(本記事は、ジョン・フィッチ氏(著)、マックス・フレンゼル氏(著)、ローリングホフ 育未氏(翻訳)の『TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術』=クロスメディア・パブリッシング、2023年3月31日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
仕事という「沼」からはい出そう
創造的であることは、点と点を繋ぐことだ。幅広い興味を探求すれば、それだけ多くの点に出会える。
しかし、点がどれだけあろうと、そのひとつに固執しすぎたり、準備の沼にはまったりすると、近くの点と点しか繋げなくなる。結果、面白くない古臭いアイデアしか生まれない。
面白い点繋ぎをしたいなら、新しい視点を得るために少し遠くまでいかなければ。
これにはさまざまな方法がある。まず小さいところでは、疲れてもうアイデアが浮かばないと感じるとき、1時間、それも無理なら数分でもいいから、少し散歩に出てみたりなにか別の活動をしたりしてみるといい。
少しの間でも問題から離れてみると、戻ってきたときに新しい視点が持てたりする。
中期間のものだと、1日から2週間くらいの休暇を取るのもいいかもしれない。問題からより遠く離れ、結果として多くの点を結ぶことができる。
そして最後に、もっと長いタイムオフについても考えてみよう。数週間以上のものだ。旅行などと組み合わせてもいいかもしれない(のちに詳述する)。
旅は問題から離れ、癖になっている思考パターンからも抜け出すきっかけを与えてくれる。アイデアを温めるにはもってこいだし、イノベーションにあふれたアイデアが浮かぶかもしれない。
しかし、タイムオフの重要さに気づけたあなたも、まだほんの入り口に立ったにすぎない。実践し、その効果を信じて、湧き上がる不平不満を無視したときに、見えてくるものがあるだろう。
植えつけられた間違った道徳的価値観を捨て、ゆっくりと学び直す。個人としても社会全体としても、そんな努力をすべきだ。
仕事中毒の僕たちは、つい「準備」と「確認」の時間ばかりを大切にしがちだ。クリエイティブなプロセスのなかで、そのふたつは積極的に取り組めるし、難しく感じるからだ。
だから、このふたつの段階は善であり、しっかり取り組むべきだと思い、無意識下での「温め」や「ひらめき」の段階を無視したり軽視したりしてしまう。
仕事にいつも取り組み、解決策をひねり出そうとしているのに、アイデアが出てこない。「よし、働く時間を増やしてごまかそう!」というのは、いくらなんでも、みじめではないだろうか。しかも、非生産的だ。
皮肉にも、生産性を追い求める僕たちは、しばしば非生産性にたどり着いてしまう。ほとんどの場合、そうかもしれない。深い洞察力には決してたどり着けないのだから。
ナレッジワーカーが給料をもらって従事する仕事の多くは、一直線に進んだり、単純になにかを重ねたりすればいいという種類のものではない。いくら時間をかけても、ひらめきが訪れるとはかぎらない。
グレアム・ウォーラスは創造性の仮説を立てたとき、そのことに気づいていた。
彼が引用したヘルマン・フォン・ヘルムホルツ博士だってそうだ。ヘルムホルツ博士の言葉を紹介しよう。
「全方位の問題への調査(とそのおさらい)によると、幸せなアイデアは予期せぬときに訪れる。ひらめきのように。私について言えば、心が疲れていたり、仕事机に向かったりするときにひらめきは訪れない。晴れた日にゆっくりと丘を登る。そんなときに降りてきてくれるようだ」
「温め」には(そして「ひらめき」にも)必要なものがある。タイムオフだ。
離れること。新しい視点を得ること。クリエイティブなプロセスにおいて、休息は絶対に必要だ。
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