地域密着型の中小企業に就活生が集まるようになったワケ
(画像=tadamichi/stock.adobe.com)

(本記事は、後藤 康之氏の著書『ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社』=あさ出版、2021年12月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

トップライブに「300名」以上もの就活生が集まるようになった理由

●「採用に関する方針」を決め、採用活動をノウハウ化

新卒活動をはじめたのは、2007年からです。当時、学生の間でエネチタの人気度・知名度は、ほぼゼロでした(笑)。

トップライブ(単独会社説明会)を開いても学生は集まらない。定員70名の会場に、わずか「2名」しか参加しなかったこともありました(会場が広すぎて居心地が悪く、結局、喫茶店に移動しました)。ですが現在は、この章の冒頭で紹介したグラフを見てもわかるようにトップライブにここ最近は300名程度の学生が集まります。

エネチタが学生の目にとまるようになった理由は、おもに「3つ」あります。

①看板による認知度の向上

ひとつは、「知名度を上げるためのブランディング戦略が功を奏した」ことです。

知多半島内の大学周辺に看板を数多く設置した結果、学生の目を引くことができました。知多半島出身の就活生に限ると、「約8割」が認知経路として「看板」を挙げています。

②採用に関する方針を策定

2つ目の理由は、経営計画書に「採用に関する方針」を明記し、採用活動の進め方をルール化したことです。

経営計画書とは、エネチタの経営理念、長期事業構想、社員教育、人事評価、採用、クレーム対応、資金運用、実行計画など、会社の方針と数字が明文化された手帳型のルールブックです(経営計画書については、第3章でも紹介します)。

③エネチタブランドを感じてもらう

最後は学生のみなさんにエネチタの社員は「感じがいい」と感じてもらうことです。これは実際に会社説明会に来ていただければわかることですが、どこのブースの社員よりもエネチタの社員は「感じがいい」と自負しています。なぜならエネチタブランド=「感じがいい人」という社員教育を徹底してやっているからです。

会社説明会時のアンケートを見ても、エネチタの印象は「明るい」「楽しそう」「笑顔」といった印象の内容が9割を占めています。

リフォーム事業部、2018年新卒社員の中村文香もエネチタ社員の人柄で入社を決めた一人です。

「職場見学で実際に働いている先輩方とお話したり先輩方同士のやり取りを見たりして、会社全体で仲がいい雰囲気を感じ入社を決めました。実際に入社しても、他事業部の方が気にかけてくれたりと、事業部関係なくどなたにお会いしても感じがいいです」(中村文香)

【採用に関する方針】※経営計画書の一部を抜粋して紹介

1 基本

⑴価値観を共有できる人を優先して採用する。
⑵採用窓口は人財やる気課が行い、必要に応じて各事業部は積極的に採用活動に協力する。
⑶現実・現場・現物を数多く体験させ、良いところ、悪いところを見せる。
⑷過去の会社や他人のせいにする人は採用しない。
⑸面接は必ず2名で実施し、女性の社員やパートを面接する際、一緒に働く女性社員が必ず同席すること。

エネチタでは、新卒採用に関して、「やらないこと」と「やること」を明確にしています。

「これは、やらない」「こういう人材は採用しない」「こういう人を採用する」と基本方針を決めたことで、「辞めない人材」「エネチタに適した人材」を採用できるようになりましたし、通年での採用戦略も立てやすくなっています。

中小企業の社長の多くは、「新卒採用=人事部(人事課)の仕事」と考えています。ですが、エネチタでは「人財やる気課」を中心に、各事業部が積極的に採用活動に取り組んでいます。「自分たちの仲間になる新卒社員を、自分たちが選ぶ」のが基本です。

2 採用基準

⑴新卒採用

・ 学歴や成績は、参考程度にしか評価しない。
・ 内定者アルバイト、内定者研修に参加できない人は採用しない。

「基本方針」「採用基準」「内定者、中途採用社員の研修」など、採用に関するエネチタの方針を決めたことで、「学生をどうやって集めるか」「集めた学生をどうやって選定するか」が明確になりました。

社員が採用のルールを共有した結果、効率的に採用活動ができています。

ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社
後藤 康之 (ごとう・やすゆき)
株式会社エネチタ 代表取締役
愛知県知多市出身。
1997 年に大学卒業後、兵庫県の会社に就職するも1年半後に社長であった父親が他界し、急遽、地元系石油店の株式会社大和(現株式会社エネチタ)に戻り、社会の経験も少ないまま、会社を継ぐことになる。その状況に危機感を抱き、休まず働き続け、独学によるトップセールスで会社を大きく成長させたが、調子に乗って事業の多角化に乗り出した結果、マネジメントの限界で倒産の危機に。その後、徹底した社員教育と地域戦略で業績を回復させ、愛知県の知多半島という限られたエリアのみに事業を絞りながらも、8事業、27拠点に拡大、従業員数400名で2021年にコロナ禍にもかかわらず過去最高益を達成し、今もなお成長を続ける。

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