(本記事は、川上 徹也氏の著書『面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則』=アスコム、2022年11月11日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
何を伝えたいのかわからない文章だとよく言われる
脳に負担を与えない表現にする
一生懸命書いた文章が相手に伝わらなかったら、とても悲しいですよね。読んでいて気持ちのいい文章とは、いったいどんな文章なのでしょうか?
2002年にノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者ダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー』の中で、以下のように語っています。
「脳に負担を与えない『認知容易』な文章を読むと、人は心地よさを覚え、書き手に『親しみ』や『信頼』を感じる」
自然とスラスラ読めてしまう文章には、「脳に負担をかけない」という特徴があるようです。
一方、「読みにくい」と思われる文章は、相手の脳に負担を与えているおそれがあります。
脳への負担を減らすには、まず、文字を見やすくすることです。
「見出しがない」「文字が小さい」「余白が少ない」など、文章の中身ではなく、直観的に見づらいと感じられる部分は、すぐに改善しましょう。
文章の中身については、「論理がつながっているか」が大切です。
「そして」「でも」「だから」などの接続詞を入れてみることで、きちんと論理がつながっているかチェックすることができます。
あとは、「リズム」の問題もあります。これは、声に出して読んでみると実感できます。同じ接続詞や語尾が続いたり、文体がごちゃ混ぜになったりしていると、読みづらく感じられるでしょう。
ラファイエット大学心理学部のマシュー・マッグローンらは、被験者に「ことわざ風の韻を踏んだ文章」と「同じ意味で韻を踏んでいない文章」を読み比べてもらい、どれくらい「現実を反映しているか」を聞く実験をしました。
その結果、被験者の多くは、ことわざ風の韻を踏んだ文章のほうが「的確で信用できる」と答えたのです。
これは、日本語でも同じです。たとえば「でっかいどお。北海道」「インテル、入ってる」「セブンイレブン、いい気分」などのコピーは、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
脳に負担をかけない文章を意識すれば、気持ちよく伝わるだけでなく、相手からの信用を得ることもできます。ぜひ、試してみてください。
まとめ
余白・論理・リズムに気をつければ、親しみやすい文章になる
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。
「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。
現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を超えて、様々なものの魅力を伝え続けている。
『物を売るバカ』『1行バカ売れ』 (角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。
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