JTB、2023年ゴールデンウィーク(4月25日~5月5日)の旅行動向見通し、国内旅行者数は2450万人(対前年153.1%)に

JTBは、「ゴールデンウィーク(以下、GW)<2023年4月25日~5月5日>の1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめた。市場推計については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、新型コロナ)の影響によって国内旅行者数のみ公表していたが、現在、感染状況が落ち着いていること、国が海外渡航の制限の緩和を進めていることから、海外旅行についても3年ぶりに算出した。その結果、国内旅行者数は2450万人(対前年153.1%)で、海外旅行者数は20万人(対前年400.0%)(3年ぶりの算出)と予測する。国内は中・近距離志向で、海外の人気の行き先は「ハワイ」「韓国」だった。

同レポートは、1泊以上の日本人の旅行について、各種経済動向や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査などから推計したもので、1969年より継続的に調査を実施している。

新型コロナは、WHO(世界保健機関)による終息宣言が発出されていないが、影響は世界全体で小さくなりつつある。各国や地域では社会経済活動の正常化に向けて舵を切っており、出入国における水際対策の緩和が進み、国際航空便や国際クルーズ船の運航再開の動きが広がっている。UNWTO(国連世界観光機関)によると、2022年の国際観光客到着数はコロナ禍前の6割程度だったが、2023年は堅調に推移した場合、80~95%にまで回復する可能性があるとしている(UNWTO「WorldTourismBarometerJanuary2023」から)。

国内については、個人が感染症対策を行いながら旅行することが日常となる中、政府は昨年10月から全国的な観光需要喚起策として「全国旅行支援」を始めた。また、3月13日からマスクの着用が個人の判断となり、5月8日から新型コロナの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行する方針も発表している。現在、多くの国内旅行者が各地で見られるようになり、「全国旅行支援」の割引率の高かった昨年12月の日本人延べ宿泊者数は4092万人と2019年12月(3795万人)を7.8ポイント上回った(観光庁「宿泊旅客統計調査」から、2022年12月の数値は第2次速報値、2019年12月の数値は確定値)。「全国旅行支援」は2023年4月以降も実施されている(4月29日~5月7日は対象外)。

2022年10月11日からの水際対策緩和では、1日あたりの新規入国者数の上限撤廃、陰性証明や隔離期間など入国時の条件の緩和、訪日外国人観光客の個人旅行の解禁などが行われ、日本人の海外旅行と外国人の訪日旅行が容易になった。2023年2月の訪日外国人数(推計値)は147万5300人で、2019年2月と比べ57%にまで回復している(日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数」から)。一方、今年2月の出国日本人数(推計値)は53万7700人で、2019年2月と比べ35%にとどまっている。

日本経済は、新型コロナによる停滞からの回復を目指しているものの、不安定な国際情勢やそれに起因する物価高騰、最近では米銀行破綻やグローバルIT企業などの人員削減といった懸念材料も新たに発生し、景気の先行きが見通しにくい状況が続いている。今年3月の月例経済報告の基調判断では、景気の持ち直しが期待されているものの、海外景気の下振れ、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等をリスクや注意点として示している。しかしながら、個人消費については、昨年7月以降、「緩やかに持ち直している」との判断が続いている。

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足元の経済状況をみると、為替相場については昨年以降円安ドル高が急速に進み、現在も130円前後で推移している。この影響によって、2022年後半から輸入品やエネルギーなどの価格の高騰が続き、物価上昇が家計に影響を与えている。主な項目の消費者物価指数を見ると、ここ1年以上は交通・通信以外の項目で上昇もしくは横ばいの傾向が続いている。エネルギーや電気代は2月に上げ幅が抑えられたものの、依然として高い傾向が続いている。

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このような状況を受け、暮らし向きは現状では厳しいといえ、日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き」では、「ゆとりがなくなってきた」の割合は、2021年9月以降、それまでの横ばいから増加し、2022年12月には53.0%と前年同月から13.0ポイント高くなっている。これはコロナ禍に入ってから最も高い割合となる。

