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福岡県南部、筑後地方の久留米市に本社を置く株式会社テクノは、建設コンサルタントとして道路、河川、構造物などの計画、設計、調査、点検といった社会インフラを支える業務に携わっている。設立50周年を迎えた2023年には、本社ビルの大規模なリノベーションを実施。従業員の要望を反映した上で、コミュニケーションを取りやすく創造性を発揮しやすいオフィス環境を整えた。新たな技術の導入に積極的に取り組み、ドローンを活用した測量やインターネット上の仮想空間、メタバースを活用した会社説明も行っている。(TOP写真:設立50周年の2023年にリノベーションを行ったテクノ本社ビルの2階オフィス)
誠実と確かな技術で、地域社会の発展に貢献

テクノの歴史は、1973年、現取締役相談役の安丸国勝氏が福岡県久留米市内で筑邦エンジニアリング株式会社を設立したことにさかのぼる。1978年に建設コンサルタントと測量業、1985年に補償コンサルタントとして登録を行った上で、1989年に現在の社名に変更した。「誠実と確かな技術で、地域社会の発展に貢献すること」を経営理念としている。
テクノは久留米市周辺を中心に、福岡県内の官公庁が発注したインフラについての現地調査、計画立案、図面、各種計算書の作成に取り組んでいる。土質、水理学、構造力学など様々な知識を活用しながら、建設コンサルタントをメインに、補償コンサルタント、測量、点検・診断といった業務のほか、新エネルギーや自然エネルギーを活用した事業も展開している。
「公共事業をはじめとする建設プロジェクトのプロデューサーといえる建設コンサルタントは専門性が高く、国民生活を支える社会資本を整備する上で重要な役割を担っています。国や自治体の財政運営の見通しが厳しくなる状況下、透明性を確保しながら必要性が高い社会資本を整備していく上で、第三者の立場で設計審査や施工監理を実施する建設コンサルタントの存在感は高まっています」建設コンサルタント業の今後の見通しについてテクノの中園孝一会長はこのように話した。
風通しとまとまりの良さが強み 従業員が働きやすい環境づくりを大事にしている
道路、河川に関連するインフラの整備計画・設計、測量、点検・診断、土地・建物などの調査・評価、被害額の算定などの各業務は、複数の部署間で連携しながら進めている。豪雨などの災害が発生した直後の調査など迅速な対応が要求されるケースでは、全社一丸となって取り組むという。
「風通しとまとまりの良さがテクノの強みです。全ての従業員が健康に毎日を過ごし、それぞれが自己実現を果たして仕事にやりがいを感じられる働きやすい環境づくりを大事にしています」と中園会長。福岡県が企業・事業所を対象に設けている「子育て応援宣言」、「健康づくり団体・事業所宣言」、「介護応援宣言」、「働く世代をがんから守るがん対策サポート事業」といった様々な認定制度に登録しているのもその姿勢の表れだ。
テクノは国際貢献にも取り組んでいる。アフガニスタンで人道支援に取り組む中、銃撃事件に巻き込まれて亡くなった医師の中村哲さんと関わりが深い非政府組織「ペシャワール会」の活動に協力している。JICA(独立行政法人国際協力機構)がアフガニスタンから技術者を日本に招いた研修事業で、流量観測法などの技術指導を行った実績を持っている。
2000年代初頭から電子納品に対応 時代の変化に合わせて新しい技術の導入を心がけてきた

テクノは設立以来、時代の変化に対応しながら新しい技術の導入を心がけてきた。2000年代初頭から電子文書と電子化した紙文書を一元管理するシステムを導入し、調査、設計などの最終成果物を電子で納品している。紙資料は複合機のスキャン機能を使ってPDF化した上で保存している。また、上空からの現地確認、モニタリング、測量に活用するために4台のドローンを導入している。

ホームページでは、会社案内や業務内容の紹介に加え、仕事の内容や従業員のメッセージを掲載した採用専用ページも作成。自然や利便性に恵まれた地元・久留米市の住まい環境の魅力も発信している。インスタグラムによる機動的な情報発信にも力を入れている
「創造的でスマートな働く場の実現」をコンセプトにしたワークプレイスデザインサービスを活用して本社ビルをリノベーション
テクノは、2023年、会社設立50周年を機に、1989年に完成した鉄筋コンクリート造3階建ての本社ビルのリノベーションに踏み切った。本社ビルの完成から30年以上、2階と3階に配置している設計部、測量部、補償調査部、営業部の部屋割りやデスクの配置を変えていなかったことから、デジタル化が進む新しい社会の動きに対応するために先を見据えて一新することにしたという。
2階と3階のリノベーションにあたって活用したのが、デジタルサービスに強みを持つ協力会社が提供する「創造的でスマートな働く場の実現」をコンセプトにしたワークプレイスデザインサービスだ。希望を反映するためのヒアリングからレイアウト設計、工事、新しいデスク、いす、機器の調達と設置、アフターフォローまで一気通貫で任せることができたという。
新しいオフィスのデザインやレイアウトに従業員の意見を反映 センチ単位で調整を行い、一人ひとりのスペースの確保とコミュニケーションの取りやすさを両立した

