TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術
(画像=One/stock.adobe.com)

(本記事は、ジョン・フィッチ氏(著)、マックス・フレンゼル氏(著)、ローリングホフ 育未氏(翻訳)の『TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術』=クロスメディア・パブリッシング、2023年3月31日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

1万時間? それとも4時間?

チャールズ・ダーウィンの仕事時間は、1日に90分間×3回だった。その他の時間は、散歩したり昼寝したり、ぼーっとしたりしていたらしい。

アンリ・ポアンカレはさまざまな分野でたくさんの業績を残しているが、働いたのは朝10時から正午までと、夕方5時から夜7時までだけだったそうだ。問題をいったん把握したら、あとは「無意識」とバトンタッチするのだ。

同様に、ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディも、仕事ができるのは1日4時間が限度だとし、その他の時間に忙しくしすぎると、かえって生産性が落ちると述べている。

ダーウィンも、ポアンカレもハーディも、みんな同じことを考えていた。1日4時間は集中できるということだ。ちゃんと休息をとって適切に取り組めば、その時間だけで偉大なことは成し遂げられるのだ。忙しさに支配された僕たちの文化をバカにしているのかと思う人もいるかもしれない。

さまざまなところで引用されるアンダース・エリクソンと同僚による論文「1万時間ルール」について紹介したい。

この考え方はマルコム・グラッドウェルの『天才!成功する人々の法則』(講談社 2009年)で使用されて有名になった。どの分野でも約1万時間取り組めば、専門家レベルに到達できるという考えである。

忙しさ、ストレス、過労を善きものとする社会に、このルールはすぐに受け入れられ、信条のようにすがる人まででてきた。しかしエリクソンの研究は、効率を上げるためには、集中力を要する活動は制限するべきだとも述べている。4時間は理想的だ。

興味深いことに、(無視されることも多いのだが)研究によると、トップクラスの業績の人たちは普通の人と休み方が異なる。平均的な成果を上げる人に比べ、余暇がしっかりと計画されている。集中して仕事するだけでなく、集中して休むのだ。

睡眠時間も1時間ほど多かった。成功する人たちの多くが、考えを温めたり、4時間しっかり集中したりするために昼寝することも判明した。

つまり、集中しなければならない仕事の間に睡眠を挟むと、1日のメリハリがつきやすい。1日2シフト制だ。

サルバドール・ダリのように、睡眠を極めた人もいる。「なにもしないことこそが鍵」メソッドだ。うとうとしているとき、つまり覚醒から睡眠に移るときの時間を利用して、クリエイティブな洞察にたどり着く。

睡眠については後述するが、休息の形は睡眠の他にもいろいろある。

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著者:ジョン・フィッチ(John Fitch)
ビジネス・コーチ、エンジェル投資家、ライター。仕事中毒から立ち直りつつあり、この本は昔の自分を念頭に執筆した。テキサス大学オースティン校で経営とメディアを学んだ。デジタルプロダクト・デザインによりキャリアを積み上げ、働く人が楽しくなさそうな仕事の自動化を推進する技術開発に投資するエンジェル投資家。未来の経営と働き方に大きな興味があり、近い将来、みんながクリエイティブな仕事をするだろうと考えている。ディナーパーティーを企画し、新しいアイディアやひらめきに出会うのが好き。柔術に励み、新しいところを旅したり、スイカを栽培したり、音楽を演奏したり、大好きな人とダンスしたりしている。
著者:マックス・フレンゼル(Max Frenzel)
AI研究者、ライター、デジタル・クリエイティブ。インペリアル・カレッジ・ロンドンで量子情報理論を研究し博士号を取得後、東京大学のポスト・ドクター・リサーチ・フェローとして着任。AI研究とプロダクトデザインを組み合わせるスタートアップ事業に多数参加。最近の関心は、クリエイティビティとデザイン、音楽にAIやディープ・ラーニングなどを融合させること。かかわったAIアートの中には、ロンドンのバービカン・センターに展示された物もある。AIとクリエイティビティをテーマに講演活動も行っている。タイムオフの時間には、おいしいコーヒーを楽しむ。パン焼き名人になるための練習も欠かさない。電子音楽を作り東京の各地で演奏も行っている。
翻訳:ローリングホフ育未(Ikumi Roelinghoff)
翻訳家・トロント大学OISE修士。

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