企業と障がい者双方の意識改革!就労移行支援事業所と車椅子営業マンが障がい者と社会をつなぐ

就労移行支援事業所「スリーピースグループ」の運営団体の幹部である瀧川昇三(たきがわ しょうぞう)さんと、 車椅子営業マンとして活躍する赤石理人(あかいし まさと)さん。 「心の友」と呼べるほど根底の思いに共感しているというお二人に、 これまでの経歴や働くことの価値、今後の展望などを語っていただきました。

障がいのある人と企業をつなぐ瀧川さん、身体がほとんど動かない中で社会とつながる赤石さん

企業と障がい者双方の意識改革!就労移行支援事業所と車椅子営業マンが障がい者と社会をつなぐ

瀧川さん:9年ほど前から、働くことに何らかの障がいがある方、 うつ病などの精神疾患全般、発達障がい、知的障がいの方が一般の企業に就職するのをアシストする、就労移行支援事業所「スリーピースグループ」を運営しています。 障がい者雇用を企業に定着させることは難しいので、企業で支援をされている方をサポートしたり、 選択理論心理学を用いてスタッフのモチベーションをあげるなどの活動もさせてもらっています。

企業と障がい者双方の意識改革!就労移行支援事業所と車椅子営業マンが障がい者と社会をつなぐ

赤石さん:2歳のときに脊髄性筋萎縮症と診断され、右手がほんのわずかに動く程度ですが、今は社会人4年目になりました。 もともとはWebライターとしてメディアのマネージャーなどもさせてもらっていたのですが、営業をスタートして、2025年からは会社の執行役員、アプリ事業の責任者として事業発展に務めているところです。 働く目的は、自分の存在価値を感じたいというところですね。仕事は「自分が生きていることを実感するもの」という感じです。

8歳から12歳まで入院していて、最初の頃は早く外に出たいと思っていたんですが、周りも退院することがなかったので「ここでの生活があたりまえ」といつのまにか自分の限界を自分で決めてしまっていました。入院しながら病院に併設する特別支援学校に通っていたのですが、そこには不登校の子たちもいたのです。とても仲が良かったのですが、高校受験のタイミングで彼らは普通校に進学したいと言いました。僕も行きたいと思ったのですが、前例がなくて。彼らが受験勉強している中、僕だけ違う授業をしていて、差が出てきて、初めて自分の力ではどうしようもない社会の壁にぶち当たりました。それがきっかけで、みんなと同じ土俵に立ちたいと思うようになりましたね。 高校3年間は外に出る準備をして、大学に入って10年ぶりに外に出ました。

病院の中で働くということはなかったので、働くハードルはすごく高かったです。 社会とつながりたいという気持ちが強くて、働くことは社会とつながることだと思っていたのですが、実際就職活動となったときは、安定を求めてしまっていました。 悪いことではないですが、就職活動で最初に給料や福利厚生に目が行ってしまっていたので、もともとの思いと違うと気づきました。 コロナでリモートワークが活発になってきた頃、自宅にPCが1台あれば働けるので、病院でも働けると思って、一番始めに興味のあったWebデザイナーを選びました。 アルバイトの経験もなく、仕事をする努力もわかっていないのに一人で始めてしまったので、最初はどうやって仕事をとって良いかわからなかったです。 マッチングサイトを使ってみても案件はとれないし。無料でお手伝いなどをしていましたが、 案件が取れない中でWebライターの話がきて、学生時代に毎日新聞に文を出していたのも功を奏して、どんどんライターとしての比重が上がってきたという感じです。

営業って物を売っていくのでがつがつしたイメージを持たれることが多くて、始めたときはテレアポなどいわゆるセールスマンの動きをしていたんです。 気づきはあったのですが結果は大して出ず、正直楽しいとは思えませんでした。長く付き合っていけるような関係構築を意識するようになってから、すごく楽しくなりましたね。 もともと病院で外の世界に関われなかったので、半年で関わる方もどんどん増えて。 すべて収益になるわけではないですが、何か困ったりわからないことがあれば聞いてもらえる機会は増えてきて、自分の存在価値を感じられるようになりました。

今の身体でできることを!根底にある二人の価値観が共鳴

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瀧川さん:赤石さんと知り合ったのは、2024年の夏頃です。 真践組(しんせんぐみ)という経営者のコミュニティがあるのですが、そこでいろいろやっている中で赤石さんを紹介してもらいました。 真践組を主宰する清水ヨシカさんという方と赤石さんがやられているFMラジオに出演させてもらったことをきっかけに、根底にある考え方でも共感し心の友と呼べるくらいになりました。 同じ考えがベースにある、考え方だけに留めず今やっていることをいろいろ応用できそうだね、という話をします。 赤石さんのほうから管理職とはいえこういう研修も必要だ、というような話もしてくださるのです。 話している途中で障がいがあることを忘れてしまうような方なので、健常者である自分たちはサボれない、言い訳できないなと思わせられますね。 赤石さんは今までの障がいというレッテルをはがしてしまう人です。 重度の障がいというのが信じられない、定説を覆しているので、事業所にきている同じような悩みを抱えた利用者さんの光になっています。 「赤石さんみたいになりたい」と皆さんは仰いますね。 赤石さんの活動で、これまで障がいがあるからと決めつけていたことがすべてひっくり返っている、ひっくり返されているという感じです。

赤石さん:瀧川さんとは同じような価値観とか人との関わりとか、在り方が通じる部分があると思って関わらせていただいたのが最初です。 働くことのハードルが高いときにどうしたら良いかというと、マインドセットです。 瀧川さんとお話する中で、当事者に「自分はやれる」という気持ちがないと、なかなか難しいと感じました。 多くの人が環境のせい、状況のせいにしていますが、自分で変えられることと自分の力で変えられないことを切り分けて考えた方が良いと思っています。 自分の力で変えられないものを間引いたとしてもそれは変えられないので、一歩でも前に動かす方が集中して前に進めるというか。 僕に障がいがなかったらもっといろいろできたのにと嘆いたところで、変えられないので、今の身体でできることを探した方が現実的で幸せになれると思っています。

障がいを持つ人が安心して働ける場所をつくり、人生の選択肢を増やす

企業と障がい者双方の意識改革!就労移行支援事業所と車椅子営業マンが障がい者と社会をつなぐ

瀧川さん: 赤石くんと出会ったのは必然性があると思っていて。次に大阪でイベントがある機会には是非来ていただきたいのと、うちの事業所で話して欲しいと思っています。 赤石くんから伝えてくれたら、どんな人も「やるしかない」と思えるでしょう。 9年前からしんどい環境にある人が働けるように自己研鑽し、活動してきましたが、企業にも心理的安全性が高く、仕事の基準が高い会社をたくさん創りたいと思っています。 売上とより良い人間関係の構築は両立できる!というのをやっていきたいですね。うちと同じような事業所をつくりたいという声をいただいて実際に現在設立準備中です。

赤石さん: 瀧川さんとお会いさせていただいたのは、10年前の自分では考えられなかったことです。 僕たちはバリアの数が圧倒的に多くて、バリアを乗り越えることが成長につながると思っていて。 バリアを避けるのではなく乗り越えていくことで大きく変われると思っています。僕の目標として自分自身がもっと成長するために事業をつくっていきたいと思っています。 今までこうやっていろんな方のおかげで僕自身もいられるので、恩送り、できることなら働く選択肢を増やす、 自分の課題を抱えている人も人生の選択肢を増やして、挑戦に一歩踏み出すのを後押しできるような存在になれればと思います。