(本記事は、浦 大輔氏の著書『Golf パットは読みが8割』=エクシア出版、2022年9月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
グリーンの傾斜が見えない?見えなくて当たり前!
グリーンの読み方は、アマチュアゴルファーの多くが悩んでいる点かと思いますが、パッティングラインを読むにあたって絶対に知っておいてほしいのは、グリーンに乗ってからラインを読んでも手遅れということです。
ラインは傾斜によって生まれます。下り傾斜に打てばボールは加速し、上り傾斜なら減速する。右傾斜に向かって打てば右に切れてスライス、左傾斜なら左に切れてフックします。しかし、残念ながら実戦では、こんな判で押したように素直なラインはありません。
なぜなら、大きな傾斜の中にいくつもの小さな傾斜が紛れ込み、多かれ少なかれ全体がうねっているのがグリーンの基本的なつくり。とても一筋縄ではいかない傾斜のラビリンスだからです。
ラインを読み切るのは百戦錬磨のプロでも不可能
経験豊富なプロはボールがどう転がるか予測できるといいますが、それとて予測の域を出ません。グリーンの表面にあるなにかに触れて、ボールがちょっとでも跳ねれば方向が変わってしまうわけで、ラインを読み切るのは百戦錬磨のプロといえども所詮不可能です。
その証拠に、プロもグリーンの傾斜が仔細に記されたメモを片手にラウンドしています。あれが何のためにあるかといえば、傾斜が見えないからにほかなりません。
ほかにも顔の前でパターを垂らして傾斜を見たり、ラインに手をかざすエイムポイントなど、ラインを読むべくさまざまな手法も取り入れていますが、どれも決め手には欠けます。決め手になるならみんなが実践しているはずで、結局のところは自分を納得させるための気休めにしかなりません。グリーンは宇宙空間のように人知を超えた場所なのです。
乗る前にグリーン周りの景色を観察する
では、どうすればいいのでしょう?
答えはグリーンに乗る前にまわりの景色を見ておくこと。景色というより地形といったほうが正確かもしれませんが、グリーンに向かって歩きながら、あるいはカートで移動しながらグリーンとその周辺を遠景で観察するのです。
具体的には、グリーンから一番近い山の頂を見つけ、どの方向に下っているかを見ます。パッティングラインに最も影響を与える大きな傾斜は地形がもたらす傾斜です。
例えば花道から見てグリーンの右サイドに山の頂があり、グリーンの左サイドに向かって下っている地形なら、地形にならって右サイドが高く、左サイドが低いグリーンだと予測できます。もし左サイドが台地のようにせり上がっていたら、大きな傾斜はないグリーンかもしれません。
山頂、排水溝、スプリンクラーで傾斜をつかむ
一度グリーンに乗ってしまうと平らに見えたり、グリーン上の小さな傾斜に惑わされて上りか下りかわからなくなることがよくありますが、そうなったときに、そもそもどんな地形に鎮座しているグリーンなのか、その生い立ちを思い起こすことがラインを読む糸口になります。この傾斜を見る場合には、グリーンを平らな一枚の面と考えて差し支えありません。
ちなみに、いの一番に山の頂を見つけるのは水の流れから傾斜を予測するから。言うまでもなく水は高いところから低いところに流れます。グリーン周りに山や小高いところがあれば、そこからグリーンに向かって水が流れていきます。もし傾斜に逆らうような形でグリーンが設置されていたらスムーズに排水できず、グリーン上に水が溜まりやすくなる。なので、基本的には傾斜に対してそのように配置されているグリーンはありません。わかりづらければグリーン周りに必ずある排水溝を見つけるといいでしょう。排水溝は水が集まる一番低いところにありますから、大きな傾斜はそちらに向かって下っていると推測できます。
排水溝と真反対の位置にスプリンクラーがあれば確実に下っているといっていい。「山の頂→排水溝→スプリンクラー」の順に観察すれば、ベースにある大きな傾斜を把握できるというわけです。
一方、海辺のリンクスや河川敷など平らな地形に展開するコースでは、グリーン周りに山がないところもあります。
そんなケースでは地形が及ぼす傾斜はまずありません。メンテナンスを考えたコースならばグリーンを囲むようにスプリンクラーがあるはず。もちろん排水溝もあるはずですから、見た目にも感覚的にもわからないくらい緩やかだとしても、そちら側に下っているものと考えられます。
ただ、地形による傾斜がなくてもグリーン面には大なり小なり傾斜がありますから、グリーンの高いところと低いところを見つけ、その傾斜をベースにラインを読むことになります。このケースでも、おおむねグリーンに乗る前に遠景で見たほうが傾斜を見つけやすいです。
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