(本記事は、久本 和明氏の著書『僕たちはみんなで会社を経営することにした。』=クロスメディア・パブリッシング、2021年10月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
共創価値の法則
私が、師匠であり友だと思っている仲山進也さんの『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか 13のコラボ事例に学ぶ「共創価値のつくり方」』(宣伝会議)という本があります。チームビルディングの話の本も面白いのですが、この本には、お店づくりやブランドづくりにおける消耗戦から抜け出す方法が書かれています。また、その方法はお客様やファンのみんなまでもチームメンバーと考えることで、メンバー全員で楽しんだり、遊びながら価値を生み出す方法なども記されています。ブランドを自分でつくって育てていくという活動をしていた自分にとっては、これは目から鱗の話でした。
そして、5年前からスマホのトップページに表示している言葉があります。
共創価値の法則
その1
好きのこもった、深く、濃いコンテンツを、常軌を逸して発信し続けろ。熱は伝わる。
その2
共創=共有された理念やビジョンのもと、自分の強みと他人の強みを掛け合わせて価値を生み出すこと。
その3
魅力伝達度=コミュニケーション量の2乗
これは、お客様やブランドづくりの言葉だけではなく、実はチームづくりや組織づくり、会社経営にこそ生かせる言葉だと思いました。周りに仲間がいない。協力者がいない。そうした孤独を感じているのなら、尚のこと化石燃料的なお金や目に見える利益でつながるだけの関係ではなく、共感を軸に「仲間」をつくり、共感を軸に「お客様」とつながり、共感を軸に「関係者」を集めることが大切な時代に入ったのではないでしょうか。
SNSやYouTubeも共感の時代だからこそ生まれた産物。自分らしさという多様性を望みながらも、同じ価値観を求めている人が世の中にたくさんいるということが証明されたとも言えます。個人の好きがこもったコンテンツが共感を生み、数万人ものフォロワーを集める世界が生まれました。化石燃料で無理やり集めてきたエネルギーに匹敵するくらい、いや、それを超えるくらいインターネットという空気の中では、いろんな風が生まれています。
ユーチューバーにしても、Twitter、投げ銭系SNS、TikTok、Instagramにしても、それぞれに深く濃いコンテンツを、好きで楽しいからという理由だけで発信し続けた人にファンが集まっています。さらにその集まったファンの人たちが勝手につながって、共創が生まれ、価値の渦を生み出しています。こうした現象のすべての源は、人の中にある、「好き」という感情です。まさにフローが5段階くらい行きついた先にあるような、好きすぎて楽しすぎる状態ですね。こうした考えを自分に当てはめて考えてみると、私はファッションが好きということより、商売が好きということよりも、何より人々が幸せに溢れる社会をつくりたい!そう強く願っているのだと分かりました。そして、その好き度が他の感情よりも100倍強いことに、1年もの間、自問自答して気づきました。だからこの本を書いている、ということもあるのですが、その興味=フローが高じて、幸せに関するいろんな本を何百回も読んで、共感したことをメンバーに語り始めました。
はじめは、誰も興味がなく、すごく寂しい思いを続けていたのですが、その想いをベースにした新卒採用や中途採用や地域採用を進めたところ、来てくれた数名の人たちが私をフォローしてくれました。まさにSNSで言えば最初のフォロワーが集まった状態です。私の熱くて、むさくるしい話を聞いてくれるメンバーが集まったことで、気持ちが奮い立ちました。その数名で話をすることで、さらにその周りの数人も集まり始めました。
ちなみに、売上や商売や利益の話では一切フォロワーは集まりませんでした……(笑)。この本に書いてあるような、フローの話や子育てとフロー教育の話、女性にとっても働き甲斐のある会社をつくりたいんだ、という話に共感してフォロワーが集まったのです。
「裸の男」というキーワードでYouTubeを検索すると出てくるのですが、あるフェスでおバカをしている裸の男が1人で踊り続けていると、その男のフォロワーが2人現れます。しばらくするとさらに2人加わって、次第に臨界点を超えていくと、周りの100人くらいの人たちが踊りに加わるようになります。
ここで起きた現象はまさに、社会活動や何らかのムーブメントが起こる時の現象と同じで、さらにはP213の「共創価値の法則」その1〜3にも当てはまります。そしてそれは私が社内でやったことと同じだな、と思ったのです。まず1年かけて、「自分の好き」が何かを見つけ、その次に「好きのこもったコンテンツを発信」して、キャンプファイヤーのように、まずは乾いた木、燃えやすい木、つまり第1のフォロワーを見つけました。共感してくれたメンバーと一緒にスタバで語りあったり、勉強会ということで30分語りあう場を社内でつくったり、グランピング施設に連れていって数名で語りあう場をつくったりしました。決して、最初から全員に響かなくていいんです。万人に受けなくてもいいんです。次第に、1人がまた1人を連れてきてくれて、その連鎖の先に、社内で言えばメンバーの10%を超えるくらいの人数が集まったタイミングでティッピングポイント(ある物事が一定の閾値を超えた瞬間、一気に変化する際の臨界点やきっかけのこと)が発生しました。なんだか、そっち側に参加しないと変な感じになるような空気が生まれるんです……(笑)。
とは言っても、ワンピースの全メンバーが強烈に私の想いに共感しているというわけではないですし、最初のフォロワーと同じような語りあいが全員とできるわけではありません。でも、少なくともティッピングポイントを超えたことで、ワンピースの文化やカルチャーの共通の土台ができたのです。そして逆に、このカルチャーに合わない人は少しずつ、自然にお別れしたり、辞めていくことになりました。
あなたの強烈な「好き」は何ですか?
あなたの「最初のフォロワー」は誰でしたか?
1984年、兵庫県生まれ。明治大学在学中にベンチャー企業にてインターンを経験。大学を中退して独立後、2007年、23歳の時に株式会社ワンピースを創業。 「人々の毎日に、幸せや歓びや感動の溢れる世界をつくる。」というコンセプトのもと、経営者も従業員も、分け隔てなくみんなが幸せに働ける組織の在り方を追求。ティール組織、アメーバ経営、フロー理論、老子、日本文化、チームビルディング、ファシリテーション、コンセプトデザイン理論などを研究、実践。 7年間の挑戦を経て、指示・命令・管理・評価がないにもかかわらず、社員が自分で考え、決め、行動するワンピース流の経営手法を確立。 また、社会全体の幸せを目指したプロジェクトも複数運営している。
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