未来をつくるグロースマーケティング
(画像=weedezign/stock.adobe.com)

(本記事は、櫻庭 誠司氏の著書『未来をつくるグロースマーケティング』=クロスメディア・パブリッシング、2022年10月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

グロースを実現するための3つのフェーズ

実際のグロースマーケティングの流れに関しては、大きく分けて次の3つのフェーズがあります。

1・目的の明確化
2・データ化とデータ連携
3・ボトルネックの解消

それぞれ詳しく見ていきましょう。

フェーズ① : 目的の明確化

最初に考えるべきは、事業の目的です。

なにを実現するために、成長を目指すのか。その目的を明確化します。

グロースマーケティングは、その企業のミッションやビジョン、すなわち存在理由を核として行わねばなりません。あくまでミッションやビジョンにのっとったうえで利益を上げるというのが前提であり、目的もまたその範疇で定められるべきものです。

増益を目指すにあたり、どれくらいの成長を目指すのかという具体的な指標も決めますが、一方で経営者が何を大切にしたいのか、価値観のすり合わせも非常に大切です。

そして、目的(企業のミッション・ビジョン)が明確化したら、その目的を達成するための目標を設定します。目標設定の仕方はさまざまありますが、過去の実績や市場動向といったデータに基づいて、客観的に判断するというのが一つのポイントといえます。

それを踏まえたうえで、努力目標と必達目標の二つを作るようにしています。

データに基づいてある程度計算したものは、思いつく要素から数字を抽出しているので達成可能性が高いです。

これを必達目標とします。

努力目標は自分がなりたい未来を想像しながら描きます。根性論になってしまいますが、なりたい姿を実現するために、新たな発想を取り入れチャレンジしていく姿勢はいつまでも持ち続けるべき、と考えているからです。

こうして目的がはっきりすると、それに向けてやるべきことの優先順位もおのずと明らかになり、改革に着手しやすくなります。

フェーズ② : データ化とデータ連携

目的が定まったら、データ化とデータ連携を始めます。

多くの場合、最初に行うのが決算書を含む過去の実績の分析です。売上や販売数、在庫量など、そこに記載されているデータはすでに定量化されているものですから、データドリブンの指標として活用できます。

このデータのうち最重要な指標となるのが、利益です。

たとえば売上がいくら伸びていようと、利益が落ちているなら事業が成長しているとはいえません。

売上なら「販売単価×顧客数×顧客あたりの購入数量」、さらに販売単価は「原材料費+広告宣伝費+その他の経費+一つあたりの利益」、顧客数なら「新規顧客+既存顧客」といったように因数分解し、それらの要素が利益とどのような関係性にあるか、利益を阻害する要因はどこにありそうかといった点を分析していきます。

なお、プロジェクトがスタートする場合、クライアントのビジネスモデルや商慣習に対して、クライアントと同レベル以上まで理解することを徹底しています。基本的なビジネスの仕組み、歩留まりや製造コスト、価格の業界平均といったデータをあらかじめ頭に入れておくと、どこにボトルネックが潜んでいるかという判断がしやすくなるからです。

こうして多角的に集めたデータは、現状把握、ボトルネックの発見、対策の実施といった、経営者の意思決定の材料にも活用することができます。

データ化とデータ連携は当然、一度やって終わりではなく、常にバリューチェーン全体にわたって最新データを収集し、リアルタイムで施策に反映していく必要があります。

バリューチェーンを構成する要素の中には、そのままでは数字で表せず、データ化が難しいものがいくつもあります。従業員のホスピタリティや顧客との信頼関係などはその最たるものでしょう。そうした要素についても可能な限り定量化することが、グロースマーケティングでは求められます。

そこでスコアリングによって定量化を行います。

たとえばコールセンターのサービスレベルはそのままでは定量化しづらいですが、顧客に対しオペレーターの対応を10段階で評価してもらい、それをスコアとして管理することでデータとして加工しやすくなります。

なお、スコアリングをする際にはそれなりのサンプル数がないと、正確な評価をするのが難しくなります。エリアや時間帯に偏りをもたせず、できるだけ均等にサンプルを集めていくといいと思います。

フェーズ③ : ボトルネックの解消

こうしてデータを集め、分析していくと、バリューチェーンにおける課題が浮かび上がってくるはずです。そのボトルネックに対し、目的に応じた優先順位をつけたうえ、対策を講じていきます。

なお、この段階で見つかったボトルネックを解消したらグロースマーケティングは終わりかというと、そうではありません。

ボトルネックは、一つ解消すると別の領域に新たに立ち現れてくるというように、移動するものなのです。

たとえば、当社がサポートした、あるライフサービス企業の場合、最初のボトルネックは集客でした。分析の結果、顧客対応のチャネルが少ないとわかったため、コールセンターを設置して、電話でも注文を受けることができる体制を整えました。

未来をつくるグロースマーケティング
(画像=『未来をつくるグロースマーケティング』より)

これにより間口が広がり、問い合わせが増え、集客において満足できる結果が出ました。

しかしその後すぐ、コールセンターのキャパシティ以上の電話が入るようになり、こなしきれなくなりました。ボトルネックが移動したのです。それに対し、オペレーターの拡充や自動対応システムの導入といった対策を講じました。

すると今度は、オペレーターの習熟度にばらつきがあることがわかってきて、ボトムアップのための教育が必要になりました。その教育の成果が出て、オペレーターの平均成約率が上がると、製品の注文量がぐっと増え、これまでの生産体制では間に合わなくなりました。そこで新たに工場を造り……とこのように、ボトルネックはバリューチェーンをまたいで移動していきます。それを追いかけ、できる限り早く潰していくことで、バリューチェーン全体が洗練され、持続的に成長する仕組みへと変化していきます。

以上がフェーズごとの説明になりますが、実際は1〜3と綺麗に進んでいくことは滅多にありません。事業はその間もリアルタイムで進んでいるからです。特に2〜3のフェーズは荒削りでもいいので、まずは決めて、走りながらブラッシュアップしていきます。

未来をつくるグロースマーケティング
著者:櫻庭 誠司
株式会社ソルブレイン 代表取締役。2008年に仙台で株式会社ソルブレインを創業。当初はマーケティングの一部分に特化したサービスを提供していたが、時代の変化とともに価値提供の形を柔軟に変えながら一貫して企業のマーケティングの課題解決を手がけてきた。2014年よりグロースマーケティング事業を立ち上げ、企業の持続的な成長の実現に取り組む。

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