ロシアによるウクライナへの軍事侵攻がはじまってから1週間、停戦の兆しはない。抗戦を続けるウクライナ人とロシア軍兵士の犠牲が積み上がる。ロシア国内では反政府を叫ぶ市民が拘束されてゆく。
30年前、ロシアは民主制に移行したはずだった。しかし、エリツィン以後の22年間、国家権力は “大ロシアの再興” を信望する一人の人物に独占され続けた。問題は権力の集中と長期化だ。自らの在任期間中にその合法化を試みるトップは危いということだ。洋の東西を問わない。彼らに共通するのは強権的であり、独善的であり、排他的であり、自己陶酔型の気質である。そして、その周囲には権力にへつらい、利得におもねり、異論を封じ、社会の分断を煽り立てる連中がいる。
昨年12月、筆者はスウェーデンに本部を置くV-Dem研究所の調査結果を引用し、民主主義の後退と専制主義の伸長に対する懸念を記した。
同研究所によると民主国家の専制化は、①選挙で合法的に政権をとる、②メディアや言論を統制し、社会の分断をはかる、③選挙そのものをコントロールする、というプロセスで進行するという。はたしてこの通りの国もある。暴力で③を達成する国もある。もとより③が実現している国もある。もちろん、このプロセスに迷い込まない国もある。
今、我々はこの観点からもう一度、世界を見渡し、“自由” に対するリスクと向き合う必要がある。要するに、勇ましい言葉で自らの正義と歴史の大義を叫ぶ連中には気をつけろ、ということだ。
今週の“ひらめき”視点 2.27 – 3.3
代表取締役社長 水越 孝