著名コンサルの助言でどん底経営から好転、学んだ2つの教訓
(画像=khwanchai/stock.adobe.com)

(本記事は、宮﨑 薫氏の著書『採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり』=あさ出版、2023年1月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

不要な土地、建物、機材をとことん整理し、キャッシュを増やす

●「今まで相談に来た社長のなかでいちばん暗い顔をしてる」

小山社長は、750社以上の中小企業の経営者を指導しています。

その小山社長が最近おっしゃっていたことがあります。

これまで、私のところに相談に来た社長のなかで、いちばん暗い顔をしていたのが宮㟢さんだった(笑)。それが今はこんなに明るい。社長も、会社も変わることができるんですよ」

今でこそ笑い話ですが、当時の私はそれほど追い詰められていたわけです。

ただ、小山社長はこうもおっしゃっていました。

「宮㟢さんは、わからないことがあったら、そのままにしない。わかるまで聞く。そして実行してわからないことがあったら、また聞く。これは、なかなかできないことです。また、私がアドバイスすると、最初は『え!』と言っていたのが、素直に『はい!』と答えるように変わった。それくらいから、コプロスさんが変わったと感じました」

やや過大な評価である気もしますが、私には小山社長が指導したことをとにかく必死で実行するしか、選択肢がなかったのです。

小山社長からは、さまざまなことを教えていただきましたが、ここでは2つご紹介します。

1つは、環境整備です。詳しくは、2章で解説をしますが、これは、整理、整頓、清潔、礼儀、規律を通して、「仕事をやり易くする『環境』を『整』えて増収増益に『備』える」、組織力を強化するための取り組みです。

環境整備では、整理を「最小限まで、要らない物、使わない物はとにかく捨てる」と定義していますが、当社ではこの考え方を、業務の改善だけでなく、財務状況の改善にも当てはめていきました。そして、必要のない建物や土地、機材等を売却したり、捨てたりしていきました。実際、数億円をかけて製造した機械が、1回も使われずに倉庫の中で眠っているケースもあったからです(現在では、3年間使っていない機械は基本的に整理することを決めています)。

その結果、固定資産税を減らすことができ、さらに、不要な建物や土地の売却で出た赤字は特別損失として計上。それによって節税ができ、現金の確保につながっていきました。

金融機関との付き合い方が変わり財務状況が劇的に改善

●信用を高め、長期、低金利、無保証の借り入れを実現

もう1つ、小山社長の指導によって変わったことは、金融機関と上手に交渉ができるようになったことです。

経営危機に陥っていた頃は、お金を貸してもらうことに必死で、交渉もなにもありませんでした。

資金繰りが厳しくなるたびに、もみ手スリスリの猫なで声で金融機関の担当者に融資をお願いしていました。そして、なんとかお金を借りることができても、それは、会社の運転資金として消えていくだけ。戦略的な借り入れではありませんでした。当然、条件は言われるがまま。根保証や根抵当がべったりついていました。

こうした金融機関との付き合い方が、180度変わりました。こちらへの信用を高めることに注力し、その上で対等な立場で交渉するという姿勢に転じたのです。

信用を高める第一歩は、「経営計画書」を作成し、その内容を「経営計画発表会」、さらには定期的な訪問で、金融機関の担当者の方々にお伝えすることでした(これものちほど解説します)。

もちろん、それまで借金の返済に四苦八苦していた会社ですから、経営計画書を1冊つくったところで、すぐに信用を回復できるわけではありません。

環境整備によって会社を変える努力を愚直に続け、同時に、経営計画書に基づく経営を続けていった結果、少しずつ信用していただけるようになったのです。環境整備による整理や節税等によって、会社の現金が増えていき、資金繰りが改善していくと、これまで短期が中心だった借入を、交渉の末、長期に変えることができました。その結果、これまで2・675〜3・3%だった金利を、0・61%〜1・05%にまで下げることができました。それによってさらに資金繰りが改善していきました。

最後は、担保や保証をいかにはずすかです。

経営者にとって、担保や個人保証をとられることは心理的に大きな負担です。一方で、金融機関としては融資先を信用できなければ、担保や保証をはずすことはありません。しかし、これは見方を変えると、この会社は信用できると思ってもらえれば、はずせるわけです。

そこで、前述の経営計画書、経営計画発表会、定期的な銀行訪問の3点セットによって、時間をかけて少しずつ、担保と保証をはずしていきました。

現在では借入のすべてが、長期、低金利、無担保です。一方、無保証については、保証をはずしたところが出てきました。他の金融機関とも交渉を続けていきます。

2020年度の当社の借入額は約40億円である一方、現預金は約21億円。キャッシュが潤沢にある状態です。小山社長から指導をいただいたおかげで、安定した財務状況に変わったことがおわかりいただけるでしょう。

採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり
宮﨑 薫
株式会社コプロス代表取締役社長
1958年、山口県下関市生まれ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部卒業。米国建機会社で働いた後、父が経営する株式会社共栄土建(1991年に株式会社コプロスに改称)に入る。1995年より現職。工学博士。
コプロスは、創業1946年の「メーカー型総合建設業」。地元・下関のシンボル「関門橋」の施工を手がけるなど、多彩な土木・建築事業に取り組む一方、積極的な技術・工法の開発と導入に取り組む。とりわけ特許工法である「ケコム工法」は、国内では公益社団法人日本推進技術協会「黒瀬賞」、海外では国際非開削技術協会「No-Dig Award」を受賞するなど、世界一の技術として高く評価されている。また、近年ではケコム工法を応用して、地中に廃棄物をメタン発酵させる槽を設置するバイオガスプラントを開発するなど、さらなる分野への挑戦を続けている。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます