未来をつくるグロースマーケティング
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(本記事は、櫻庭 誠司氏の著書『未来をつくるグロースマーケティング』=クロスメディア・パブリッシング、2022年10月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

中小企業の経営者の多くが知らない、管理会計の力

バリューチェーン全体にわたり改革を促すグロースマーケティングにおいては、会計で使用するデータもまた、データドリブンの材料となります。

会計といえば、税金計算を目的として行う税務会計を思い浮かべるかもしれません。税務会計で算出した数字を、そのまま経営の指標とする人もいるでしょう。

しかし、税金を対象とした会計で、バリューチェーン全体の予算管理を行うというのは無理があります。

そこで採用したいのが、企業が自社の経営状態を把握するために行う、管理会計です。

管理会計は、企業の〝今〞を映し出すきわめて有用な手法であり、算出される数字はグロースマーケティングにも大いに活用できます。本来であれば、すべての企業が管理会計を行うべきであると私は考えていますが、ほとんどの中小企業では実施されていません。

管理会計はあくまで社内向けのものであり、基本的に外に出すことはありませんから、企業ごとに必要な要素を自由に設定できますが、主に次のような項目について算出していきます。

管理会計の手法や重視したい項目も会社により様々ですが、グロースマーケティングでは達成すべき利益に直結する項目と、そのために必要な資金、そしてPLやBSなど全体の業績を管理します。

全ての項目について予算を策定し、日次、週次、月次など適切なタイミングで実績を集計し、予算と比較することで進捗状況の確認や改善事項の把握を行っていきます。

【利益(原価)管理】
利益を確認するだけであれば業績管理に含まれますが、ここでは利益に直結する項目として主に原価を管理します。

ここでいう原価とは製品の製造コストではなく、自社が販売・提供する商品・サービスに直接関係するコスト全体をさします。

顧客への販売価格が変わらなければ、原価の増減がそのまま利益の増減に反映されるので極めて重要です。

原材料に加え、設備費や人件費なども含めた正確な原価を算出することで、本当の損益分岐点がはじめて把握できます。

【資金管理】
いくら利益が出ても手元の資金がなければ会社は維持できません。黒字倒産という言葉もありますが、資金は日次単位で把握しないといけません。

月次だと資金の収支がプラスになる予定でも入金日よりも支払日が先に来た場合、その時点で支払不能になってしまうからです。

具体的には日々の入出金の予定を立て、不足があれば先に調達するなど、事業に必要な資金需要を予測し対策を練ります。

【業績管理】
会社全体の業績を分析します。一般的な指標ですが、収益性や限界利益率、資産や負債の内容などチェックすべき項目は多岐にわたります。

また、数年分を並べて先に述べた項目の推移や成長率をチェックすることも重要です。

【予算実績管理】
ここで述べた原価、資金、業績など会社を経営していくのに必要となる資源を把握し、それに応じた予算を立て、中長期で管理していきます。目標となる予算に対し、一定期間ごとに実績と比較することで、計画の推進状況の確認や、不採算部門の改善といった手が打てます。

このような項目を算出することで、その時々の経営状況をデータとして落とし込んでいくというのが、管理会計の役割です。

管理会計を部署ごとに実施すれば、部署としての目標が明確になり、業績の管理や評価がしやすくなります。経営においても、どの部門が利益を出しているか、伸び悩んでいるのはどこかといった状況が明確になりますし、売上や経費、粗利といった数字が把握でき、事業戦略を立てるうえでの重要なデータともなります。また、原価管理によって原料費や人件費といったコストがわかり、その削減に着手することも可能です。

このように、管理会計が経営にもたらすメリットは数多くあり、グロースマーケティングの指標としても大いに活用できるものです。

未来をつくるグロースマーケティング
著者:櫻庭 誠司
株式会社ソルブレイン 代表取締役。2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。当初はマーケティングの一部分に特化したサービスを提供していたが、時代の変化とともに価値提供の形を柔軟に変えながら一貫して企業のマーケティングの課題解決を手がけてきた。2014年よりグロースマーケティング事業を立ち上げ、企業の持続的な成長の実現に取り組む。

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