すでに2022年が始まって早3ヶ月。もうすぐ今年度も終わりにさしかかり、新たな門出を迎える人も多いかもしれない。
THE OWNERでは今年度にヒットした記事を振り返る特集を企画。今年度話題を呼んだ「楽天」の動向について振り返る記事をピックアップした。2021年7月〜9月期にはモバイル事業で3,000億円の赤字を計上し、資金繰りも必要な状況になりつつある。
楽天グループ全体の収益性向上を進め、楽天銀行のIPOによる資金調達も検討している。いつになったら楽天は黒字化できるのだろうか。
1. 楽天1,140億円の大赤字 元凶「モバイル」はどうなる?
(2021/07/04 配信)
EC(電子商取引)事業、証券事業、保険事業など、幅広く事業を展開する楽天が、2期連続の赤字を計上した。多くの事業でユーザーを多数集めており、業績は好調に見えるが、なぜなのか。結論から言えば、モバイル部門が足を引っ張っている。その実態に迫る。
楽天が2期連続の赤字を計上
まず楽天の2020年12月期の連結業績(2020年1〜12月)を見ていこう。
売上収益は前期比15.2%増の1兆4,555億3,800万円と堅調に伸ばしたが、最終損益の赤字額は前期の318億8,800万円からさらに拡大し、1,141億9,900万円に達している。売上が伸びているのに、赤字額は増えているわけだ。
セグメント別の売上収益と営業利益を見ていくと、どのセグメントに問題があるのかが一目瞭然だ。以下が楽天の2020年12月期のセグメント別の売上収益と営業利益となっている。
<2020年12月期のセグメント別の業績>
インターネットセグメントとフィンテックセグメントはともに営業利益は黒字となっているが、モバイルセグメントで2,270億円の営業赤字を計上している。冒頭で触れた通り、モバイル事業が赤字の元凶なのだ。
なお、モバイル事業の四半期ごとの営業損失は時間の経過とともに大きくなっている。2018年12月期第4四半期の単独の営業損失は48億400万円だったが、2020年12月期第4四半期の単独の営業損失は725億1,800万円まで膨らんでいる。
<モバイル事業の営業損失の推移>
2.楽天、モバイル事業3,000億円の巨額赤字 楽天銀行が上場で資金調達も?
(2022/01/03 配信)
楽天グループがモバイル事業の巨額赤字に苦しんでいる。営業損益が赤字の状況が続いているが、それはモバイル事業の赤字が主要な要因だ。資金繰りも必要な状況になりつつあり、楽天銀行の上場も検討することになっている。楽天グループの最新動向に迫る。
モバイル事業の赤字に苦しんでいる楽天グループ
楽天の近年の業績を細かく見ていくと、同社がモバイル事業に苦しんでいることがよく分かる。2020年1~3月期以降において、楽天グループ全体の営業損益とモバイル事業の事業損益の金額は以下のように推移している。
各四半期の決算短信では、決算期の始まりからその四半期までの累計の連結業績として営業損益が発表されている。その数字を四半期ベースの営業損益(①)として計算し直した上で、モバイル事業単体の四半期ベースの事業損益(②)と並べた。
①から②を差し引くと、かなり大雑把な解釈ではあるが、モバイル事業を展開していない場合の営業損益が導き出される。2020年1~3月期から2021年7~9月期にかけて、①から②を差し引くと全て黒字になっていることが分かる。
つまり、楽天の営業損益は2020年1~3月から2021年7~9月にかけては全て赤字だが、モバイル事業が大きく足を引っ張っているということだ。
3.楽天、EC送料無料化に垣間見るプラットフォームの成長と競争政策
楽天グループは7月、楽天市場の出店者に対して、一定額以上の購入で送料無料とする制度に原則参加を義務づけました。なぜ楽天は出店者からの反発を受けながらも送料無料化にこだわるのでしょうか。楽天市場のビジネスモデルであるプラットフォーム戦略と、そこに待ったをかける競争政策から見ていきます。
送料無料化を巡る出店者と楽天の2年にわたる攻防
7月1日、楽天グループ(以下、楽天)はECモール「楽天市場」の出店者に対し、取扱商品数などの契約変更時に一定額以上の購入で送料無料とする制度(以下、送料無料化)への参加を原則義務化しました。同制度をめぐっては、これまで反発する一部出店者が楽天へ対抗する組織「楽天ユニオン」を結成したことや、公正取引委員会(以下、公取委)による東京地裁への「緊急停止命令」申し立てなどに発展したことのほか、過去2年以上にわたって、楽天自身が度重なる制度の施行と撤回、延期を繰り返してきました。
そして、今回の原則義務化は、出店者5万4千店(2021年1月時点)の85%が同制度へ参加済という圧倒的支持の中で決行されました。このことは、反対派を含む残り15%に相当する出店者約8千店に決断を迫ることに他なりません。楽天は、なぜこれほどまでに送料無料ラインの統一にこだわるのでしょうか。プラットフォームの成長と競争政策の観点から読み解いてみましょう。
4.楽天グループ、ぐるなびとの資本業務提携の改定に係る覚書締結
楽天グループ株式会社(4755)と株式会社ぐるなび(2440)と資本業務提携契約を改定する覚書を締結した。
楽天グループとぐるなびは2018年7月に資本業務提携契約を締結し、2019年5月に楽天がぐるなびの株式を追加取得している。
楽天グループは、コマースやアド&マーケティング、コミュニケーションズ&エナジー、インベストメント&インキュベーション、フィンテック等の事業を展開している。
ぐるなびは、パソコン・スマートフォン等による飲食店等の情報提供サービス、飲食店等の経営に関わる各種業務支援サービスの提供その他関連する事業を行っている。
5.楽天とダイフク、楽天の物流センター運営の効率化に向けた連携強化を目的にパートナーシップ協定締結
楽天グループ株式会社(4755、楽天)と株式会社ダイフク(6383)は、楽天の物流センター運営の効率化に向けた連携強化を目的に、パートナーシップ協定を締結した。
楽天は、Eコマース、フィンテック、デジタルコンテンツ、通信などのサービスを世界中に展開している。
ダイフクは、物流システムに関するコンサルティングとエンジニアリングおよび設計・製造・据付・サービス、その他事業(電子機器、洗車機)を行っている。
いかがだっただろうか。楽天はモバイル事業で巨額赤字を計上したが、堅調に成長を続けている。今後モバイル事業で黒字化の見通しを立てられれば、多くの投資家から注目を集めそうだ。
文・THE OWNER編集部