コロナ対策
(画像=PhuShutter/Shutterstock.com)

新型コロナウィルスの影響で、飲食業や宿泊業を中心としたあらゆる業種の事業者が売上の激減により窮地に立たされています。終息の目途が立たない中、今後さらに影響の拡大が懸念されています。

そんな中、この未曽有のピンチを乗り切るために検討すべき対応策や、コロナ終息後のV字回復に向けた取組を3つご紹介いたします。

検討すべき対応策1 経費の削減

今の経営状況において、売上減少からの突発的な破綻を防ぐためにはまず支出を最大限抑制する必要があります。特に売上に貢献していない経費についてはしっかりチェックを行い、これを機にスリムな経営を目指しましょう。

遊休資産の売却や不要な設備の見直し

今後の活用予定もない遊休資産がある場合は売却を、不要な施設等がある場合は解約を検討しましょう。例えば、使っていない社用車や、たまにしか使わない会議室など。会議は最近流行のWEB会議アプリを活用するのも有効です。

人件費の見直し(業務の見直し)

業務の見直しを行い、不要業務の削減や業務効率化を図りましょう。その上で業務の棚卸をおこない、正社員が行っている業務の中でパートやアルバイト、アウトソーシングに切り替え可能はものがないか検討しましょう。また、社員を休業させた場合は、雇用調整助成金を活用できるか検討しましょう。

広告の見直し

売上が激減している業種、特に休業要請がかかっているような業種では、コロナが収束するまで既存ビジネスに対して広告費をかけても効果が見込みにくいことが考えられるため、必要であれば削減していきましょう。また求人広告など、だしっぱなしの有料広告が無いか、確認してみましょう。

無駄な会費、サブスクリプションの解約

付き合いで入っている会の会費や、使っていないサブスクリプションがあれば見直しましょう。

役員報酬の見直し(社会保険料の削減)

税務上、役員報酬は原則期首から3か月以内の改定のみ損金参入が可能ですが、業績が著しく悪化した場合、期中に減額改定しても損金参入が認められる場合があります。役員報酬を減額すると、そこに付随する社会保険料も減少しますので経費削減効果が大きくなります。

過剰な生命保険の見直し

会社経営をしていて利益が出ている時は、ついつい節税することに目が行きがちです。その結果、節税のために生命保険に過剰に入っている会社が珍しくありません。保険の本来の目的は、万が一何かあった場合のリスクヘッジとして保障をかけることです。これを機に会社としてのリスクとはなにか、そしてそこに対しての保障額はいくら必要かをしっかり考えて必要最低限の掛捨保険で整備してみるのがお勧めです。しかもキャッシュフローで考えると、節税しない方が、キャッシュが残ります。

また、投資目的で保険に加入している場合も見直しの余地があります。保険に貯蓄機能が付くと保険料が高くなるため、保険は保障機能だけ押さえて、その差額を事業や金融商品に投資した方が合理的です。

検討すべき対応策2 国や自治体の支援の活用

企業の破産などを防ぐために国や自治体が様々な支援を準備してきています。
ほとんどの施策について自分で申請する必要があるので、活用できる施策はもれなく活用しこの危機を乗り切りましょう。

無利子・無担保融資の活用

売上が前年同月比で5%以上下落している等の要件を満たせば日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を受けることが可能です。

国民生活事業では6,000万円、中小企業事業では3億円を上限として、基準金利からマイナス0.9%の金利で融資を受けることができます。

返済期間は、運転資金の場合15年、設備資金の場合20年となっていますが、そのうち5年間は据置期間を設定できますので、キャッシュフローを大幅に改善させることが可能です。

また詳細は検討中ですが、要件を満たせば支払う利息と同額の利子補給金を3年間受け取ることができ、3年間は実質無利子で借入する事ができます。

コロナショックがどこまで長期化するか不透明な状況なので、できるだけ多めに融資を申請しキャッシュの比率を高めておくことが重要です。

こちらの融資は申請が始まっていますが、一部地域では申し込みが殺到し窓口がパンクしており、今申請しても2~3か月の時間を要しますので、早めに申請する事が重要です。

また5月から同様の融資を民間の銀行でも受けることができるようになりました。借入上限額は3,000万円と少なくなっていますが、こちらを活用するのも有効です。

持続化給付金の申請

売上が前年同月比で50%以上下落した中小法人は最大200万円、個人事業者は最大100万円の給付金を受け取ることができます。こちらも既に申請が始まっています。オンラインで申請可能なので該当する方は迅速に申請しましょう。

