儲かる会社
(画像=Shutter.B/Shutterstock.com)

(本記事は、牧野剛氏の著書『社員は1分で変わる! ──儲かる会社をつくる「できました」の魔法』自由国民社の中から一部を抜粋・編集しています)

「できました」トレーニングの基本の流れ

この章では、「できました」教育の具体的な方法についてご説明していきます。「できました」教育は、非常に効果の高い手法ですが、やり方そのものは、とてもシンプルです。

1.上司が作業の指示を行う。
2.部下は作業を終えたら「できました」と報告する。
3.部下は報告したら「沈黙」して上司の回答を待つ。
4.上司は「ありがとう」と受け、作業内容をチェックする。

「できました」教育の中で一番重要なポイントは、2.の「『できました』と報告する」と3.の「『沈黙』して上司の回答を待つ」という部分です。この2点をしっかりとおさえることで、効率的に「できました」社員に変身できるのです。以下でその理由を詳しく説明していきます。

2.部下は作業を終えたら「できました」と報告する。

報告の形式は、必ず「○○することができました」と〇〇の作業内容を名詞化するのが鉄則です。例えば、「報告書に記入する」という作業の場合は、「報告書を書くことができました」となります。

コツは、動詞を名詞化して、その後に「できました」で締めることです。例えば、「書く(動詞)」は、「記入、書くこと(名詞に変更)」+「できました」です。つまり「記入ができました」、または「書くことができました」となります。

・ 正しいフレーズ:「報告書に記入ができました」「報告書を書くことができました」→名詞化されている
・NGのフレーズ:「報告書に書けました」→動詞のまま

「〇〇することができました」と名詞の形にするのは、まず作業内容を明確にするためです。この形式にすると、部下自身も、報告を受けた上司も、話の内容が把握しやすくなります。

次に、「できたこと」の報告が手短で正確になるので、「ありがとう」と言われやすくなり、会話のキャッチボールもできるようになります。

最後に、この形式では、自然と結論から話すことになるので、要点を整理して簡潔に話す能力が身につきます。普段から「話が長い」「話が要領を得ない」と叱られている社員も、短く、解りやすく報告できるようになります。

参考として正しいフレーズをいくつか挙げますので、感覚をつかんでみてください。

「相談することができました」
「チェックすることができました」
「お客様に連絡ができました」

3.部下は報告したら「沈黙」して上司の回答を待つ。

上司に報告したら、いったん沈黙を入れるのが次のポイントです。ここもとても重要です。「○○することができました」と報告したあとは、必ず沈黙して間を空けます。この間を取ることには、沈黙することで、相手の言葉を引き出すという狙いがあります。

報告してから、黙ると、上司は自然に「ありがとう」と言ってしまいます。これがミソです。「○○することができました」と言って、黙るだけで自然に褒められてしまうのです。人は、「できました」と言われると、「よくやったね」とか「頑張ったね」と褒める習性があるわけです。それを利用して、プラスのコミュニケーションを引き出すのが、この「できました」教育です。

「できました」教育の目的のひとつには、できるだけ部下を褒めて自信をつけさせるというものもありますから、上司が褒めやすい環境を人為的につくるのです。

「沈黙」を味方にすれば、場をリードできる

実は、この「沈黙」は非常に大きな力を持っています。沈黙をコントロールすることで、相手の考えや言葉を引き出すことができるので、場をリードすることにもつながります。

「できました」教育では、部下が、上司からの「ありがとう」や褒め言葉を引き出すために沈黙しますが、応用編として、上司が部下を指導する場合、あるいはお客様にセールスをする際にも「沈黙」は力を発揮します。

上司が部下を指導する際には、上司の方が、例えば「何ができないの?」「どこができなかったの?」などと質問して黙ります。上司が黙ると、部下はそれに答えなくてはいけませんから、一所懸命、答えを考えます。これが、自らの頭で考えて答えを導きだす訓練になります。

部下のミスなどを指摘して注意したり叱ったりしたい場合も、沈黙を使えばたった1分間で完了します。

基本はやはり「伝えて、黙る」です。

まずは最初の15秒から20秒ぐらいで「◎◎は■■にした方が良かったよね」「△△さんの請求書は昨日までに処理をしておいてと言ってあったよね」などと指摘したり注意したいことの内容を伝えます。そして10秒ぐらい黙ります。

キツイ言葉を使わなくても、これだけで充分効果は出ます。黙っている間、相手は、その沈黙が一生続くかもしれないとプレッシャーを感じるので、なまじ声を荒げるよりも迫力が出ます。怒鳴ったり、罵声を浴びせたりしないので、パワハラにもなりません。

「どうしてやらなかったの?」と質問するだけでも充分です。ですが、もし詰問するような空気感で部下が委縮してしまいそうな場合は、「僕は、君が○○ができていないからとても悲しい」と、主語を自分にして語る形で自分の感情を交えると、きつくなりがちな雰囲気を和らげることができます。

「伝えて、黙る」はセールスにも有効です。お客様にも「○○することができました」と報告し、黙って待つと、お客様は沈黙に耐えかねてつい「ありがとう」と答えてしまいます。

「ありがとう」と言われた社員は、お客様に「××様が協力してくださったおかげです。さすが××様です。こちらこそありがとうございます」と返すようにします。こう言われて気を悪くする人はいませんから、お客様との良好な関係づくりにも一役買ってくれます。

これを続けていくと、ますますお客様との信頼関係が強くなり、値上げ交渉などもスムーズに行えるようになります。そしてそれが粗利アップにつながっていきます。

社内でも社外でも、沈黙をコントロールできるようになると、会話の流れを自分の望む方向にリードできるようになります。この力がつくと、場を動かすリーダーシップの力もついてきます。

リーダーシップとは、「目標を掲げて、その目標達成のために周囲に働きかけて、協力を結集する能力」です。リーダーシップが身につけば、社内での周囲の協力を集めることができますし、お客様に対してのリーダーシップも取れるようになります。お客様との関係でリーダーシップが取れれば、場をこちらでコントロールすることができ、それが契約などの交渉の場でも発揮できるようになります。つまり収益アップにつながるのです。

周囲の力を引き出すためのツールとして、「黙る」というのは非常にシンプルな技術ですが、実際やってみるとなかなか難しいものです。せっかちな人は、この間を取るのが難しいのですが、そこはグッとこらえて、ぜひいったん沈黙する癖をつけてみてください。

社員は1分で変わる! ──儲かる会社をつくる「できました」の魔法
牧野 剛
社会保険労務士法人ローム代表社員。1961年、静岡県浜松市生まれ。静岡大学人文学部卒。1989年に社会保険労務士の資格を取得。2007年に社会保険労務士法人ロームを設立。社会保険労務士としての業務以外に、企業の研修講師なども行う。

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