(本記事は、久本 和明氏の著書『僕たちはみんなで会社を経営することにした。』=クロスメディア・パブリッシング、2021年10月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
GTO やルーキーズが仲間づくりのヒント
『GTO』(講談社/藤沢とおる)という漫画をご存知でしょうか。
ある熱血教師の主人公が、鉄のように硬い心の壁を持つ不良少年や不良少女たちの中に入っていって、一緒に悪ふざけをしながら、学校の規則やルールよりも生徒の幸せを願って一人ひとりと向きあい、味方になってあげて(=無条件の受容)、一緒にトラブルを解決していく。そうした中で仲間がひとり増え、そしてまたひとりが仲間になっていく、というストーリーです。
このストーリーから学べる重要なポイントは、会社のルールや規則ですらも変えていく覚悟を持つことや、言ったことを守ることが大事だということです。約束したことは絶対に、やり遂げてください。やり遂げなければ、マイナスの信頼貯金になっていきます。
私も、チームのメンバーとうまくいかない、労働条件に文句がある、会社の敷地内で事故をした、新しいプロジェクトを立ち上げたい、パワハラにあった、プロジェクトがうまく進まない……などなど、様々なトラブルやクレームに見舞われましたが、一番多かったのは人間関係やチーム間のトラブルでした。
ですが、何百回と向きあううちに、喜んで向きあえるようになっていきました(笑)。はじめは、「マジかあ……」という泣きそうな心を持ちながらも、なんとか顔だけはキリっとさせて、「俺に任せろ」という態度でいたのですが、何度も何度もやっていくうちに、「きたぞ、きたぞ~‼︎」と、解決するのがどんどん楽しくなっていきました。
解決策のわからない人にまつわる問題は、ファシリテーションの技術やチームビルディングの構造がわかればスルスルとほどけていくことがほとんどで、大抵のことはメンバーと議論することで解決していきました。そして、一つ解決できると自分の中で自信にもなり、無理難題でも「なんとかなるだろう」という感覚が生まれ、器が大きくなっていったような気がします。
根性論はあまり好きではないのですが、それでも成長するためには失敗にめげない心を、無理難題やトラブルの修羅場をくぐりぬけながら鍛えていく必要があると思います。そうすると、無条件の受容ができる器もどんどん大きくなっていきます。
感情的にならない。否定的にならない。受け入れる。何が起きても、いつでもそうしたところからスタートできるようになります。
悩んだら「対話」。トラブルが起きたら「対話」。すべては「対話」でしか解決しない
チームビルディングの法則で言えば、「奥さんには、もっとこうしてほしいと思っている」「旦那さんには、もっとこうしてほしいと思っている」とグチを友人に言ったところで、何も解決しません。「常識で考えたらこうじゃん」「普通こうでしょ」と言ったところで、何も変わりません。
周りに話すこと自体が悪いということではなく、願っただけでは相手には伝わらないよ、ということなのです。100人いれば100通りの価値観があって、自分とまったく同じ考えを持っている人だって1万人に1人いるかいないかです。それくらい多種多様なのが人間というものだと思うんですね。
そんな中で、たまたま結婚した相手と同じ考え方を持っている、持っているはず、なんで持っていないの、と苦悩する必要は、本当はないはずなんです。また結婚の大半は、本能や直感で選んでいるはずですが、そうやって選ぶのは種の保存の関係で、自分とまったく違う強みをもった相手なのだそうです。その方が、多種多様な遺伝子ができ、生き残る確率が高いから、というわけですね。兄弟でさえも種の保存の原理から、性格や性質が違う兄弟が生まれるようになっていると言います。そんなふうに、種の保存の原理でどんどん多様な性質を持った人が生まれてきているのです。そんな相手に、自分と同じものを持っているはずだと期待するのは、愚の骨頂ですよね。
と言いつつも、私も子供が生まれた頃、妻と何度も喧嘩していました。週1で喧嘩をしていたと思います。ですが、ちょうどその時に学んでいたチームビルディングに助けられました。なぜなら、私も妻に対して同じ価値観や考え方を強要していたからです。「なんで理解してくれないんだ」「なんでそうなるんだ」といったように、相手の考えがまったく理解できず、小さなことで口喧嘩になり、「離婚する‼︎」と何度叫んだことか(笑)。その喧嘩を話しあいで乗り越え、日々、会話をすることで相手の性質や性格をお互いに理解しあえるようになり、次第に喧嘩はほとんどなくなっていきました。ですから、話しあいをしないにもかかわらず喧嘩をしないという家族やチームは逆に異常で、本音を語りあうのを諦めていたり、「建て前家族」になっていたりするんだろうな、と思うようになりました。
さて、これと同じことがチームでも起こります。会社はもちろん、ママ友の間で、地域集団の中で、趣味のコミュニティの中で、人が集うところなら、どこでもです。すべて同じ法則です。本音を言うのはツラいしキツいけど、勇気を持ってぶつかれる環境をつくり、ぶつかりあうことでしか解決しません。いいチームは必ずぶつかりあっているものです。
私だって、喧嘩は苦手です。日本人の大半は苦手なんじゃないかと思います。でも、ここは勇気と覚悟、そして忍耐と愛を持って取り組むしかありません。これは、対話でしか解決できない。背中で伝える、空気で伝えるような超魔術は、99%成功しません(笑)。
悩んだら、「対話」をしましょう。そして「対話をしましょう」ということを相手に伝えましょう。ほとんど多くの解決しないトラブルにおいては、この「伝えること自体」をしていません。伝えるという一歩を踏み出した段階で、組織やチームの課題はほぼ90%解決するといっても過言ではありません。
あなたが今抱えている組織の課題はなんですか?
そのことについて伝えようと試みていますか?
1984年、兵庫県生まれ。明治大学在学中にベンチャー企業にてインターンを経験。大学を中退して独立後、2007年、23歳の時に株式会社ワンピースを創業。 「人々の毎日に、幸せや歓びや感動の溢れる世界をつくる。」というコンセプトのもと、経営者も従業員も、分け隔てなくみんなが幸せに働ける組織の在り方を追求。ティール組織、アメーバ経営、フロー理論、老子、日本文化、チームビルディング、ファシリテーション、コンセプトデザイン理論などを研究、実践。 7年間の挑戦を経て、指示・命令・管理・評価がないにもかかわらず、社員が自分で考え、決め、行動するワンピース流の経営手法を確立。 また、社会全体の幸せを目指したプロジェクトも複数運営している。
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