こうして社員は、やる気を失っていく
(画像=naka/stock.adobe.com)

(本記事は、松岡 保昌氏の著書『こうして社員は、やる気を失っていく』=日本実業出版社、2022年4月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

生産性の高い人材が流出する最大の原因は「やりがい」

仕事に取り組む「姿勢」でパフォーマンスは大きく変わる

新しい価値を生み出し、効率良く効果的に仕事を進める。そのような生産性の高い人は、先述したように当事者意識を持つなど仕事に対する「姿勢」が異なります。

たとえ、持っている能力が同じであったとしても、積極性や責任感、成果に対する執着心が異なれば、組織力、企業力には大きな差が出ます。

また、入社したときの能力評価が、そのまま仕事の成果につながらないケースもよくあることではないでしょうか。

活躍する新人と、そうでない新人との差は、元々の能力よりも、やっている仕事の目的を理解し、そのために自分がどう動けばいいかを自ら考え、コミットしようとする姿勢があるかどうかであったりするはずです。コミットとは、「コミットメント(commitment)」の略で、自らの言動に対して責任を持ち、覚悟を決めていることです。

このように、人のパフォーマンスは、持っている能力だけではなく、仕事に取り組む姿勢や、仕事内容への納得度などにより変わるのです。

人が「やりがい」を感じる瞬間

人は、どんなときに「やりがい」を感じるのでしょうか?

感じるタイミングは、人によってさまざまですが、たとえば次のような瞬間はその例です。

  • 自分が役に立てていると実感できたとき
  • お礼や感謝の言葉をもらったとき
  • 仕事の成果を認められたとき
  • 目標を達成したとき
  • 仕事をやり遂げたとき
  • 自分の成長を感じたとき
  • 興味のある仕事ができるとき
  • 仕事で社会に貢献する実感を持てたとき
  • 尊敬できる人と一緒に仕事ができるとき
  • 新しい仕事にチャレンジするとき
  • チームで仕事をするとき・裁量権があるとき
  • 影響範囲が大きい仕事を任されたとき

これらのことから言えるのは、人はお金などの目に見える報酬だけでなく、「見えない報酬」で突き動かされているということです。

「仕事の目的」は働く原動力となる

中でも、多くの人に共通する「やりがい」を2つ紹介します。

1つ目は「仕事の目的」です。

「仕事の目的」とは、その仕事の最終的なゴールです。今やっている仕事が1つのバトンだとすれば、そのバトンは、誰にわたり、どのような経路で、最終的に世の中とどのようにつながっているのかを実感できるということです。つまり、「社会的価値」の理解です。

わけもわからず畑に水を撒いている人よりも、自分が撒いた水で美味しい野菜が育ち、その野菜がレストランに運ばれ、一流のシェフの手にかかり美味しい料理になる。その料理が、食卓を彩り、それを食べる人たちが喜んでくれて幸せになる。このことを知っている人のほうが、たとえ同じ作業であったとしても、「やりがい」を感じるはずです。仕事のとらえ方ひとつで、仕事の価値は大きく変わり、仕事への取り組み姿勢まで変わるのです。

多くの企業が理念や、ミッション、ビジョンなどを重視するのも、そのような価値観の共有が重要だからです。社外へのメッセージだけではなく、社内に向けて「会社の社会的意味」「ここで働く意義」「大切にする価値観」などをしっかりと伝えることが、従業員の仕事への「やりがい」につながるのです。

逆に言えば、会社の価値観が個人の価値観と一致しないと、人は辞めていきます。また、理念やミッション、ビジョンの言葉がどんなに素晴らしくても、実態が伴っていなければ、大きな失望となり、辞めてしまう要因にもなりかねません。

あなたの会社では、「仕事の目的」がきちんと共有されていますか?

リーダーはメンバーに、このことを日々伝えているでしょうか?

人は、誰しも自分がやったことを認められたいもの

2つ目は「承認」「称賛」「尊敬」です。

誰しも、自分がした仕事が、周囲から認められ、ほめられるとうれしいものです。自分の確固たる居場所ができ、尊敬を集めると、さらにみんなの期待に応えたくなるものです。

あなたの会社には、感謝の言葉や気持ちを伝え合う文化はありますか?管理職は、部下が素晴らしい仕事をしてくれたとき、きちんとほめていますか?難易度の高い仕事や、急ぎの仕事をやり遂げてくれたとき、感謝の言葉を伝えていますか?

もしも多くの管理職が「仕事はやって当たり前」「給料をもらっているのだから、それぐらい当然」と考えているようなら、その組織や会社は危険です。メンバーのモチベーションは下がり続け、辞める人すら出るでしょう。

「社会的動物」と言われる人間にとって、周囲との関わりは、それぐらい大事なものなのです。

こうして社員は、やる気を失っていく
松岡 保昌
株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。1963年生まれ。1986年同志社大学経済学部卒業後、リクルートに入社。『就職ジャーナル』『works』の編集や組織人事コンサルタントとして活躍後、2000年にファーストリテイリングにて、執行役員人事総務部長として当時の急成長を人事戦略面から支える。
その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として逆風下での広報・宣伝の在り方を見直し新たな企業ブランドづくりに取り組む。2004年にソフトバンクに移り、ブランド戦略室長としてCIを実施。福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役として球団の立ち上げを行う。また、AFPBB News編集長として、インターネットでの新しいニュースコミュニティサイトを立ち上げる。
現在は、経営、人事、マーケティングのコンサルティング企業である株式会社モチベーションジャパンを創業。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士、キャリアカウンセリング協会認定スーパーバイザーとして、個人のキャリア支援や企業内キャリアコンサルタントの普及にも力を入れている。著書『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』(日本実業出版社)。

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