矢野経済研究所
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国内アパレル業界のデジタルファッションへの参入状況と課題に関する法人アンケート調査を実施(2022年)

メタバースやデジタルファッションに注目するも、参入済み企業はごく一部

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は国内アパレル産業において、世界的に注目されているデジタルファッション※に関連し、メタバース(オンライン上での仮想空間)やNFT※ビジネスへの参入状況、課題などについて法人アンケート調査を実施した。ここでは、その分析結果の一部を公表する。

メタバースやNFTビジネスにおける魅力的な要素(複数回答)

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メタバースやNFTビジネスへの参入状況(単数回答)

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1.調査結果概要

本調査では国内アパレル産業において、世界的に注目されているデジタルファッション※に関連し、メタバース(オンライン上での仮想空間)やNFT※ビジネスへの参入状況、課題などについて、2022年6月に国内主要アパレルメーカー、小売業、卸・商社63社に対し、法人アンケート調査を実施した。

メタバースやNFTビジネスにおける魅力的な要素(複数回答)について、「国境がなくグローバルなマーケットであること」(31.7%)、「デジタルファッション自体の市場成長の将来に期待がもてる」(30.2%)など積極的な回答が多い一方で、「3Dソフトで企画・デザインした製品をフィジカル、デジタル双方のファッションに活かせる」(17.5%)という3D CAD(3Dモデリングソフトなど)の導入のメリットに関する回答もあるが、「一時的なブームであり魅力は感じない」(20.6%)という消極的な回答も一定数ある。

国内の主要なアパレル関連企業のメタバースやNFTビジネスへの参入状況(単数回答)について、「参入済みである」はわずかに3.2%、「参入を検討している」は15.9%で2割弱、「検討をしていない」(61.9%)が6割以上の多数を占めた。

本調査結果から、メタバースやNFTビジネスなどデジタルファッションに対する魅力を感じてはいるが、参入している企業はわずかであり、参入を検討していない企業が6割強を占めるのが現状といえる。

※デジタルファッションとはメタバース上でアバターに着用させる仮想衣類等をさし、実際に着用するフィジカルファッションの対義語である。
※NFTとはNon-Fungible Tokenの略語で、ブロックチェーン上に記録された代替不可能なデジタル資産の所有権をさす。現在はゲームのキャラクターやスポーツ選手などのデジタルトレーディングカード、デジタルアートなど、コンテンツ分野での活用が目立つ。

2.注目トピック

世界中で話題のメタバース上でアバターに着用させるデジタルファッション登場の背景

アパレル産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は他産業に比べ遅れているといわれる。これは同産業が複雑な分業体制になっていることと関係しており、企画・デザイン(起点)から販売(終点)までデータで一元管理することが困難になっているためである。

アパレル産業は需要予測に基づく大量生産、大量消費のビジネスモデルを踏襲してきたことで、大量の売れ残りを生じさせ、大量に廃棄・焼却を余儀なくされ、昨今のサステナビリティ(環境負荷軽減を主目的とする取組み)とは正反対である現状が指摘されている。

世界的なサステナビリティの潮流にあるなか、アパレル産業におけるDXの取組みは生産リードタイムの短縮により需要予測の精度を上げることで、不良在庫軽減が期待されている。つまりDXとサステナビリティの取組みは直結している。

アパレル産業ではこれまで、完成した後の製品管理(在庫管理)や販売面のデジタル化(販売管理、販促、マーケティング)は進んでいたが、アパレル製品の企画・デザイン段階でのデジタル化が遅れていた。しかし最近では3D CAD(3Dモデリングソフトなど)を導入するアパレル関連企業が増え、サンプル作製の削減、リードタイムの短縮と従来のフィジカル製品(実在する衣類等)の業務改善が進んできた。この企画・デザインにおける3Dデータ化は従来のフィジカル製品の業務改善だけでなく、デジタルファッションへの転用が可能である。これにより、市場環境の厳しいアパレル関連企業やデザイナーにとっては”二毛作”※が実現でき、新たな収益源となる可能性として期待されている。

デジタルファッションはメタバース上のデジタルデータであることから、グローバルな顧客に接することができる点が特徴で、従来のフィジカル製品での海外展開よりもはるかに低コストで海外の顧客に接することができる。メタバースの世界的な盛り上がりとともに、デジタルファッションに対する期待と注目がアパレル産業界内外で集まっている。

※ここでいう二毛作とは3Dモデリングソフトを導入することで従来のフィジカル製品(実在する衣類等)のみならず、デジタルファッション(アバターに着用させる仮想衣類等)としても販売できようになるという意味である。

調査要綱

1.調査期間: 2022年6月
2.調査対象: 国内主要アパレルメーカー、小売業、卸・商社63社
3.調査方法: 郵送アンケート調査
<国内アパレル業界のデジタルファッションへの参入状況と課題に関する法人アンケート調査とは>
本調査では国内アパレル産業において、世界的に注目されているデジタルファッション(メタバース上でアバターに着用させる仮想衣類等)に関連し、メタバース(オンライン上での仮想空間)やNFT(Non-Fungible Token;ブロックチェーン上に記録された代替不可能なデジタル資産の所有権)ビジネスへの参入状況、課題などについて、2022年6月に国内主要アパレルメーカー、小売業、卸・商社63社に法人アンケート調査を実施した。

出典資料について

資料名2022 ファッション産業の新潮流 - デジタルファッションとサステナブル新動向
発刊日2022年07月27日
体裁A4 202ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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