社員のルールブックを兼ねた「経営計画書」の社内外へのすごい効果
(画像=everythingpossible/stock.adobe.com)

(本記事は、宮﨑 薫氏の著書『採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり』=あさ出版、2023年1月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「経営計画書」のすごい効果

●ルールの明文化で、社内外の対応がしやすくなる

2013年から経営計画書の作成をスタートして、現在(2022年)までに10冊をつくりました。そのなかで「会社が経営計画書を持つ」ことのメリットや効果などを年々、実感しています。

メリットの1つは、なんといっても金融機関からの信頼度がアップしたことです。5年先まで見越した長期計画を持つことを評価していただいています。

また、経営者としては、社員に対して「経営計画書に書いてある」の一言で、たいていのことが済んでしまうメリットもあります。

たとえば、63期(2017年度)から「飲酒運転は解雇」というルールを入れることにしました。

経営計画書にルールとして明文化しておけば、実際にそうした事例が発生した際に、当該社員に対して、「経営計画書に書いてあるのだから、解雇されても仕方がないよね」と言えます。私自身も、それがかわいがっていた社員であっても「ルールはルールだから」と腹をくくり、温情を捨てることができます。

一方、社員たちは、社外対応においてこうしたメリットを感じているそうです。たとえば、社外で無理難題を言われたときに、「当社の経営計画書に書いてありますので」という一言で対応できて、楽になったという声をよくもらいます。

●現場での事故が減った!

もう1つ、私自身、驚いているのが現場での事故が減少したことです。

土木や建設の現場では、数多くの危険な作業を伴うため、事故が起きるリスクはつねにつきまといます。

当社の場合、①転落・落下、②架空線、埋設物の切断、③現場内車両の移動時の衝突事故が、「3大事故」であり、これらが現場事故の9割を占めています。

会社にはこうした事故を徹底的に防ぐことが求められるわけですが、当社では、さまざまな仕組みを使って各現場で安全管理を徹底させるだけでなく、経営計画書にも「安全に関する方針」という項目を設けています。

そこには部門ごとに発生しやすい「多発重大事故」を列挙。さらにこれらの事故の予防対策や、事故が起きた際の処理順序・報告のルール、安全に関する社内活動、安全パトロールのルール、車両の駐車や運航のルールなどを記載しています。

記載はたった2ページで、内容もとてもシンプルなのですが、こうしたページをわざわざ設けた効果は大きかったようです。

経営計画書にこの項目を設けるようになって以降、なんと年々、現場での事故が減少しているのです。

事故が減った理由を私なりに分析すると、その1つとして、「言葉」にすることで、社員たちに強く意識づけできるからでしょう。

たとえば、社員たちは、経営計画書を見ることで、多発重大事故の内容を「文字」で認識します。

さらに、朝礼など事あるごとに、「うちで多発している重大事故は何?」という質問も繰り返しているので、多発重大事故について「音声」でも頭にインプットしていきます。

こんな具合に、多発する重大事故の内容に頻繁に触れていれば、頭の中にしっかりと刷り込まれていきます。

その結果、現場での仕事中も自然と、そうした事故を起こさないよう注意できるようになります。それが現場での事故減少につながっているのではないかと私は考えています。

●社員の声も反映しながら、経営計画書は毎年進化し続ける

経営計画書の作成は、基本的には経営者である私の仕事ですが、その内容に、社員の意見や提案、リクエストなどが反映されるようになってきています。

というのも、さまざまな場で社員たちから「なぜ、こういうルールがあるのですか?」「このルールは、こういう内容に変更したほうがよいのでは?」「こういうルールをつくってみては?」といった話が出てくるようになったからです。

これは、私にとって喜ばしい現象です。なぜなら、社員たちが経営計画書を真剣に読んでくれるようになった証拠だからです。

彼らから寄せられるそうした意見や提案などに耳を傾けることは、社員たちの現状やニーズ等を把握する絶好の機会になります。私のほうではそれらを1つの判断材料にして、経営計画書に新しい項目を追加したり、逆に削除したり、内容を変更したりしています。

採用、教育、環境づくりで利益2倍!会社が変わる人づくり
宮﨑 薫
株式会社コプロス代表取締役社長
1958年、山口県下関市生まれ。武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部卒業。米国建機会社で働いた後、父が経営する株式会社共栄土建(1991年に株式会社コプロスに改称)に入る。1995年より現職。工学博士。
コプロスは、創業1946年の「メーカー型総合建設業」。地元・下関のシンボル「関門橋」の施工を手がけるなど、多彩な土木・建築事業に取り組む一方、積極的な技術・工法の開発と導入に取り組む。とりわけ特許工法である「ケコム工法」は、国内では公益社団法人日本推進技術協会「黒瀬賞」、海外では国際非開削技術協会「No-Dig Award」を受賞するなど、世界一の技術として高く評価されている。また、近年ではケコム工法を応用して、地中に廃棄物をメタン発酵させる槽を設置するバイオガスプラントを開発するなど、さらなる分野への挑戦を続けている。

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