楽天1,140億円の大赤字 元凶「モバイル」はどうなる? 
(画像=JHVEPhoto/stock.adobe.com)

EC(電子商取引)事業、証券事業、保険事業など、幅広く事業を展開する楽天が、2期連続の赤字を計上した。多くの事業でユーザーを多数集めており、業績は好調に見えるが、なぜなのか。結論から言えば、モバイル部門が足を引っ張っている。その実態に迫る。

楽天が2期連続の赤字を計上

まず楽天の2020年12月期の連結業績(2020年1〜12月)を見ていこう。

売上収益は前期比15.2%増の1兆4,555億3,800万円と堅調に伸ばしたが、最終損益の赤字額は前期の318億8,800万円からさらに拡大し、1,141億9,900万円に達している。売上が伸びているのに、赤字額は増えているわけだ。

セグメント別の売上収益と営業利益を見ていくと、どのセグメントに問題があるのかが一目瞭然だ。以下が楽天の2020年12月期のセグメント別の売上収益と営業利益となっている。

<2020年12月期のセグメント別の業績>

楽天1,140億円の大赤字 元凶「モバイル」はどうなる?
※出典:楽天「2020年度第4四半期決算説明会 Appendix」

インターネットセグメントとフィンテックセグメントはともに営業利益は黒字となっているが、モバイルセグメントで2,270億円の営業赤字を計上している。冒頭で触れた通り、モバイル事業が赤字の元凶なのだ。

なお、モバイル事業の四半期ごとの営業損失は時間の経過とともに大きくなっている。2018年12月期第4四半期の単独の営業損失は48億400万円だったが、2020年12月期第4四半期の単独の営業損失は725億1,800万円まで膨らんでいる。

<モバイル事業の営業損失の推移>

楽天1,140億円の大赤字 元凶「モバイル」はどうなる?
※出典:楽天「2020年度通期及び第4四半期決算説明会」資料

なぜ赤字額が膨らみ続けているのか

モバイル事業の売上収益はユーザー数の増加もあって右肩上がりとなっており、2020年12月期第4四半期は単独四半期として前年同月比で23.9%増となっている。それにも関わらず、なぜこれほどまでに赤字額が膨らみ続けているのだろうか。その理由は2つある。

1.基地局の整備が楽天グループ全体の重荷に

1つ目は基地局の整備を加速させているからだ。携帯業界ではNTTドコモとKDDI、ソフトバンクが大手で、この大手3社に対抗するためには一刻も早く携帯事業の「インフラ」を整えなければならない。楽天としてはこの先行投資は仕方がないところだ。

さらにユーザー数の増加により、通信網を強化する必要に迫られており、4Gの屋外基地局数を当初計画の2万7,397カ所から4万4,000カ所に増やす計画を発表している。これにより設備投資額は従来の6,000億円から30~40%増加する見込みだという。

2.「使い放題」「1GBまで0円」の格安プラン

もう1つの理由が、大手3社に対抗するための格安プランの提供だ。

楽天は、5Gの通信サービスが使い放題となる月額2,980円の格安プランを発表し、業界を驚かせた。しかしその後、NTTドコモも楽天とほぼ同額の新プラン「ahamo(アハモ)」を展開し、楽天側はこれに対抗するため「1GBまではプラン料金が0円」となる料金体系を発表した。

楽天が安さにこだわるのは、後発組ながら何とかユーザーを多く獲得していくためだ。確かにユーザー数や申込数は飛躍的に伸びているが、モバイル事業の収益性を半ば無視している格好となってしまっている。

モバイル事業の赤字脱却はいつになる?

では、モバイル事業の赤字脱却はいつになるのか。予想ベースではあるが、それは決して遠くない将来だろう。基地局の整備にめどがつけば、設備投資額が自然と少なくなっていくからだ。

楽天は当初、基地局整備の完了のめどを2026年3月末としていたが、5年前倒しで進めていることを明らかにし、2021年夏ごろには人口カバー率96%を達成すると説明している。そうなれば、2022年以降は設備投資額がぐっと減るはずだ。

設備投資が減少し、ユーザーが右肩上がりの状況が続けば、いよいよモバイル事業で利益を残せるフェーズがやってくる。楽天の2021年12月期、そして2022年12月期の決算発表に、引き続き要注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

無料会員登録はこちら