Netflix
(画像=Thinkstock/Getty Images)

新型ウイルスの影響で業績不振に陥るビジネスが続出する中、Netflixが最高益を記録するなど、動画配信サービスは大きな成功を収めている。動画配信サービスでNo.1の座を維持するNetflixの魅力と、Amazon PrimeやDisney+などライバルの動き、アフターコロナで「自宅時間のエンターテイメント」に求められる要素について考察してみよう。

Netflix最高益を更新 在宅時間の増加が後押し

Netflixが2020年4月21日に発表した2020年1~3月期決算報告によると、有料会員数はわずか3ヵ月間で1,570万人以上増加し、合計1億8,200人を突破。収益は前年同期比28%増の57億6,800ドル(約6,080億1,078万円)、純利益は106%増の7億900万ドル(約756億2,791万円)を記録した。

Netflixがリードする動画配信市場はコロナ以前から順調に拡大していたが、感染拡大防止対策として自宅で時間を過ごす人が増えたことが、記録更新の決め手となった。

Netflixがトップを独走し続ける理由

巣ごもり消費の一環として、多くの消費者がDisney+やAmazon Primeといったライバルではなく、Netflixを選んだのはなぜか?

Netflixは長年にわたり、動画配信サービス市場において圧倒的なシェアを占めている。Amazon Primeなどライバルがじわじわと差を縮めているものの、その差は歴然だ。米データ分析企業Parrot Analyticsのデータによると、2018年のNetflixの有料会員数が1億3,930万人であったのに対し、Amazon Primeは1億人、Huluは2,500万人にとどまっていた。

ライバルを寄せつけないずば抜けた魅力は、大作映画からドラマ、ドキュメンタリーなど独占配信のオリジナルまで、充実したコンテンツ力だ。オリジナルからは、「オレンジ・イズ・ニューブラック」など、テレビ番組版アカデミー賞と言われるエミー賞受賞作品が続々と生まれている。質の高いオリジナルコンテンツの制作には巨額の投資が必要となるが、2018年の時点でAmazon Primeの2.4倍、Huluの4.8倍に値する120億ドル(約1兆2,800億円)を投じるなど余念がない。

また、世界190カ国以上でサービスを展開しているほか、20カ国以上の言語対応や対応デバイスの豊富さなど、価格に見合う価値を提供している点が高い評価につながっているものと推測される。

Disney+、Amazon Primeなどライバルの動きは?

ライバルの動向で最も注目されているのは、米ウォルトディズニーが2019年11月に国内でサービスを開始したDisney+だ。サービス開始からわずか3ヵ月で、有料視聴者数が2,860万人を突破した。286億ドルの収益を叩きだすなど予想を大きく上回る快進撃を見せ、HBOや、Hulu、ESPN +といったライバルに圧力をかけている。

Disney+の有料視聴者数は、世界中でロックダウンが始まる以前の12月末には、すでに2,650万人に達していた。また、6月からは日本でも配信を開始するなど、国外進出にも本腰を入れる計画であることから、今後さらに市場での存在感を増すと予想される。

異色の存在Amazon Primeは脅威となり得るか?

一方、Amazon Prime の会員数は、2013年のサービス開始以来継続的な成長を記録し、2019年12月の時点で1億1,200万人を達成し、第1四半期には、さらに1億5,000万人を記録した。Netflixと比較されることの多いAmazon Primeだが、実は動画配信サービス市場で異色の存在と言える。Amazonの脅威を語る上で注目すべきは、巣ごもり消費を対象とする利益創出源を複数抱えている点だ。

そもそもAmazon Primeは単なる動画配信サービスではなく、Amazonのユーザーをターゲットとする会員制サービスである。会員になるとAmazonで購入した商品の配送料が無料になるほか、特定の商品の優待割引や1時間で商品が届く「Prime Now」が利用でき、動画配信以外のサービスが充実しているなど、ライバルには真似のできないサービスがAmazon Prime独自の魅力だ。

また、リモートワークの増加に伴い、クラウドサービスAWSの第一四半期売上高は、33%増の102億ドル(約1兆880億円)に成長している。

コロナの影響からほとんどの国でコンテンツ制作が中止されており、特にオリジナルコンテンツを最大のウリにしているNetflixにとっては不安材料になっている。しかしAmazonはこうした懸念を尻目に、オンラインセールスやAWSの爆発的な需要拡大を受け、755億ドル(約8兆534億円)の収益を記録した。

需要は定着?アフターコロナの勝者に求められる要素とは?

リモートワークを含め、多くの人の働き方やプライベートの過ごし方がコロナによって変化しつつある。長期化すると予想されている点を考慮すると、新しい生活スタイルがアフターコロナも定着する可能性は高い。

以前は自宅の外が中心だったエンターテイメントが自宅中心となった今、動画配信サービスの需要のさらなる拡大が期待できる。それにともない、激化する動画配信サービス市場の勝者に求められる要素も変化して行くだろう。

価格競争や視聴者を飽きさせないコンテンツ配信はもちろん、ユーザーが新しい体験を楽しめるコンテンツの提供がカギを握っている。例えば、VR/AR(仮想現実/拡張現実)を組み合わせるなど、時代の流れを読み取りライバルとの差別化に成功したプロバイダーが、アフターコロナ時代の勝者となるのではないだろうか。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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