雇用調整助成金の活用

従業員を休業させ、休業手当を支給した場合には要件を満たすと雇用調整助成金を受け取ることが可能です。こちらは本来、申請に非常に手間がかかる助成金ですが大幅な簡素化が検討されており、また一日あたりの上限額も引き上げが検討されているので、是非活用したいところです。

注意点として、助成金の申請のお手伝いをする社労士が業務過多でパンクしている事、そもそも社労士でも雇用調整助成金を申請したことがある人は少ない事。などから顧問社労士に申請代理を断られるケースが多くなってきています。

顧問社労士を契約していない会社はもとより、顧問社労士がいる会社でも、自社で申請する必要が出てきていますので今後もしっかり情報は収集していきましょう。

その他の支援

上記のほかにも家賃補助が検討されていたり、自治体独自の支援策が出てきていますので、活用漏れがないように、日々情報収集を行いましょう。

検討すべき対応策3 「会社磨き」

このピンチをチャンスに変えるためには、前述しました現状の対策だけにとどまらず、コロナ収束後に力強く成長していくための施策が必要です。
売上が減少して時間がある今こそ普段手を付けることができなかった会社の磨き上げに取り組むチャンスだと捉え、前向きに考えていきましょう。
下記に検討例を紹介します。

会社磨き1 既存事業の見直し、改善

コロナによる事業縮小等で時間が出来た場合、既存事業のあらゆることを見直し、改善するチャンスです。

販売価格や販売経路、マーケティングや広告方法、仕入れコスト、事業計画などから、個別具体的な業務フローまで、普段既存事業をこなす中で時間が取れずにできていなかったことを見直しましょう。売上減少を受けてすぐに従業員を休業させるのではなく、経営者と従業員、それぞれで役割分担し上記に取り組んでみて頂きたいです。

会社磨き2 事業ポートフォリオの見直し

今回のコロナショックで、一つの事業モデルに絞った経営の危うさを誰しもが痛感しているかと思います。これを機に事業ポートフォリオを見直し、様々なセクターに分散された事業ポートフォリオ構築を検討してみてはいかがでしょうか。

誤解しないで頂きたいのが、多種多様な事業を展開するコングロマリットを目指そう、という意味ではなく、リスク分散のため今の事業と逆相関になるような事業を展開しましょうという事です。

例えばBtoBだけだった事業からBtoCを開発したり、店頭販売だけだったがECに参入したりという具合です。

会社磨き3 資産形成に着手する

日本では、経営者個人では金融商品や不動産を使った資産形成を行っている方は多くいますが、事業会社でされているケースは多くありません。

しかしこのコロナショックから、会社の永続性を保つためにはPLの改善だけてはなく資産形成などを通じた、BSの改善が非常に有効だということが学べます。
不動産や金融資産で資産形成できている会社は、本業の収益が悪化してもストックフローで固定費をまかなえますし、売却してキャッシュを作ることもできる。

資産形成するためにはキャッシュが必要です。そのためには過度に節税せず、適正に納税してキャッシュを残す必要があります。資産形成に着手するには、この納税に対する意識から変えていかなければいけません。

会社磨き4 会社を力強く成長させる組織づくり

今後日本で起きる超少子高齢化による働き手不足、価値観の多様化、グローバル化、ITの急速な浸透などを背景に、起業の競争力や価値を向上させるため人材育成・組織づくりの重要性が増しています。

内閣府の2018年度経済財政報告によると、企業による人への投資や学び直しの重要性が指摘されており、社員教育など人材への投資が1%増えると労働生産性が0.6%高まると試算されています。

しかし人材育成や、特に組織づくりにおいては仕事のやりかたそのものを変えてしまう可能性があり、仕組みを考える時間も多く必要で、従業員からの反発も必ず出てくる中、全員に協力してもらう必要性のある取組なので、中々着手できていない企業が多いのが現状です。

しかしこのコロナショックにより、組織の力を成長させる意義は誰しもが感じていると思いますので、これを機に是非取り組んでみて頂きたいと思います。

人材投資についての注意点は過去の記事で紹介しましたのでそちらも合わせてお読みください。

まとめ

コロナショックにより世界経済は大打撃を受けました。多くの事業者がつらい日々をおくっていることとお察しします。しかしこのようなショックはいつ何時起きてもおかしくありません。例えば明日南海トラフ地震が起こる可能性もあります。

後ろ向きになってばかりだと前に進めません。みなさまには今後来るであろうあらゆるショックに耐えうるだけの会社づくりを目指して前向きに進んで頂きたいと思います。

(提供:税理士法人M&Tグループ