地域密着型の企業が多角的に事業を展開すべき4つの理由
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

(本記事は、後藤 康之氏の著書『ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社』=あさ出版、2021年12月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

多角的に事業を展開している4つの理由

●知多半島に「なかったもの」や「より良いもの」を事業化する

エネチタは、創業時の「石炭」からはじまり、現在は、プロパンガス、ガソリンスタンド、リフォーム、不動産、飲食など多角化経営をしています。

多角化経営とは、異なる事業を複数経営することです。

ではなぜ、エネチタは多角的に事業を展開しているのか?

その理由は、次の「4つ」です。

【多角化経営をしている理由】

①地域のニーズに応えるため
②異業種のノウハウを横展開できるため
③社員に「夢」を与えるため
④潰れにくい安定した会社にするため

①地域のニーズに応えるため

「中小企業の力で知多半島エリアを元気にする」のがエネチタの目的です。そのために必要なのは、

「地域の声を反映させたサービスを提供する」

ことです。たとえば、お客様から、

「以前、地元の工務店で家を建てた。そろそろリフォームを考えているが、その工務店は時間がかかるし、料金も不透明。全国展開をしている大手リフォーム会社も検討したが、どうしても料金が割高になってしまう」

という声をいただいたのであれば、エネチタが「超地域密着型のリフォーム事業」「大手リフォーム会社よりも安く、地元の工務店よりも技術力のあるリフォーム事業」をはじめればいい。

私たちの判断基準は、

「知多半島に暮らす人たちの役に立つか、どうか」
「知多半島に暮らす人たちが望んでいるか、どうか」

です。

役に立つことであれば、ジャンルを問わず、事業化を検討します。

「会社の平均寿命は、約25年」と言われる中、エネチタが「85年」以上事業を継続できているのは、お客様の声に合わせて、サービスを変化し続けてきた結果です。

今でも、日々のお客様の声が年間6万件以上届いていますが、そのすべてに社長自ら目を通すようにしています。

事業のヒントは、お客様の声にあります。エネチタが、既存または新規の分野で事業を広げてきたのは、「地域の声」を経営に反映させた結果です。

ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社
(画像=『ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社』より)

②異業種のノウハウを横展開できるため

「ライバル会社と同じこと」「業界1位が実践していること」「業界内でうまくいっていること」を積み重ねても、ライバル会社との差は縮まらないと思います。同業種の場合、どうしても既成の枠組から抜け出すことができないからです。

同一企業内に、複数の事業を持っていれば、「産業エネルギー事業で成果が出た仕組みをリフォーム事業でも実行する」など、異業種のノウハウを横展開する事ができ、それが業界の非常識となり、ライバルと差別化できます。

また、「ガス事業」と、「リフォーム事業」「不動産仲介・売買事業」を展開しているエネチタであれば、「住宅を売ったらそれで終わり」ではなく、「リフォーム」や「電気やガス」などの付加価値の提案もできます。

実際に、「リフォーム事業部でガス給湯器の需要をヒアリングしたあとに、給湯王事業部で給湯器の取り付けからアフターフォローまでをする」など、各事業部が連携してシナジー効果を出しています。

新店舗を出店するための土地・物件探しも、自社に不動産部門を抱えているため、スムーズかつスピーディです。

ただ、異業種のノウハウを横展開すればすぐにシナジー効果が生まれるかと言えば、そうではありません。

私は業界のナンバーワン同士が協力し合うからシナジー効果が出ると考えています。なぜなら業界のナンバーワンは成果が出るスタンダードをそれぞれ持っており、そのスタンダードを掛け合わせるからこそシナジー効果が生まれると考えているからです。業界のナンバー2、ナンバー4ではだめなのです。

だからこそ、エネチタは各事業で知多半島ナンバーワンを目指すのです。

③社員に「夢」を与えるため

「事業も、店舗も、これ以上増やさない」としたら、それは「会社の成長を止めること」です。会社が成長しなければ、給料は上がらない。役職も上がらない。社員のモチベーションも上がらない。

反対に、「事業と店舗をこれからも増やす」としたら、それは「会社が成長し続けること」です。成長性、将来性のある会社を目指すことで、社員に夢を与えます。

あらゆることが猛スピードで変化する時代にあって、現状維持は「後退」と同じです。事業数も店舗数も「今のまま」に甘んじていたら、その先に待つのは、倒産です。

社員が笑顔で働ける会社にするには、会社を成長させなければならない。そのためにも、新しい事業に取り組んで、会社を変化させる必要があるのです。

④つぶれにくい安定した会社・安心できる会社にするため

エネチタがコロナ禍にあっても盤石だったのは、事業の柱を複数持っているからです。事業の柱がひとつしかなければ、「その事業の業績=会社の業績」となります。その事業が赤字になれば、会社も赤字です。

ですが、事業の数が多ければリスク分散が可能です。たとえば、「コロナ禍による外出自粛でガソリン需要が減少しても、餃子の王将のテイクアウト需要は増える」など、ひとつの事業が落ち込んでも他の事業で補填できます。

会社は成長発展を続けなければいけませんが、永遠に成長し続ける業界なんてありません。だからこそ多角化経営は中小企業にとって有効な戦略であると私は考えています。

ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社
後藤 康之 (ごとう・やすゆき)
株式会社エネチタ 代表取締役
愛知県知多市出身。
1997 年に大学卒業後、兵庫県の会社に就職するも1年半後に社長であった父親が他界し、急遽、地元系石油店の株式会社大和(現株式会社エネチタ)に戻り、社会の経験も少ないまま、会社を継ぐことになる。その状況に危機感を抱き、休まず働き続け、独学によるトップセールスで会社を大きく成長させたが、調子に乗って事業の多角化に乗り出した結果、マネジメントの限界で倒産の危機に。その後、徹底した社員教育と地域戦略で業績を回復させ、愛知県の知多半島という限られたエリアのみに事業を絞りながらも、8事業、27拠点に拡大、従業員数400名で2021年にコロナ禍にもかかわらず過去最高益を達成し、今もなお成長を続ける。

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