リノベーション工事は、2023年4月から業務に支障が生じないように配慮しながら約2ヶ月かけて行った。新しいオフィスのデザインやレイアウトについては、設計、測量、補償調査の各部署を代表した若手社員グループがそれぞれの部署の意見を集約した上で協力会社と打ち合わせを重ねて具現化していったという。

間仕切りの色は企業カラーのブルーに統一。以前はタイル張りだった床は、配線用の空間を確保して床を形成するOAフロアに改装した。デスクの間仕切りや通路の幅は最終決定するまでセンチ単位で細かく調整し、従業員一人ひとりのスペースの確保とコミュニケーションの取りやすさを両立できるようにした。壁面には棚を設置してスペースを有効活用。また、倉庫代わりにしていた部屋を会議や休憩など多目的に使える部屋に改装した。

「以前はデスクに荷物が積み上がり、床にはケーブルなどの配線が飛び出している状態でした。リノベーションによってオフィスがすっきりしたことによって、これまで以上にコミュニケーションが取りやすくなりました。掃除がしやすくなって整理整頓が自然と進むなど様々なプラス効果が生まれています。昭和の雰囲気を漂わせていた以前の職場が、令和の時代に対応した新しいワークプレイスに生まれ変わったように思います」と中園会長は満足そうに話した。
若い人材へのアプローチを目的にメタバースで会社案内

全国の建設コンサルタント会社に所属する従業員の年齢構成は、一般社団法人建設コンサルタンツ協会の調べによると、2023年度の時点で、51歳から53歳の層が最も厚くなっている。高齢化が進む中、業界の活力を維持するには、ベテランの活用に加え、若手の採用と育成が大きなテーマになっている。
テクノは、若い人材にアプローチすることを目的に、インターネット上の仮想空間、メタバースを活用した職場見学を2024年3月から実施している。テクノのメタバース空間にアクセスした人は、アバターと呼ばれる分身を操作しながら仮想空間を散策し、同社の様々な情報を閲覧することができる。メタバースにはホームページからアクセスすることができるほか、合同就職セミナーや合同会社説明会などのイベントでも公開している。今後も人材採用のツールの一つとして活用していくという。
「人々の安全、安心な暮らしを守る建設コンサルタントは、社会貢献を考える人にとって非常にやりがいがある仕事です。自分が手がけたインフラや施設が将来にわたって残り続ける醍醐(だいご)味もあります。デジタル技術が進化したおかげで、高校や大学で専門的に建設や土木を学んでいなくても、やる気があれば働きながら技術を身につけていくことが十分可能になっている。それだけに、仕事の魅力を発信しながら幅広い層に働きかけて採用活動を続けていきたい」と中園会長は話した。
従業員が資格を取得する上での支援に力を入れている

テクノは、従業員が、建設コンサルタントとして責任のある役職を務めるための条件になる技術士、RCCM(Registered Civil Engineering Consulting Manager=シビルコンサルティングマネージャー)、測量士、補償業務管理士などの資格を取得する上での支援体制を充実させている。37人の従業員が所有する資格の総数は100を数える。
高度な専門知識と半世紀にわたる豊富な経験を持つテクノは新しい技術を導入し、働く環境を改善して着実にデジタル社会への対応を進めている。「整備が必要なインフラは数多く存在します。技術を磨き続けることでこれからも社会の縁の下の力持ちとして地域に貢献していきたい」と中園会長は語った。
企業概要
会社名 | 株式会社テクノ |
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本社 | 福岡県久留米市東合川3-1-21 |
HP | https://techno-co.com/ |
電話 | 0942-44-8700 |
設立 | 1973年12月 |
従業員数 | 37人 |
事業内容 | 建設コンサルタント業務、補償コンサルタント業務、測量業務、点検・診断業務、環境・エネルギー関連業務、企画・開発業務 |