JTB、2023年ゴールデンウィーク(4月25日~5月5日)の旅行動向見通し、国内旅行者数は2450万人(対前年153.1%)に

JTBが実施したアンケートで、生活とGWの旅行について当てはまる状況を聞いたところ、「仕事や会社の業績が悪化し収入が減りそうだ(7.7%)」は「収入が増えそうだ(2.7%)」より多いが、前年に比べて3.6ポイント下がっている。しかしながら「家計に余裕はない(24.4%)」が前年に比べて1.4ポイント増加し、「家計に余裕がある(4.2%)」は0.3ポイント下がった。また「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(13.7%)」も前年に比べて0.4ポイント増加し、足元で多少の改善はみられるものの、昨年から家計に余裕のない状況が続いていると考えられる。

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一方で旅行内容については、遠距離よりも近距離、日数増よりも日数減、豪華よりも質素という傾向は依然みられるが、前年と比べるといずれもその差は縮小しており、新型コロナへの警戒心理が幾分か和らいでいるものと捉えられる。「今後1年間の旅行支出に対する意向」については、「これまでより旅行支出を減らしたい(36.9%)」が「これまでより旅行支出を増やしたい(19.4%)」を上回ったが、2022年調査と比較すると、「旅行支出を増やしたい」という割合は3.9ポイント増加しており、旅行に対する前向きな支出を考えている層は増えている。

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今年のGWのカレンダーは、5月3日(水・祝)~7日(日)が5連休となる。5月1日と5月2日を休みにすると、4月29日から9連休となる。2023年GW(4月25日~5月5日)の帰省を含めた旅行意向の詳細について、前述のアンケートで聞いた。

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GW期間中に旅行に行くかどうかについては、「行く(“行く”と“たぶん行く”の合計)」と回答した人は調査時点で26.5%と前年から9.3ポイント増加した。コロナ禍前である2019年は26.3%で、旅行意欲はコロナ禍前と同等まで回復しているといえる。

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性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高くなる傾向がみられる。「行く(“行く”と“たぶん行く”の合計)」との回答は、男性29歳以下が40.2%(前年29.0%)、女性29歳以下が37.3%(同23.7%)であるのに対し、男性70代は19.5%(同11.0%)、女性70代は14.6%(同8.2%)となっている。なお、いずれの世代も大きく回復している。

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旅行に行かない理由としては、「ゴールデンウィークは混雑するから(42.5%)」が最も多く、前年から10.6ポイント増加した。次いで、「ゴールデンウィークは旅行費用が高いから(31.1%)」が9.7ポイント増加、「家でのんびりしたいので(26.1%)」が5.1ポイント増加、「収入が減ったので支出を控える(14.5%)」も4.9ポイント増加し、前年に比べ感染症以外の理由が上位を占める結果となった。2021年、2022年に最も多かった「新型コロナウイルス感染症がまだ収束していないから/拡大の懸念があるから(13.2%)」は前年から26.2ポイント減と大幅な減少となり、順位を下げた。

GW期間(4月25日~5月5日)の旅行動向については、各種経済指標、交通機関各社の動き、宿泊施設の予約状況、各種定点意識調査などをもとに算出し、総旅行者数は2470万人、総旅行消費額は9040億円と推計する。

国内旅行者数は2450万人(対22年153.1%、対19年102.0%)、国内旅行平均費用は3万4800円(対22年100.9%、対19年96.9%)、総国内旅行消費額は8526億円で、ほぼコロナ禍前の状態に回復すると考えられる。一方、海外旅行者数は20万人(対22年400.0%、対19年21.5%)だが、2019年のGWは令和天皇即位に伴い、4月27日~5月6日が10連休となっていたため例年に比べ海外旅行が活況を呈していた。コロナ禍前までの10年間の海外旅行者数は約50万人~60万人で推移しており、その平均と比較すると3割超回復しているといえる。海外旅行平均費用は25万7000円(対19年比95.9%)、総海外旅行消費額は514億円(同20.6%)となる。物価高や円安、燃料高騰、国際線座席提供数の縮小(対19年約60%)(OAG(オフィシャル・エアライン・ガイド)「CapacityReport」から)などの影響もあり、国内旅行に比べると海外旅行の回復は緩やかとなっている。

[旅行動向アンケート調査方法]
調査実施期間:3月13日~20日
調査対象:全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数:事前調査2万名
      本調査2060名
(事前調査で「GWに旅行に行く/たぶん行く」と回答した人を抽出し本調査を実施)
調査内容:4月25日~5月5日に実施する1泊以上の旅行
(国内旅行は観光および帰省目的の旅行に限る、海外旅行は業務目的の旅行を含む)
調査方法 : インターネットアンケート調査

JTB=https://www.jtbcorp.jp/jp/