(本記事は、山口 拓朗氏の著書『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』=日本実業出版社、2022年5月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
文法不在コミュニケーションの恐怖
LINEをはじめとするチャット文化も、脳内ライブラリーの衰退を加速させる一因と言えるでしょう。
スタンプや絵文字に依存すれば、文章をしっかり書く機会が減ります。
また、相手と深いコミュニケーションを図ることも難しくなります。
もちろん、文脈や行間を含め、文章を読み解く能力も衰えていきます。
文法不在のコミュニケーションも増えています。
いくら親しい仲とはいえ、「ヤバい」「だるい」「うざい」などと、いきなり送られてきても、何のことだかわかりません。何がどうヤバいのか(「ヤバい」の真意も伝える)。
何がどう「だるい」のか。何がどう「うざい」のか。みずから伝えることを、放棄している状態です。
日常で伝える労力を惜しんでいる人が、いざ仕事や社会で、情報を正しく相手に伝えられるわけがありません。
あなたが誰かを指導する立場であれば、文法不在のコミュニケーションを黙認してはいけません。「あのー、これ」と部下が報告書を渡してきたなら、「これ?『これ』がどうした?」と言語化を促す必要があります。
本人の口から「清水さん、報告書を作成したので、今日中に目を通してもらえますか?」と、日本語文法を使って正しく話させるのです。
あなたが親なら「ママ、おやつ」と言われたときは、子どもの言語化能力を高めるチャンスです。物わかりよくササっと子どもにおやつを出してはいけません。
「おやつって何?」「おやつがどうしたの?」と確かめ、子どもの口で「お腹が空いたから、何かおやつを食べたい」と言わせる必要があります。
「どんなおやつが食べたいの?」と、さらに質問してもいいでしょう。
「うーん、スナック菓子じゃなくて、果物が食べたいなあ」
ここまで言語化させれば、その子の脳内ライブラリーは充実・活性化していくでしょう。
相手の理解力を高めたいなら、安易に言語化を手伝ってあげてはいけません。
相手の言葉がはっきりしないときや、相手が言語化を怠けているときには、(高圧的にならないよう気をつけながら)粘り強く言語化を促しましょう。
現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて、「1を聞いて10を知る理解力の育て方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「伝わる文章の書き方」などの実践的ノウハウを提供。 著書は『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(共に日本実業出版社)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)、『ファンが増える!文章術――「らしさ」を発信して人生を動かす』(廣済堂出版)ほか25冊以上。中国、台湾、韓国など海外でも15冊以上が翻訳されている。
文章術、伝え方のノウハウ書籍が多いが、本書で伝えている「情報を的確に理解するための技術」など、本質をとらえたノウハウも高く評価されている。
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