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(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

亡くなった人に子どもがいる場合、相続においてその子どもは配偶者に次いで優先されます。

血族に限れば、子どもは第一順位の相続権を持つ重要な相続人です。

しかし子どもがまだ産まれる前の胎児の場合など、子どもをめぐる相続にはいくつか注意すべき点があります。

また、子どもが亡くなっていた場合には、代襲相続という独特の問題も生じます。

ここでは、子どもの相続と代襲相続に関して詳しく解説します。

子どもは必ず相続人になる

子どもは被相続人(亡くなった人)との血のつながりが濃く、故人の財産を引き継ぐのにもっともふさわしい立場です。

また、被相続人亡き後の子どもの生活の安定を図る必要性もありますし、子どもが故人のお葬式代を負担するケースも多いため出費の補填も必要です。

そのため被相続人に子どもがいる場合には、原則として子どもは必ず相続人になります。

子どもの相続割合

子どもの法定相続分は、配偶者と一緒に相続人になるかどうかによって異なります。

  • 子どものみが相続人の場合…全部×兄弟姉妹の人数
  • 子どもと配偶者が相続人の場合…1/2×兄弟姉妹の人数

法定相続分は民法に目安として定められたものであり、必ずこの通りにしなくてはいけないわけではありません。

遺言や生前贈与などの諸事情によって割合を変更することができます。

なお、被相続人に配偶者(子どもからみると親)がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。

子どものみが相続人となるのは、配偶者がすでに他界している場合や離婚が成立している場合などのみです。

養子も親子

養子縁組をしている場合は、血のつながりはなくとも親子です。

養子も実子と同様に相続人となり、相続割合も同じです。

相続人になれる血族

子どもは血のつながりが濃いといいましたが、子ども以外にも血のつながった家族はいます。

血のつながりのある家族のことを血族といい、親・兄弟姉妹・子ども・孫などがこれにあたります。

かれらはつながりの深い大切な人たちですが、相続に関しては少し扱いが異なります。

血族であっても、必ず相続人になれるとは限らないのです。

直系血族と傍系血族とは

親子関係や孫関係など家系図で直線によってつながる血族のことを「直系血族」といい、自分より上の世代のことを「直系尊属」、下の世代のことを「直系卑属」といいます。

サザエさん一家でたとえると、サザエさんからみて上の世代の波平さんとフネさんは直系尊属、下の世代のタラちゃんは直系卑属です。

兄弟姉妹や甥姪など、家系図で枝分かれによってつながる血族のことを「傍系血族」といいます。

サザエさんならカツオくんとワカメちゃんが傍系血族にあたります。

相続においては、直系血族と傍系血族で優先度が異なっており、相続順位が決まっています。

  • 1.直系卑属
  • 2.直系尊属
  • 3.傍系血族

この順に従って血族は相続人になります。

直系卑属がいない場合は直系尊属に、直系尊属もいない場合には傍系血族に相続権が発生します。

さらにそれぞれの順位内でも優先順位があります。

子どもと孫はどちらも相続順位1位の直系卑属ですが、さらに子ども→孫→ひ孫…の世代順で相続権があります。

子どもがいる場合には孫やひ孫は相続人になれず、子どもがすでに死亡している場合に限って孫やひ孫が相続します。

これを代襲相続といいます。

同じように直系尊属や傍系血族にも順位があり、家系図でより故人と近い立場の人から順に相続権が発生します。

ただし、傍系血族の代襲相続はその子の代までであり、それ以上の血族は法定相続人にはなれません。

サザエさんでいうと、カツオくんが独身のまま亡くなりサザエさんもすでに死亡していた場合、タラちゃんが代襲相続することになります。

仮にタラちゃんも死亡していたとしても、タラちゃんの子どもは相続人にはなれません。

このように血のつながりのある家族は多岐にわたるため、相続においてさまざまな問題が生じます。

血族の相続割合

子どもと同じように、血族もそれぞれの法定相続割合が民法によって定められています。

  • 直系尊属
    配偶者がいる場合は1/2×兄弟姉妹の人数
    いない場合は全部×兄弟姉妹の人数
  • 直系卑属
    配偶者がいる場合は1/3
    いない場合は全部×直系卑属の人数(直系尊属がいる場合はゼロ)
  • 傍系血族
    配偶者がいる場合は1/4×兄弟姉妹の人数
    いない場合は全部×傍系血族の人数(直系尊属か直系卑属がいる場合はゼロ)

なぜ相続順位は血の濃さで決まらないのか

血のつながりでいうのなら、親だって子どもと同じくらいのつながりがあります。

血がより強くつながった家族にこそ財産を残したいという人もいるでしょう。

かつての日本は家制度や血族主義をとっており、血の濃さを重視した相続がなされていました。

一族で財産を守っていたのです。

しかし現在の民法では、従来の考え方をとっていません。

財産は家のものではなく個人のものであり、残された家族の生活などに活用すべきと考えています。

そのため、残された配偶者(夫や妻)と子どもが最優先で相続人となり、被相続人に子どもがいる場合には親や兄弟姉妹に相続権は発生しません。

親が守るべきは子どもであり、子どもの財産を親が継ぐのは相続の趣旨に反するためです。

もう大きくなった子どもよりも、可愛い盛りの孫やひ孫に財産を残したい人もいるでしょう。

しかし民法では、子どもが亡くなっている場合などに限り、孫の相続権を法定しています。

財産は次世代に引き継がれるべきものであり、世代を飛び越えるものではないからです。

遺言などによって任意に孫に相続させることはできますが、法律上、当然には孫の相続権は発生しません。

子どもが死亡していた場合の代襲相続

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被相続人の死亡よりも前に子どもが死亡していた場合、孫が相続人となります。

