7月5日、当社「カーボンニュートラルビジネス研究所」(伊藤 愛子所長)は「気候変動と食と地域」をテーマに「ココラデ・プロジェクト」と題したワークショップを長野県茅野市にて開催した。「ココラデ」とは「出来る限りここらへん(ココラ)にある資源で(デ)、環境負荷の少ない暮らしを実現したい!」との意、持続可能な社会の実現に向けての実験プロジェクトである。参加者は9名、決して満員御礼とは言えないが地元の大学教授、大手企業の元CSR担当マネージャー、エネルギーの地産地消に取り組むグループのリーダー、「子ども達により良い未来を」と考える若いお母さんなど、地域経済、環境、食の問題を真剣に考える人が集まった。
ワークショップでは原村の「やじぺんキッチン」が手作り弁当を提供、地元食材に関する解説から環境負荷の小さい調理法やフードロスの問題まで、楽しく、真剣な意見交換がなされた。プロジェクトは、引き続き八ヶ岳山麗をベースに地域経済や環境問題の専門家、生産者、関連事業者、市民を巻き込んで展開してゆく計画である。文字通りの小さな一歩ではあるが、小さい単位としていかに社会活動を機能させるかが地域経済循環モデルの要諦でもある。小さい単位のネットワーク、地域の価値の連鎖が新たな社会基盤となるような挑戦に期待したい。
さて、上記ワークショップ開催の前日、お隣の山梨県、南アルプス市は中部横断自動車道の南アルプスインターチェンジ付近の整備用地にコストコホールセールジャパンが進出すると発表した。出店時期は2024年、店舗面積1万5000㎡、850台分の駐車場を擁する「コストコ南アルプス倉庫店」(仮称)の想定商圏は、県内はもとより長野県、静岡県におよぶ。世界で800店を越える会員制倉庫型チェーンを展開するコストコはグローバル化と効率追求型店舗の象徴であり、雇用創出や広域集客力に対する地元の期待は大きい。当然、八ヶ岳山麗エリアもターゲットだ。
事業のスケールにおいて地産地消型の小さな経済単位など敵ではあるまい。しかし、競争要件は規模と効率性だけでない。社会の持続可能性が問われる中、寡占、集中、画一化のリスクは高まる。「パパラギは行く先々で大いなる心がつくったものを壊してしまう。だから物をたくさんつくる。たくさんの物がなければ暮らしてゆけないのは貧しいからだ」、“パパラギ” とは白人、“大いなる心がつくったもの” は地球環境だ。これは1920年、ドイツの芸術家エーリッヒ・ショイルマンが “はじめて欧州文明を見たサモアの酋長” の名を借りて書いた一節である(「パパラギ」、岡崎 照男訳、立風書房より)。原書の初版から1世紀、今、未来の問い直しが始まりつつある。
今週の“ひらめき”視点 7.3 – 7.7
代表取締役社長 水越 孝