(本記事は、後藤 康之氏の著書『ここまでやるか! 地域密着のスゴい会社』=あさ出版、2021年12月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
お客様満足度を上げるために、「やらない」と決めていること
●「専門店化」でお客様満足度を上げる
「地域の役に立つことなら、やってみる」のがエネチタのスタンスです。
しかし一方で、「やらないこと」も決めています。
【エネチタがやらない3つのこと】
①広く浅くの「なんでも屋」にはならない
②「地域特性」を無視したビジネスはしない
③「価格競争」はしない
①広く浅くの「なんでも屋」にはならない
日本の大衆消費社会をリードしてきたのは、団塊世代(1947年~ 1949年に生まれた世代)が、30代から50代だったころです。そして、団塊世代の消費の高まりによって誕生したのが、百貨店やスーパーマーケット、つまり、「1ヵ所で何でも買える」という業態でした。
現在、団塊世代が70代に入り、消費の主役は、団塊ジュニア(1971年~1974年に生まれた世代)に移っています。
団塊ジュニアは、幼少期から百貨店やスーパーマーケットに馴染んでいるため、「なんでも売っているが、それぞれが少ししかないお店」より「特定のカテゴリーに特化して、品数やレア商品なども揃えているお店」を好む傾向にあります。たとえば、カレーを食べたくなったとき、喫茶店に行くのが団塊世代。カレー専門店に行くのが団塊ジュニアです。
エネチタでは、この団塊ジュニア以降のニーズに合わせて、各事業の「専門店化」を進めています。
エネチタは複数の事業を展開しているため、「広く、浅く、いろいろなことをやっている会社」だと思われてしまいがちですが、各事業で提供するサービスは「狭く、深く」なのです。「狭く、深く」とは、「専門店化する」ことです。
【「狭く、深く」の一例】
・リフォーム
主力メニューは、「水まわり」(キッチン、お風呂、洗面、トイレ)。
当社の「キッチン専科」は知多半島初のキッチン専門店となる。
・給湯王
給湯器・エコキュート・コンロに特化した専門店。豊富な在庫と他社を圧倒するスピード対応でお客様のお困り事を解決。
・ガソリンスタンド
タイヤ交換、ボディコーティングの2つに特化。コーティングに関しては、専用のブースを併設。点検整備や車検は手がけない。
・不動産事業
たとえば大手仲介業者が知多常滑店を出店しているとすると、エネチタは知多店、常滑店と分ける。このように、知多半島という狭いエリアでも徹底的に細分化して出店し、地域に根差したサービスを展開することで「この地域だったらエネチタだ」と安心して任せてもらえるようになる。
専門店化に踏み切ると、
・エネチタの強み(得意なこと)が明確になる。
・品質が上がる。
・サービスのスピードが上がる。
・お客様満足度が上がる。
・オペレーション効率が良くなる(作業の無駄が減る)。
・クレームが減る。
・ミス(ロス)が減る。
などのメリットがあります。
●付加価値を高めてお客様満足度を上げる
②「地域特性」を無視したビジネスはしない
同一半島内にあっても、知多半島の5市5町は地域特性が異なるため、特性に応じた対応が必要です。この特性は大手企業が持っているような情報やデータではなかなかつかめないものです。
「このエリアの人の移動経路は、こうだ」「このエリアの人は、主要道路よりも生活道路(住宅などから主要道路に出るまでに利用する道)を頻繁に使う」など、地域に根づいた会社だからわかる、地域の生活のあり方・考え方、消費面の特徴、市場規模、競合の数や状況、自然や風土の特徴などを踏まえながら、地の利を経営に活かしています。
③価格勝負はしない
エネチタの販売価格は、おおよそ、
「競合する激安店よりも、少し高い価格」
に設定しています。
ライバル会社に勝つために(ライバルのシェアを奪うために)、「値引きすればいい」と考えるのは早計です。
そこでエネチタでは、過度な値下げはせず、そのかわりに「価格以上の付加価値」を提供しています。
「激安店よりも価格は少し高い。けれど、付加価値(サービス)を上げてお客様満足度を高める」のが狙いです。全体の契約率は70%~80%で、この数字からもお客様に圧倒的な支持をいただいていると考えています。
私は、「商品が売れるか売れないかは、販売価格で決まるのではない。付加価値があるかないかで決まる」と考えています(付加価値には、社員の人間性も含まれます)。
たとえば、エネチタが運営するセルフスタンドでは、ドライブスルー洗車がご好評をいただいています。
洗車料金はライバル店よりも「高い」のに、それでもお客様がエネチタを選んでくださるのは、
「洗車後の拭き上げ用タオルと、タイヤワックスを無償で貸し出す」
「お客様のカーライフを快適にするためのアドバイスをする」
「礼儀正しさ、挨拶、笑顔など、さわやかな接客をする」
といった付加価値を提供しているからです。
また、給湯王事業では他の激安店よりも価格が少し高いにもかかわらず、契約率が90%もの数字を誇っています。これは、「対応のスピード」「保証サービス」、そしてスタッフの「人間性」にお客様が付加価値を感じてくれているからだと考えています。
愛知県知多市出身。
1997 年に大学卒業後、兵庫県の会社に就職するも1年半後に社長であった父親が他界し、急遽、地元系石油店の株式会社大和(現株式会社エネチタ)に戻り、社会の経験も少ないまま、会社を継ぐことになる。その状況に危機感を抱き、休まず働き続け、独学によるトップセールスで会社を大きく成長させたが、調子に乗って事業の多角化に乗り出した結果、マネジメントの限界で倒産の危機に。その後、徹底した社員教育と地域戦略で業績を回復させ、愛知県の知多半島という限られたエリアのみに事業を絞りながらも、8事業、27拠点に拡大、従業員数400名で2021年にコロナ禍にもかかわらず過去最高益を達成し、今もなお成長を続ける。
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