これを代襲相続といいます。

代襲相続については先ほどから触れてきましたが、少しややこしい制度です。

改めて詳しくみておきましょう。

代襲相続とは

代襲相続とは親や祖父母に代わって相続することですが、直系卑属と傍系血族の場合にのみ発生する特殊な相続方法です。

直系卑属の場合は子ども→孫→ひ孫とどんどん下の世代へと代襲していきますが、傍系血族の場合は一代限りです。

被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合に甥と姪は代襲相続人となりますが、甥と姪の子どもは法定相続人にはなれません。

配偶者や直系尊属がいなかったとしても、相続割合が変動するだけで代襲相続は起こりません。

代わりとなるべき立場の人がいないためです。

代襲相続が起こる条件とは

代襲相続は特殊な相続ですから、いつでも起こるわけではありません。発生条件があります。

代襲相続が起こるのは、本来相続人となるべき直系卑属または傍系血族に以下の事情が生じた場合です。

  • 死亡
  • 廃除
  • 欠落

この3つの事情が生じると相続人が欠けた状態になり、代わりの相続人が必要になります。

▼死亡とは
ここでいう死亡とは、被相続人の死亡の前にすでに本来相続人となるべき人が死亡していることをいいます。

被相続人の死亡後に亡くなった場合には、本来相続人となるべき人が相続した財産がさらにその子どもに相続されるという別の相続が改めて発生するだけで、代襲相続ではありません。

▼廃除とは
相続人から虐待や重大な侮辱を受けた場合などには、被相続人は相続人を排除して相続させないようにすることができます。

廃除の手続きは家庭裁判所に申し立て行うか、遺言書で行うことができます。

廃除は相続人の個人的な非行などによって行われるもののため、その子どもの相続権は否定されず、代襲相続の対象になります。

▼欠落とは
欠落とは、相続人が相続欠落事由を犯したことによって相続人の資格をはく奪されることです。

廃除とは異なり、被相続人の意思は関係ありません。

そのため一度欠落した者は二度と相続人にはなれません。

相続欠落事由とは簡単にいうと相続に関する犯罪行為であり、被相続人を殺害しようとしたり詐欺や脅迫によって遺言を撤回させようとしたりした場合がこれにあたります。

欠落は相続人の個人的な犯罪行為に基づくもののため、その子どもの相続権は否定されず、代襲相続の対象になります。

▼相続放棄は代襲相続の対象ではない
似た事情として「相続放棄」があります。

相続放棄とは文字通り相続を放棄することで、家庭裁判所で申述して行います。

相続放棄の手続きをとると、相続人は初めから相続人でなかったことになります。

相続人ではないという点はこの3つの事情と同じですが、相続放棄は相続人が欠けた状態とはいえません。

そのため、相続放棄をしたからといって代襲相続は起こりません。

代襲相続の相続割合

代襲相続の相続割合は、本来の相続人と同じ割合です。

配偶者はすでに死亡している場合に孫が一人息子に代わって代襲相続するケースでは、財産のすべてを孫が相続することになります。

胎児にも相続権がある

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現行法上、人は産まれたときに権利を持ちます。

しかし相続においては、まだ産まれていない胎児にも相続権が認められています。

妊娠中に父親が死亡してしまった場合にお腹の子どもに財産を残してあげないと、母子が今後の生活に困るためです。

ただし、胎児にも相続権はありますが、その効力が発するのは生きて産まれてきた時点です。

母体から胎児の体のすべてが出た時点で生きていなくてはいけません(全部露出説)。

この世に産まれてきてたった一度でも鼓動を鳴らしたなら、胎児にも相続権が認められます。

残念ながら死産となった場合には、たとえ頭が出た時点では生きていたのだとしても、胎児の相続権は認められません。

被相続人の子どもであるならば、妻の子でも愛人の子でも恋人の子でもかまいません。

ただし愛人や恋人など入籍していない人との子どもである場合には、認知の手続きが必要です。

認知の手続きは遺言または裁判によって行います。

胎児の相続割合

胎児も一人前の子どもですから、相続割合は子どもと同じです。

  • 子どものみが相続人も場合…全部×兄弟姉妹の人数
  • 子どもと配偶者が相続人の場合…1/2×兄弟姉妹の人数

まとめ

子どもは必ず相続人になります。

それ以外の血族には優先順位があり、相続人になれない血族もいます。

相続人になるべき人がいない場合には代襲相続となります。

また、胎児にも相続権があり、生きて産まれてきた時点で相続人になることができます。

このように、子どもの相続にはさまざまなケースがありますので、相続割合や手続きなどでわからないことがあれば専門家に相談してみるのも一つの手でしょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所