(本記事は、伊庭 正康氏の著書『やり抜く人になるための戦略書』=アスコム、2023年5月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「真似」は新たなものを生み出す正攻法と捉えよ
やり続けるなか、行き詰まり、壁とぶつかる場面も出てくると思います。
そんなときの打開策は「真似る」ことです。
先輩や友人、同僚など、身近な成功例や成功者をつぶさに観察し、徹底的に真似ましょう。
「真似る」と「学ぶ」は同じ語源、「真似」は成長の階段を上る早道です。
「一流のアーティストなら、無から生まれるものなんて何もないと知っている。創作作品には必ずベースがある。100%オリジナルなものなんてないんだ」*5
この刺激的な発言は、クリエイター、オースティン・クレオン氏の言葉です。
彼は「よい盗み」「悪い盗み」という表現で、真似る意義を述べています。
全くのオリジナルなど世の中にないのだから、イチから独自の理論を構築するより、すでにセオリー化されたモノを活用するほうが短時間で成功に至れるというのです。
単なる二番煎じにしないための工夫は必要ですが、他者を真似、学び、プラスに働くと思ったことは貪欲に取り入れるのがカギとなるでしょう。
「モデリング」で売り上げが大幅アップ
なりたい対象(見本)の行動や動作を真似て対象に近づこうとすることを、心理学では「モデリング」とよんでいます。
憧れのプロ選手のフォームを真似してテニスの腕を上げたとか、好きな俳優の髪形にしてモテたとか……モデリングの経験はきっとみなさんいくつもお持ちですね。
人はモデリングによって成長していきますがポイントは「何を見本にするか」です。
自身の経験を振り返ると、私は、デキる人をモデルにしてきました。
例えば、新人時代。営業成績が頭打ちになって悩んだときは、別の事業部のデキる先輩に話を伺いました。
その先輩の話は示唆に富んでいました。「この人を真似よう」と即実践を始めたところ、月一件だった契約が十二件も取れるようになりました。
他にも、クレーム対応に長けた別の先輩をモデルにして自分の営業スタイルを変化させたこともありましたし、いろんな方を真似して学び、今の私があるんですよね。
不足した部分はよいモデルを真似、自分のスタイルをつくっていけばいいんです。
一人を真似て効果が出なければ、別の人、また別の人とハイパフォーマーからよい部分を盗み続ければいい。そのうちに自分らしいやり方が構築できるのですから。
徹底的に真似て、超えろ
かの有名な画家パブロ・ピカソはこう言いました。
「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」
注目してほしいのは、次へ進むステップとして挙げられた「盗む」です。「盗む」は、言い換えるなら自分のモノにすること。
真似したモノを、考えて考えて自分らしくカスタマイズする、体得していくイメージです。
真似が学びに変わったとき、はじめてググーンと成長するんですね。
では、「真似」からバージョンアップするために必要なのは何でしょうか。
一つは「真似する対象を超えるつもりで挑む」マインドです。
私が先輩を真似たときも、気分は「追いつけ追い越せ」でした。
師と仰いで真似るだけでは、どこまでいってもその人未満。究極まで近づくことはできても、永遠にその人以上にはなれません。
ですから「超えよう」という思いが何より大事になるのです。
もう一つは「好奇心」です。
真似る対象を見つけるとき、たくさんの選択肢から選べるほうがいいですよね。そのためにもつねに好奇心を持ち、多くの情報をインプットしてほしいのです。
企業研修の参加者と雑談していると、
「それって昔の話ですよね?」「別の業界の話ですよね?」
という発言とたびたび出会い、「可能性を狭めてるな」と残念に感じます。
どちらの発言も、自分と無関係と言ってしまっているんですよね。
違うと決めつけてシャットアウトした時点で、入ってくる情報にも限りが生まれ、当然真似する対象を探す範囲も狭くなります。
成功者を真似するときも、盗むときも同様です。
自分と違うと決めつけた時点で、見えるものが見えなくなります。
好奇心を持って観察すると、生かせる(盗める)部分も発見しやすくなるのです。
マインド一つで自身の未来が変わるということは、肝に銘じてほしいと思います。
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