三井不動産は4月19日、有名飲食店の料理を販売から製造代行、冷凍商品の販売まで担うプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」を開始したと発表した。
人手不足などに悩む飲食店で、負担をかけずに新たな収益につながるサービスとして提案する。参加する飲食店はミシュランガイド掲載店や予約困難店など、21店舗が参加する。
4月19日に行われた発表会で、プロジェクトリーダーの佐々木悠氏は「まだ試行段階なので今後は認知拡大も進めていく。三井不動産の持つマンションや施設などのリアルアセットを活用し、広く知って欲しい」と語った。
「ミタセル」は一般の監修商品とは異なり、飲食店で提供されている料理を専用のキッチンで製造している。飲食店と同じレシピや味にこだわり、専門のシェフが手作りで調理しているという。
飲食店はレシピと店舗のブランドの提供のみで、「ミタセル」では食材の調達や調理代行、販売チャネルの構築などを行う。ブランドなどを提供した飲食店には「のれん代」が支払れる。調理後すぐに急速冷凍を行い、店舗と同等の味を持つ商品として提案する。
プロジェクトに参加した飲食店である、フレンチ「La Paix」の松本一平氏は「思っていた以上の完成度で驚いた」と話す。他にも、ミシュラン掲載のビストロ「Ata」や、「日本橋 伊勢重」、「タイガーカレー」なども参加し、21店舗30品目を販売している。
プロジェクトに携わった、三井不動産の松本大輝氏は「すべてを請け負う形でのサービスでサプライチェーンなども新たに構築したほか、今までお付き合いのなかった店舗にも声をかけさせていただいた」と振り返る。
立ち上げた背景の一つは、立地や客席数によって売上が制約されるという点だ。人や時間、スペースにより売上の上限は制約されてしまうという。また、深刻化する人手不足や、円安による物価高や人口減少などに伴う将来的な国内マーケットの縮小も、実施に至った理由として挙げられている。
三井不動産で運営している商業施設内の飲食店も、コロナウイルスの影響で経営に苦しんでいたため、飲食事業者と共に取り組める新たな施策を模索し、今回のプラットフォームの開設に至った。商品製造から販売などを請け負うため、飲食店は人材確保や設備投資などの負担をかけずに新たな収益源にもつなげられる。また、三井不動産の持つ様々な接点を活かし、飲食店だけでは届けられなかった新たな顧客の開拓にもつなげられる。
購入者にとっては、時間や場所に縛られずに料理を楽しめるほか、商品の製造を代行しているため、店頭やお取り寄せサイトでは売り切れてしまう人気メニューを、購入しやすくなるという。
このサービスは、2023年2月からECで試験的に販売しているほか、マンション内での試験販売も実施している。
今後はメールマガジンなどでサービスや商品の情報を発信し、認知の拡大を進めるという。その他、商業施設内で期間限定店舗の運営も視野に入れているようだ。プロジェクトリーダーの佐々木氏は「コロナ禍に飲食店の方たちが悩まれており、その中で収益につなげられるような取り組みとして進めてきた。海外での展開も目指しており、そのためにもまずは国内で広く普及させたい」と力を込めた。
〈2023年4月20日付〉