地方中小企業の社員の定着率アップにつながった「構ってもらえる」仕組みとは
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(本記事は、宮﨑 薫氏の著書『採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり』=あさ出版、2023年1月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

定着率アップのキーワードは「構ってもらえる」

●さまざまな形で「構ってあげる」仕組みを構築

すでに述べたように、当社の新卒の定着率は最初から高かったわけではありません。

「どうすれば定着してくれるだろうか」ということをさまざまに検討し、改善に改善を重ねてきました。その甲斐あって定着率が上がっていったのです。

実際、ここ数年、1年目の新入社員の表情が以前とは違うと感じます。

採用活動を始めた当初の新入社員たちは、入社後、だんだんと表情が暗くなっていくのがわかりました。そうした表情を見るにつけ、希望を持って入社してくれた彼らに本当に申し訳ない気持ちになったものです。それが今は、みんなそれなりに悩みもあるとは思いますが、基本的には明るい表情で日々の仕事に取り組んでくれています。

こうした表情の変化や、それが数字となって表れている定着率のアップなどを実現できたのには、さまざまな要因があると思います。その中でとりわけ大きいのが、当社では「構ってあげる」ことが仕組み化されている点です。

たとえば、先述したメンター制度やインストラクター制度は、まさに「構ってあげる仕組み」の典型例でしょう。

毎朝の環境整備の時間も「構ってあげる仕組み」の1つといえます。というのも、この時間は先述のように「おしゃべりをしながら」が原則だからです。そこではメンターやインストラクター以外の先輩や上司も積極的に話しかけてくれます。ときには、社長の私が話しかけることもあります。まさに、会社のさまざまな立場の人間が新入社員を構ってあげるわけです。

また、当社では、「飲みニケーション」重視の立場から、さまざまなメンバーでの社内飲み会が「仕組み化」されています。こうした場は、毎朝の環境整備以上に打ち解けた会話になりやすく、また参加者全員が会話に参加できるようルール化されているので、新入社員にとってはこれも「構ってもらえる」いい機会になります。

●人間は基本的に構ってもらいたい

よく言われるように「愛情」の対極にあるものは「無関心」です。人間誰しも「構ってほしい」ものです。放っておかれると、寂しいし、その場にいてもつまらない。場合によっては居心地も悪くなります。

これは人間社会の原則のようなもので、会社の人間関係においても例外ではありません。職場で放ったらかしにされてしまえば、やはりつらい。一方、気にかけてもらって構ってもらえれば嬉しいし、その場所に対してプラスの感情、さらには親近感も持ちやすくなると思います。

だからこそ、社員に定着してもらいたいのであれば、気にかけてあげ、構ってあげることが欠かせません。さらに、それを一時的なものでなく、継続的に行っていくには、社内で仕組み化していくことも重要です。

現在、こうした「構ってあげる」は新卒社員だけでなく、中途社員に対しても同じように行われています。中途社員たちからは「構ってもらえるので、スムーズに会社になじんでいけました」という感想をしばしば聞きます。

こうした感想を聞くにつけ、「まわりが気にかけてあげて構ってあげる」ことが当たり前のように共有できてきたのだと感じます。

採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり
宮﨑 薫
株式会社コプロス代表取締役社長
1958年、山口県下関市生まれ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部卒業。米国建機会社で働いた後、父が経営する株式会社共栄土建(1991年に株式会社コプロスに改称)に入る。1995年より現職。工学博士。
コプロスは、創業1946年の「メーカー型総合建設業」。地元・下関のシンボル「関門橋」の施工を手がけるなど、多彩な土木・建築事業に取り組む一方、積極的な技術・工法の開発と導入に取り組む。とりわけ特許工法である「ケコム工法」は、国内では公益社団法人日本推進技術協会「黒瀬賞」、海外では国際非開削技術協会「No-Dig Award」を受賞するなど、世界一の技術として高く評価されている。また、近年ではケコム工法を応用して、地中に廃棄物をメタン発酵させる槽を設置するバイオガスプラントを開発するなど、さらなる分野への挑戦を続けている。

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