2021年の呉服小売市場規模は前年比109.6%の2,110億円
2020年の大幅減(前年比26.1%減)から、2021年は前年比9.6%増とプラスに転じる
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内呉服(きもの)市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
呉服小売市場規模推移
販売チャネル別呉服小売市場構成比
1.市場概況
2021年の呉服小売市場規模は前年比109.6%の2,110億円と推計した。2020年では前年比73.9%の1,925億円と大幅なマイナスとなったが、2021年では前年比9.6%増とプラスへ転じた。
2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、全般的に社会経済活動が停滞したなか、入学式や卒業式、結婚式、成人式など、人生の節目のイベントが自粛になったことで、きものを着用する機会がかつてないほど制限され、呉服市場は厳しい状況にあった。
また、呉服市場は長年縮小トレンドにあるなか、大手小売企業をはじめ各企業はきものの販売以外にも、顧客を囲い込むイベントやきものを日常的に着用できるようなカジュアル化を提案するなど、独自サービスを開発してきたが、2020年はこうした企業努力の機会を十分に与えられない状況であった。
2021年はコロナワクチン接種が進んだこともあり、2020年にほぼ中止や延期されていた催事やイベントの集客数が緩和されたことから、きもの需要も徐々に回復した。
2.注目トピック
紙媒体からデジタル化(電子化)へ
呉服業界は顧客へのDM(ダイレクトメール)など紙媒体を使った販売促進活動が主流であったが、2022年4月からの改正個人情報保護法が施行され、より個人の権利が保護されるなか、こうした活動に影響がでるものとみる。
またIT化の流れのなか、呉服業界においても今後は紙媒体からSNSなどのインターネットをより活用した販促が想定され、デジタル化(電子化)への移行がますます進んでいくものとみる。こうしたなか、デジタル化への変化に柔軟に対応できるかが重要であり、こうした点において競合他社との差別化が生じる可能性はあるものとみる。
3.将来展望
2022年の呉服小売市場規模は前年比104.7%の2,210億円を予測する。
2022年の呉服小売市場は、2020年のような急激な落ち込みはないと推察するが、新型コロナウイルスの感染状況によっては回復度合いに変化が生じる可能性も十分あり得るものと考える。コロナ禍で呉服市場は厳しい状況が続くとみるが、イベントや催事の開催の増加に伴い、きものを着用する機会が増えることが期待される。2019年の市場規模の水準には現状では及ばないものの、数年かけて近づいていくものと考える。
調査要綱
1.調査期間: 2021年12月~2022年3月 2.調査対象: 呉服関連メーカー、呉服関連卸売業、呉服関連小売業等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<呉服市場とは> 本調査における呉服市場には、正絹のきもの、紬類のきもの、帯類、リサイクルきものの他、和装小物、浴衣(ゆかた)、合繊素材のきもの等を含む。市場規模は小売金額にて算出し、きものレンタルは含まない。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 正絹のきもの、紬類のきもの、帯類、リサイクルきものの他、和装小物、ゆかた、合繊素材のきもの等 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 きもの産業年鑑 |
発刊日 | 2022年03月28日 |
体裁 | A4 511ページ |
価格(税込) | 143,000円 (本体価格 130,000円) |
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