでも減らし、迅速に行動する力が必要と考えます。その力を身につけるのに有効とされる2つの思考法をチェックしてみます。
VUCAフレームワーク
VUCAフレームワーク :OODAループ臨機応変の適応法 – アイ&カンパニー
こちらの図は、VUCAの世界を1枚の図で表したものです。目の前の課題をこちらの図に当てはめてみるといかがでしょうか。フレームワークを利用して、無知なのか既知なのか、予測可能か予測不能か検討し、課題がVUCAのどの要素に該当するかを考えます。すると問題点の輪郭がはっきりと見えてきて、対策を導きやすくなるかもしれません。
OODAループ
VUCAを考える上で欠かせないのが、OODAループという思考。VUCAと同じく米軍で提唱されていたものです。これまで企業で採用されることの多かったPlanから始まるPDCAサイクルですが、PDCAは想定外の事象が起きることを想定していません。これに対しOODAループは、柔軟な対応ができる思考法です。
PDCAが業務改善に向いているのに対し、OODAは意思決定の強化に向いていると言えるでしょう。OODAループの4ステップを簡単に見ていきます。
ステップ1「Observe(観察)」:さまざまな収集データをもとに、自社の状況はもちろん、市場全体や競合他社、顧客の現状について観察する
ステップ2「Orient(方向づけ)」:観察からわかったことを基にして、今後どのような取り組みが有効か考える(仮説を立てる)
ステップ3「Decide(決定)」:定まった方向づけを基にして、具体的なプランを考え、選択する
ステップ4「Act(実践)」:決定したプランを、迅速に実行する
このステップ1から4を繰り返し、状況に応じた柔軟な行動を迅速に行うことを目指します。4ステップのループを繰り返す中で、各プロセスの精度を上げて実践による結果の質を上げることが可能です。
【階層別】VUCA時代に求められる働き方
VUCAは組織やチームにも影響を与え、さまざまな環境の変化に対応する柔軟な働き方が求められていくでしょう。実際にどんなことを意識して働けば良いのか、ポジジョンごとに整理してみました。
【組織全体】強いリーダーシップ性を示す
企業に求められていることは、大きく分けて2つあると考えられます。まず1つ目は、長年日本の企業で培われた終身雇用にとらわれず、さまざまな経験値や価値観、背景をもった人材を積極的に起用すること。多様な価値観を認め合うことで、柔軟に時代の変化に対応できるのではないでしょうか。2つ目は、経営陣自ら行うステークホルダーへの情報発信。新たな人材マネジメントへの参画を求め、意見を募ることも重要です。
【管理職】決断と発想でチームを動かす
管理職に求められるのは、チームの方向性ややるべきことをメンバーに示し、多様なスタッフを動かすこと。自らも学ぶ姿勢を忘れずに、専門性を高め、新しいことを生み出す必要があります。部下の意見も積極的に取り入れ、チーム全体のリスクを常に想定しながらも、最速で結果を出すため社内外との調整を行うことも大切ではないでしょうか。
【中堅職員】変化を恐れず能力を還元する
時代の流れやニーズの変化を読み取り、自らも変化を恐れずに成長することを求められるのが中堅社員。獲得したスキルや培った新たなノウハウを組織や後輩にフィードバックし、重要な戦力となる人財を目指したい階層です。情報が溢れるVUCAの中で、管理者と後輩とをつなぐパイプとなり、チームのビジョンや業務の進捗などを共有します。
【若手職員】主体性を持ってスキルアップする
若手の職員は、チーム全体をしっかりと観察し、主体的に動くことが重要です。新しいプランや改善策、再発防止策を考えて実行します。企業目線では、彼らに求めるスキルや役割を具体的に示し、時間を有効に活用したOJT案を考えることが、戦力化の近道となってきます。
【新人職員】チームや社会の一員になる
新入職員は、まずは社会人の基礎を身につけます。そして、与えられた仕事を確実に遂行することが大切です。その後、自分の信頼を獲得しチーム全体の方向性をいち早く理解することで、社内でのポジションを確立しましょう。自ら推進力を持って行動するための成功体験を重ねることも、成長につながります。管理職や組織はその支援を行ったり、体制を整備したりすることが求められます。
VUCA時代を生き抜く思考法と働き方でブラッシュアップを図る
グローバル化やデジタルツールの普及、そして国内では少子高齢化など、環境は刻一刻と大きく複雑に変化しています。こうした世の中の変動で生まれるVUCAでは、明確な意識を持って問題点に向き合う姿勢が重要です。思考法の実践と働き方の改革により、一人一人やチーム全体がより良く変化することが、VUCAを切り抜ける足がかりとなりそうですね。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
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